ゆう姫(YJY)が、クリエイターたちに愛される理由 | Numero TOKYO
Ms.COINTREAU / Post

ゆう姫(YJY)が、クリエイターたちに愛される理由

Ms. COINTREAUの一人として、「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」が活動を追う、アーティストゆう姫(Young Juvenile Youth)がファーストアルバム『mirror』をリリース。アルバムへの思いを聞いた。

エレクトロユニットYoung Juvenile Youth(YJY)のボーカルとして活動するゆう姫の活動を追ってきたプロジェクトの最終章。去る11月30日、YJYは待望のファーストアルバム『mirror』を提げたリリース記念イベント『birth of mirror』を開催。この日はなんとゆう姫自身のバースデーでもあった。リリース直後から高い評価を受けているニューアルバムは結成5年目、ついに完成した待望の作品。自身がこの世に誕生した日と同じ日に、親しい仲間やファンを前に初お披露目した『mirror』について、また同作品に参加したさまざまなクリエイターとゆう姫との関係性に迫る。

写真:『mirror』リリース記念イベント『birth of mirror』でのパフォーマンス

辛さや恐怖の先にある、音楽を作る幸せ

──リリースパーティと同時に誕生日を迎え、率直にどんな気持ちでしたか?

準備している間は、珍しくすごくがむしゃらになっていましたね(笑)。基本的に誕生日って期待しちゃうから嫌なんです。どうしても人に求めてしまうというか、期待してしまう日だから。自分からいうのもなんだけれど、お誕生日おめでとうって言われたらやっぱり嬉しいし、言われなかったら言われなかったで嫌だし……。今回はそれを自分でオーガナイズしてしまうという気恥ずかしさがありつつも、リリースパーティだから人に伝わるようなライブをしなくちゃいけないという思いもあって、やることがすごく多かったですね。だから終わった直後はとにかくほっとしたっていう気持ちだけでしたね。

──イベントに向けた熱量はかなりのものだったのですね。当日のライブの評価も非常に高かったのですが、自身で手応えは感じましたか?

正直に言うと、ここ最近やったなかで最低のライブになってしまった、と終わった直後は落ち込んでいたんです。もちろん一生懸命やりましたが、出来としては自分のなかではあまり満足いっていなかった。終わった直後は崩れ落ちそうなくらいでした。なんていうんだろう、もっとできたなっていう思いが強かったんですよ。でも、後からライブの映像を振り返ったとき、自分たちのパフォーマンスや空間演出、周りの空気全体を見ることができて、YJYのベースというものが今やっとできたのかなって思えたんですよね。まだまだこれからというところがたくさんあるけれど、土台ができたというか、地に足がついた感じがありました。

──パフォーマンス、VJ、空間演出など、すべてを総合した演出で、YJYの世界観を表現できたということですか。

例えば、10を目標としてそこに到達するには1~9までの段階が必要で、でも意外とそこに気付かないというか、10を求めすぎて、何をしているのか、わからない状態になることってあると思うんです。今の段階では、10に達するまでの2くらいまでに達することができたかなって。でも2になっているということは、いつか10にまでいけるんじゃないかって思うんです。あ、これは数字が重要なわけではないんですけれどね(笑)。ものごとにはこれだけの時間がかかって、自分が納得がいって、幸せになれるものを作るには時間がかかるなと感じたし、すごく重要な時間だったからこれからが楽しみだなって今は思っています。

──初のフルアルバムのリリースということですが、結成からの5年間を振り返ると、どんな思いがありますか?

5年とはいえ、JEMAPURと出会ったこと自体が5年前で、会ってすぐ作り始めたんです。それに私はもともと音楽のプロだったわけではなく、何もかもが初めてだったから、そこから5年って考えるとすごく早いなって。ただ、あっという間という感覚はないですね。辛いこと、学ぶことが多かった5年間でした。ライブもずっと苦痛というか、怖さを感じていました。今は自分がどういう表現をしたいのかもう少し見えるようになってきたから、少しは慣れてきましたけれど。だからこの5年は本当に濃密な時間でした。

──辛いことが多かったなかで続けてこられた原動力はなんだったんでしょう?

