次のデスティネーションは、大人の奈良! オーベルジュ「登大路ホテル奈良」滞在記 | Numero TOKYO
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次のデスティネーションは、大人の奈良! オーベルジュ「登大路ホテル奈良」滞在記

当たり前の日常が戻ってきた今、旅の欲求がふつふつと。もちろん海外は魅力的ではありますが、コロナ禍にあらためて感じた日本の魅力をさらに深めたいと思い、古都・奈良へ。世界遺産、興福寺に隣接する素敵なオーベルジュ「登大路ホテル奈良」に伺いました。

奈良には控えめな美意識が漂う

私は最近少しニッチなデスティネーションが気になっています。関西なら京都周辺でこれまであまり注目してこなかった奈良や滋賀に奥深さや思わぬ発見がある気がします。鈴木亮平さんを起用したJR東海「いざいざ奈良」のCMで、すでに奈良をチェックしている人もいるはず。近鉄奈良駅へは京都から特急なら30~40分で到着。ステイ先「登大路ホテル奈良」は駅から徒歩3分という抜群のアクセスです。

散歩がてら近隣観光から。奈良といえば、神の使い、鹿さんにまずご挨拶しなくては! こんなに近くで神聖な存在に触れあえるとは贅沢な街です。

CMさながらに1300年の歴史を持つパワースポット、春日大社に。20年に一度行われる式年造替により常に美しい朱に彩られ、奉納された釣灯籠が並ぶ重要文化財の回廊が見どころ。

伺った時期は長い花房が特徴の名木「砂ずりの藤」も開花しはじめていました。可愛い木彫りの鹿みくじもお忘れなく。

奈良の立役者である政治家、藤原不比等の話などスペシャリストに歴史を伺いながら、旧国立競技場にも携わった片山光生氏による名建築、奈良県庁舎の屋上から興福寺五重塔を。来年から2030年までは大規模修理に入るため、凛とした五重塔の姿はしばらくお預けなのでぜひ年内に。

街歩きには「ならまち」がおすすめ。風情ある町家が並び、ひととき時間を巻き戻したかのような感覚を楽しめます。

食と音楽と歴史に彩られた「登大路ホテル奈良」

今回ステイした「登大路ホテル奈良」は元々その興福寺の境内という歴史ある土地に佇む、全13室のスモールラグジュアリー。昨年11月に食と音楽と歴史をベースにしたオーベルジュとしてリニューアルオープンしました。清々しい緑をのぞむ部屋はシンプルでゆとりある落ち着いた空間。アクセントに使われている吉野杉などのウッドや、天然の蚊帳生地など奈良の素材が上品な温かみを添えています。

主役であるダイニング「レストラン ル・ボワ」は、ミシュラン三ツ星に輝く札幌の「レストランモリエール」が監修。奈良と北海道の食材を使った洗練されたフレンチが提供されます。

この日のディナーは旨味を凝縮したエスプーマ状の椎茸のスープからスタートし、蕗の薹、筍などの旬野菜のほか、季節野菜のプレートへ。

メインはサーモンの一種、雨魚(アマゴ)のムニエルの焦がしバターソースと、穀類を飼料にし上質な脂を特徴とする奈良のブランド豚、大和ポークのロティ キャラメリゼしたハーブ入り。

そしてデセールはババを日本酒でアレンジ。奈良の地酒「豊祝」を升から注ぐプレゼンテーションで。

素材の魅力を余すところなく引き上げ、テロワールを感じさせる全9品のコースは、どれもモダンで驚きがありながらも王道を外さない味わい。ワインカーブに貯蔵されている「シャトー ムートン ロートシルト2001」などスペシャルなワインとのマリアージュも絶品でした。

こちらのレストランでもう一つ特筆すべきはクラシック音楽との融合。スタインウェイ&サンズのグランドピアノが設置され、この日も数々の受賞歴を持つピアニスト、大崎由貴氏の超絶技巧な演奏によって、特別なディナーがいっそう豊かなエクスペリエンスに。

今後、奈良県の文化政策顧問でもある世界的ピアニスト、反田恭平氏によるジャパン・ナショナル・オーケストラとの連携で、次世代アーティストのコンサートも予定しているそうです。また館内には究極の音にこだわった大型スピーカーを有するサロンも。

食後には「お水取り」で有名な東大寺二月堂界隈をナイトウォーキング。高台にあるので夜の風景も、幻想的でとてもロマンティックです。

翌朝には朝食でさらなる感動が! 予約した時間、席についたジャストタイミングで焼き立てのクロワッサンが提供されるのです。バターの豊潤な香り、香ばしさとアツアツが一気に口のなかで展開される、まさに口福時間でした。旅好きゆえそれなりに多彩な体験をしているつもりですが、こんなサービスは初めて。

歴史に触れ、五感を刺激された奈良の旅。華やかすぎず、通っぽい世界観がなんともいえず落ち着きました。「レストラン ル・ボワ」はランチやディナーだけでも楽しめるので、ぜひ文化の発信地を目指す「登大路ホテル奈良」で、上質でゆとりある大人時間を体感してみてください。

登大路ホテル奈良
住所/奈良市登大路町40-1
TEL/0120-995-546
URL/www.noborioji.com



Profile

古泉洋子Hiroko Koizumi コントリビューティング・シニア・ファッション・エディター。『Harper's BAZAAR』『ELLE Japon』などのモード誌から女性誌、富裕層向け雑誌まで幅広い媒体での編集経験を持つ。『NumeroTOKYO』には2017年秋よりファッション・エディトリアル・ディレクターとして参加した後、2020年4月からフリーランスとしての個人発信を強め、本誌ではファッションを読み解く連載「読むモード」を寄稿。広告のファッションヴィジュアルのディレクションも行う。著書に『この服でもう一度輝く』(講談社)など。イタリアと育った街、金沢をこよなく愛する。
Instagram: @hiroko_giovanna_koizumi

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