会期延長! アメリカ的な美の探究とは。「ジャッド|マーファ 展」レビュー

1970年代にアメリカ・ニューヨークを離れ、メキシコにほど近いテキサス州の町マーファに移り住んだアーティスト、ドナルド・ジャッド。1950年代に制作された初期の絵画作品、1960〜90年代の立体作品に加え、ジャッドがマーファに残した空間について、ドローイング、図面、映像、資料を通して紹介する展覧会がワタリウム美術館(東京・外苑前)にて開催中。アートライター、編集者の杉原環樹がレポートする。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年5月号掲載)

「ミニマリスト」の豊かな横顔を知る
個人的な話だが、筆者はジャッドの作家論で修士論文を書いた。一見、単なる箱のような彼の作品は、一般には1960年代アメリカの「ミニマリズム」と呼ばれる潮流の代表とされている。けれど、作品の内容が「最小」であることを望む作家がいるのか。極端に切り詰められたその作品は、新しいリアリティの表現だったのでは。そんな直感が関心の出発点だった。

当初、抽象的な風景画を描いていたジャッドは、そこに残る恣意性や曖昧性を嫌い、3次元的で工業的な作品へと向かい、箱状の立体と空間が同間隔で反復する代表作「スタック」などを制作した。その過程は彼にとって、旧来のヨーロッパ的な美に代わる、アメリカ的な美の探究だった。
この流れはやがて、作品とその設置環境の理想的な関係の模索へと向かう。その実験の場となったのが、テキサスの荒野の町マーファだ。1970年代初頭、ニューヨークから同地へ移った彼は、そこに広大な土地と多くの建物を購入し、自身や他者の作品の恒久展示を開始。流動的で表層的な都市や業界を離れ、生活と芸術が一体的にある環境の整備に邁進した。本展は、貴重な初期絵画や代表作と、マーファの実践とを直線的に結び、関わりの深い私設美術館で紹介することで、「ミニマリズム」に収まらない作家の豊かな横顔を伝える場となっている。

物質と空間、作品と生活を等価に見るジャッドの視線の本質は、慣習的なヒエラルキーの解体だったと思う。そのことは、批評家でもあった彼が、渡米まもない草間彌生ら少数派の作家に向けた高い評価にも垣間見られる。徹底した厳格さは、一種の公平さを呼び込む。会場で、そんな彼の気質を再確認した。



「ジャッド|マーファ 展」
会期/2026年2月15日(日)~6月7日(日) 7月12日(日)*会期延長
会場/ワタリウム美術館
住所/東京都渋谷区神宮前3-7-6
開館時間/11:00〜19:00
休館日/月曜
TEL/03-3402-3001
http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202602/
Text:Tamaki Sugihara Edit:Sayaka Ito
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