やっぱり自分の曲を作ることに幸せを感じるから、苦痛でも怖くても進んでいかなければならないって思うんですよね。「しなければ」というのは違うかな。常に作っていきたいんです。

──曲を作る幸せの裏側にそこまでの苦痛や恐怖があったんですね。それでもやはり自分の音楽を突き詰めていきたい?

私にはそれしかできないので。

自己中な人々を増やしたい!

──今回のイベントやアルバムに参加してくれた周りの人々へはどんな思いがありますか?

もちろん感謝はあるんですけれど、一言じゃ言えないんですよね。今回のライブの空間演出のチームなども皆、自主的に考えて、自分たちの作品をYJYとともに発表したいって思いの人ばかりなんですよ。だからこちらから依頼して作品を作ってもらったという感覚はないし、そういう関係性だからこそ、言葉では言えない思いがあるんですよね。最近思うのは、自分の意思で動いてくれるという人をいかに自分が作られるかが重要なんじゃないかなって。YJYがこういう音楽を作っているなら、そういう思いで音楽を作っているから、じゃあ僕らはこういう形でこういうものを作るよって言ってくれるような人たちや、がいたり、曲を買おうと思ってくれる人たちをもっと増やしたいがいるんだと思う。イコール、ファンをもっと作りたいっていうことかな。ことです(笑)。

──ゆう姫さんは、そういった自己発信できる人たちのインスピレーション源となるのですね。

そうなれればいいなと思います。世の中にもっと自分でものを考えて、自分で行動する人がもっと増えればいいですね。みんなどんどん自己中になってほしい。それってすごく難しいことだと思うんです。思いを通すことって大変。人の意見とか、周りの意見とかあまり気にせず、自分の意思とはなんぞやってみんなが思えば、音楽も、アートの世界も、きっと政治の世界ももっと豊かになっていくだろうなって。そういう世界を目指したい。だからこそ問題提起をしていきたいなって。

──周りの目ってすごく気になるし、それで行動を制限してしまったり無理をしてしまう人も多いと思います。しかし、ゆう姫さんは自分の意見、思いを貫き通す力を持っているんですね。

周りの意見ばっかり聞くのって、もったいないと思うんです。ただ、自分のオリジナルを作るのに対し、もちろん人の目や意見が気になるし、対面する人々がいなければ作っていく意味はないんですけれど。それがいいことにつながれげばいいけど、基本的に自分が嫌だなと思うことは聞かなくていいし、それに割いている時間はもったいないと思いますね。

──その考え方に至ったきっかけは?

自分がもともとネガティブで、暗いというか(笑)。人に発信するというより自己を追求していたいタイプなので、こんなに自分のことを知りたがっていて、自分は何者なのか考えてきたのに、人から言われた言葉に翻弄されてわけわからなくなっちゃうのって困るなって気づいたんです。だったら自分が感じたままの気持ちに純粋に従っていこうって。それは『mirror』を作り終えてからより一層感じています。今は、そういう力をくれたアルバムなのだとつくづく思います。なので、聴いてくれた人がインスピレーションを受けてもらえればいいな。曲がどうのっていうより目に見えない思いを込めているので。

──細かいテクニック的な部分もファンにとっては聴き込んでしまうポイントになるかと思いますが、それ以上にそこに持っていったエネルギーや思いが詰まっているんですね。『mirror』について、SNSなどにも数多くの反響が寄せられていてそれを読んでいると、聴いた人それぞれが何かしらそういった思いを感じ取っているように見受けられます。

こんなに反応があったのは初めてかもしれない、っていうくらい良い反応をいただいていて、それは単純にすごく嬉しいです。だからちょっとテンションあがってしまっています(笑)。今までやってきたことが正しいんだなって再確認できた感覚があるんです。

