YMOバージョンの「Firecracker」をカヴァー。Khruangbinの摩訶不思議な魅力 | Numero TOKYO
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YMOバージョンの「Firecracker」をカヴァー。Khruangbinの摩訶不思議な魅力

最新リリースの中から、ヌメロ・トウキョウおすすめの音楽をピックアップ。今回は、Khruangbin(クルアンビン)の日本独自企画盤『全てが君に微笑む』をレビュー。

エキゾチック、スカスカ、メロウ。不思議な3人組のブレない原点

バンド名は、“クルアンビン”と読む。日本でも爆発的に人気を得はじめたアメリカ・テキサス州ヒューストン出身の3人組インストバンドだ。本作は、彼らの初期の楽曲を収録した日本独自企画盤CD。特に注目の収録曲は、YMOバージョンの「Firecracker」のカヴァーだ。今年3月に行われた彼らの初来日公演でも披露されていたが、あえて無機質さを強調したテクノ・ポップ・アレンジを狙ったこの楽曲が、生の楽器演奏で再現されているということが、まず驚きであり、非常にユニークだ。

彼らは、ブラック・ミュージックとタイの大衆音楽が融合したタイ・ファンクと呼ばれる音楽をカセットで聴いてバンドの着想を得たという。アジアを意識したメロディーを、カセットデッキから聴こえるようなスカスカでノスタルジックな音像とともに、ブルーズ、ソウル~ファンク的に解釈する──そんな彼らのスタイルは、エキゾチカをシンセサイザーでやるという構想に基づきこのマーティン・デニーの「Firecracker」のカヴァーから始まったYMOとも通じるところが大いにある。直近作と大きくクオリティや楽曲の方向性も変わらない今作では、彼らのそんなコンセプトのブレなさを実感することができる。

前述のライブでは、みぞおちにクリーンヒットするローラ・リーの重たいベース、ドナルド・“DJ”・ジョンソンの乾いたドラム、マーク・スピアーのサイケデリックな超テクギターという個性的なパートの駆け引きが生み出すグルーヴについ身体が動くとともに、ぬるい温泉に浸かっているような心地よい気分にもさせられた。個人的にはローラのコスプレ的なファッションと魅惑的な身振りにもうっとり。今年のフジロックでは最終日に出演、ライブ配信も決まっている。ぜひこの摩訶不思議な体験に浸ってみてほしい。


Khruangbin 『全てが君に微笑む』
¥2,200(2019/7/12発売 Beat Ink.)

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Text: Nami Igusa Edit: Chiho Inoue

Profile

井草七海Nami Igusa 東京都出身、ライター。主に音楽関連のコラムやディスクレビュー、ライナーノーツなどの執筆を手がけている。現在は音楽メディア《TURN》にてレギュラーライターおよび編集も担当。

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