今すぐ観たい! スケートムービー | Numero TOKYO
Culture / Feature

今すぐ観たい! スケートムービー

ここ数年、スケートボードを題材にした映画・ドラマが豊作だ。映画評論家の森直人が特におすすめの作品をご紹介。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2021年12月号掲載)

1.『ベティ/スケート・キッチン』(2020年~)


© 2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
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実在のガールズスケーターがNYを駆ける人気ドラマ

これぞ新たなマスターピース。ガールズスケートブームの火付け役となった実在のチーム「スケート・キッチン」を主演に据え、Z世代の女子5人組の日常を描くHBOドラマシリーズだ。NYのローワーイーストサイドを舞台に、パークで出会った人種や性格もさまざまなクルーたち。シスターフッド(女性同士の連帯)を物語の基調としつつ、飾らないファッションや音楽も含めてストリートの現場の多様なリアルが詰まっている。彼女たちがキメる鮮やかなトリックの数々などを捉える、臨場感たっぷりのドキュメンタルなカメラも見事。現在シーズン2まで配信中。

U-NEXTにて見放題で独占配信中

2.『スケート・キッチン』(2018年)


©2017 Skate Girl Film LLC.
©2017 Skate Girl Film LLC.

ドラマシリーズの原型となった多様性の時代の画期的作品

『ベティ/スケート・キッチン』を生み出すきっかけになった映画で、同じく「スケート・キッチン」の5人が主演。彼女たちの自由な姿に魅せられたドキュメンタリー出身のクリスタル・モーゼル監督が、メンバーたちを本人に近しい役柄で「俳優」として起用した。レイチェル・ヴィンベルク演じる内気な17歳の少女カミーユを中心に、仲間意識や自己発見による成長を描く。彼女が恋するスケートボーダー男子役に扮するのは、あのジェイデン・スミス。劇映画としてのフィクショナルな要素を交えつつ、21世紀のストリートを実感させてくれる重要作だ。

DVD ¥4,180発売中 発売・販売元:ポニーキャニオン

3.『スケーターガール』(2021年)


インドの村から届けられた自由をつかみ取る感動

カースト制度の因習が根強いインドから生まれたヒューマンドラマ。国際的に一般認知が広がったスケートボードの文化的成熟を示すNetflix配信映画だ。ラジャスタン州の貧しい村で暮らすプレルナが、ロンドンからやって来たジェシカのおかげで初めてスケートボードを知る。間まもなくスケートパークが村にできて、滑ることの楽しさに魅せられる子どもたち。VANSのスニーカーを履いたプレルナの「空を自由に飛び回ってる感じ」という台詞に象徴されるように、保守的な環境に生きる少女の葛藤と解放を通して、スケボーの本質的な歓びを健全に伝えてくれる。

Netflix映画『スケーターガール』独占配信中

4.『mid90s ミッドナインティーズ』(2018年)


© 2018 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
© 2018 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.

ボーイズチームの友情とともに黄金の90年代を描く

1990年代半ばというスケーター文脈を核にしたストリートカルチャー沸騰期のLAが舞台。人気俳優のジョナ・ヒル(83年生まれ)が自らの少年時代の経験をもとに描いた監督デビュー作にして破格の傑作。まるでZ-BOYSチルドレンのような少年5人組を主人公に、多感な思春期模様の祝祭と哀切が綴られる。バギーパンツなどの定番ファッション、スーパー16mmやHi8の魚眼レンズで捉えた映像や、絶妙な選曲など、当時のスケート文化を知るための教科書のような一本に仕上がっている。配給・製作は尖鋭的なセンスで注目を集める独立系会社A24。

デラックス版DVD ¥4,620発売中 発売元:トランスフォーマー 販売元:TCエンタテインメント
『mid90s ミッドナインティーズ』 ジョナ・ヒル監督のインタビューを読む

5.『行き止まりの世界に生まれて』(2018年)


© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.
© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.

アメリカの現実をストリートからえぐる社会派の名作

米国のラストベルトと呼ばれる錆びついた工業地帯に属する中西部イリノイ州ロックフォード。この地で生まれ育ち、スケートボードで結びついた3人の男子の12年間を追いかけた青春群像ドキュメンタリー。分断や格差が渦巻く厳しい社会の内部から映画が立ち上がる。閉塞した米国の現状を生々しく刻み、第91回アカデミー賞ノミネートも果たした。監督は3人組の一人である中国出身のビン・リュー(1989年生まれ)。ハーモニー・コリンに多大な影響を受けたと語る彼だけあり、ワンシーンで映画『KIDS/キッズ』が一瞬テレビに映っていることにも注目。

DVD ¥4,180発売中 発売・販売元:TCエンタテインメント
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6.『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』(2019年)


©2019 A24 DISTRIBUTION LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
©2019 A24 DISTRIBUTION LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

格差社会における貧者の生活に密着したボードの表象

スケートボード映画としては異色の一本かもしれない。舞台はサンフランシスコのフィルモア地区。ジェントリフィケーション(高級化)と呼ばれる現象が顕著に起こるこのベイエリアでは、IT系企業の社員など新参の富裕層が移転して地価高騰が起き、低所得の地元住民が排除されていく。まさに「排除されつつある側」である主人公、アフリカ系の青年ジミーにとってスケートボードは交通手段である。「俺は若いし、黒人で、カネがない」。都市の変容がもたらしたこの実相は当然ブラック・ライヴズ・マターの動きとも関連する。製作はA24とプランBの共同。

DVD ¥4,180発売中 発売・販売元:TCエンタテインメント

7.『STAND STRONG』(2020年)


©2020 Team STAND STRONG. All rights reserved.
©2020 Team STAND STRONG. All rights reserved.

日本発、男子スケーターの等身大のリアルライフ

スケートボーダーの青春を描いた瑞々しい映画が日本から登場。中田海斗、佐川涼、松本崇、日高大作レイというさまざまなシーンで活躍する人気スケーターたちを主演に迎え、日本版『ロード・オブ・ドッグタウン』と呼べる成功の光と影、友情と絆の物語が展開する。チーム「CRASHER」を結成した4人は、SNSをきっかけに注目を集めていく。だが2人だけにスポンサーが付くことになり、いつも一緒だった彼らの歯車が狂い始める。原作・プロデュースは世界的なプロスケートボーダーの岡田晋。音楽にはLIBRO、ポチョムキン、Boseなどヒップホップの大物たちが参加。

Netflix、iTunes Store、Amazon Prime Videoほかにてデジタル配信中

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Profile

森直人Naoto Mori 映画評論家、ライター。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。数々の雑誌や新聞で執筆を手がけるほか、YouTube番組『活弁シネマ倶楽部』でMCを担当。

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