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ゆう姫を取り巻く6人のクリエイター

ここからは、アルバム『mirror』 にさまざまな形で参加したクリエイターにゆう姫さんという女性についてお聞きしました。それぞれのクリエイターのフィルターを通して、ゆう姫さんというアーティストの内面により迫っていきたいと思います。それぞれの方のコメントに対する返答、またはその方についてお聞かせください。

関根光才(映像ディレクターwww.kosai.info)がアルバム『mirror』の中で一番好きな曲
「今回のアルバムの中では『Youth』が一番好き。『Girlfriend』も今までのYJYにない感じで好き。いくつかの曲は何度かライブでも聴いているので、この完成度までもってきたかと感慨深いものがあります。中でも『Slapback』は熟成度が高い! 『Anti Everthing』は過去トラックのニューミックスだけれど、大好きなので、このバージョンのMVも作りたいなと思うよ、本当に」

From ゆう姫
「Anti Everything」のPVも作ってくださいっていうのが私からの返信です(笑)。光才さんはYJYの始まりを作ってくれた人。私の人生においても、YJYとしても、なくしては語れない存在です。もうほかにいうことがない、圧倒的な存在です。普段厳しいですが、完成度を褒めてくれたことは嬉しいですね。でもこれからも、ぐうの音も出ないようなすごいものを作るので、見てろよって(笑)。光才さんには挑戦し続けていきたいです。

上野千蔵(カメラマン/ディレクター)がゆう姫を花に例えると…
「月下美人。色白くて、どこか東洋的な神秘性があるから。『Her』のMVで、ゆう姫の口から出る花はもともと月下美人で撮る予定だった。テストでは簡単に咲いたのに、本番では全然咲いてくれなくて、そういうわがままなところも似ているかも(笑)」

From ゆう姫
「月下美人に例えてくれましたけれど、きれいすぎると思います!写真で見てみると、シンプルなんだけれど華やかな素敵な花ですね。不思議でユニークな形だし、開いたり開かなかったり、気まぐれなところがあるんですね。千蔵さんは『Animation』『Youth』などのPVのカメラを担当してくれていて、ファインダーを通してずっとYJYを撮り続けてくれている人だからすごく近い人。一番どういう風に見られているのか気になっていたんですよね。今回『Her』のPVを監督してもらうにあたって、ものすごくプレッシャーを感じていたんだと思うんです。初のミュージックビデオの監督作品として、ものすごい熱量を注いでくれたと思います。見ていただければわかると思うんですが、静かなパッションを感じる作品なんです。すごく千蔵さんの世界観が好きで、彼自身の世界観をYJYの曲に落とし込んでくれたというか、それだけで嬉しかったですね。この苔、ものすごいふわふわなんです。だけど一歩踏み外せばズボッて足がハマってしまって抜け出せないみたいな場所。森の妖精になった気分で気持ちよかったんですけれど、フラジャイルだからドキドキしながら撮影していました。日の光が急にすごいタイミングで入ってきたり、本当に自然の力を借りた映像作品になりました」

WEIRDCORE (ビデオデザイナー weirdcore.tv)が、ゆう姫をフルーツに例えると?
「えっと…。パッションフルーツかな? 外見はものすごくミニマルで整っていて、きちんとしていシンプルなんだけど、中身はとてもカラフルで、ごちゃごちゃしているから!」

From ゆう姫
「ロンドンで初めて会ったときのインパクトが衝撃的だったって言われたんですよね。「Animation」などの作品でしか知らなかったけれど、実際にあったらすごく弾けていて、エネルギッシュな人だったんだってびっくりされてしまったんです。だからこそ、まだみんなが知らない私の側面を見せたいっていうことで「Slapback」の作品が生まれたのだと思います。例えのパッションフルーツというのはまさにそういうギャップを私に感じてくれたからかな」

Shane Lester(ディレクター/デザイナー jkdcollective.jp)から見た、ゆう姫をイメージする色とは?
「黒。シャープで、深みがあって、洗練されていて、ミステリアスでポエティック。まさに、デザイナーの山本耀司が言った『黒は控えめでいて、同時に大胆だ』というイメージ。ゆう姫とは今回初めてのコラボレーションだったけれど、すごくイージーゴーイングでありながら、こだわりがあって、すごくピュアでいて凝縮された大切な思いを内に秘めているというイメージがあったよ」

From ゆう姫
「私を黒にたとえてくれているのが意外。でも言っている意味はわかります。私という存在について言ってくれていること、すべてShaneにそのまま同じことが言えるよって感じです。Shaneはすごくクールで、シャイであったかい感じ。包容力がある人だなって思いました。こっちが色々リクエストを出しても、快く受けてくれたし、何より、Shane自身が作品作りをすごく楽しんでくれているのが伝わりました」

Jorgen Axelvall(フォトグラファー www.jorgenaxelvall.com)が、ゆう姫を季節に例えると…
「ゆう姫は冬だと思うよ。僕はスウェーデン出身なんだけれど、冬はひんやりとしてクリーンで、空気が澄んでいる。ゆう姫は美しい雪の結晶のようだと思う」

From ゆう姫
「作品撮りで声を掛けてくれて、彼自身を知りました。初めて仕事したときからすごいやりやすかったんですよね。一発で引き出してくれたという感覚があります。彼自身自然体で、ポエティックな人だなって思います。作品を見ると、なにか詩を書きたくなるんですよね。言葉を添えたくなるくらい語りかける写真を撮るのですごく好きです。『mirror』のジャケ写はあんまりイメージ決めないで、撮り始めたのですが、結果的に表紙と中身のコントラストもできたし、すごく納得のいく作品になりました」

JEMAPUR (YJY)が思う、今一番ゆう姫らしい曲は?
「やっぱりそれが『mirror』というアルバムではないでしょうか? 時間をかけて音楽や自身と向き合ったことで、ゆう姫の内側からでてきたものが、メロディや歌詞としてしっかり表現されているから。僕の作る複雑なグルーヴを悩みながらも乗りこなしてくれて、音楽に命をふきこんでくれる、真っ直ぐでオリジナルなアーティストだと思います」

From ゆう姫
「もうちょっと面白いことを書いて欲しかった(笑)。つまんないこと書いたなっていうのが私からの返信です(笑)。まぁ、一緒にやっているから書きづらいですよね。本当に難しいグルーヴを提案してくるので、誰だって悩みます(笑)。いつも怒られています。これは違う!とか。でももっと複雑なグルーヴでも大丈夫だよって伝えたいです。これからも彼ともっとオリジナルを追求したいですね」

『mirror』
初回生産限定盤 CD+DVD 3,600円 
7インチサイズ豪華紙ジャケ仕様 16Pブックレット
通常盤 CD 2,500円
www.umaa.net/what/mirror.html

LIVE
2017年12月30日(土) 「Crossing Carnival」@渋谷 WWW
2018年1月26日(金)@名古屋 JB’s
2018年2月9日(金)@「MeCA」渋谷 WWW / WWW X

RADIO
Inter FM(金曜 20:00〜22:30)で放送中「Tokyo Scene」のマンスリーゲストにYJYが登場! 2018年1月より、「YJY’s EYE」がスタート。
www.interfm.co.jp/tokyo

Ms.COINTREAU

Photos:Shuichi Yamakawa
Styling:Masaki Kataoka @avgvst
Hair & Make:Tomomi Fukuchi 
Interview&Text:Etsuko Soeda 
Edit:Yukiko Shinmura

Profile

ゆう姫(Yuki)電子音楽家のJEMAPUR(ジェマパー)と2012年にYoung Juvenile Youthを結成。15年にはiTunesが世界中のニューカマーの中から厳選する「NEW ARTIST スポットライト」に選出された。同年リリースされたミニ・アルバム 「Animation」は、iTunes エレクトロニック・チャートにおいて最高7週1位を獲得。Taicoclub、朝霧JAM、EMAF TOKYO などへ出演や、2016年初頭にはMETAFIVE のオープニングアクトをつとめるなど、精力的にライヴ活動も行っている。2017年11月22日、初のフルアルバム「mirror」をリリース。http://yjymusic.com

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