杉野希妃、主演監督作品
『雪女』が東京国際映画祭にて公式上映
夢を追い求める女性をサポートする「コアントロー・クリエイティブ・クルー」として、「コアントロー」が支援する日本人女性クリエイターのひとり、杉野希妃が主演監督を務める作品『雪女』が完成。公式上映の場となった第29回東京国際映画祭、会期中の彼女に直撃した。
──東京映画祭のコンペ部門で『雪女』が選出されましたが、今はどんな心境でしょうか?
「どう受け入れてもらえるか全くわからないという点で、そわそわしています。これまでは、ひたすら内を見つめる作業だったように思います。現場では死にもの狂いというか、感覚が麻痺してたような状態でした。監督である自分と、俳優である自分を、別人として捉えて見るという感覚というか。自分が何人もいるような状態でやっていたんですよ。客観性がかなり必要だったんです。それは、内を見つめる作業だったのだと思います。でも、このように、上映される日を迎えると、私が向き合う対象が外になったことに気付いて、戸惑っているというのが正直な感想でしょうか(笑)自分の内面が詰まっている映画だなという気もして、それを見つめることが苦しかったりします」
──出演、演出、監督までやっていらして、全部が自分の要素で作られているからですか?
「そうなんです。特に、編集作業は自分自身と向き合わざるを得ないので。どのキャラクターも自分の分身に見えますし、自分の願望や解釈がつまり過ぎた自我の塊みたいな映像になってしまったんじゃないだろうかと悶々と悩んだり。初めは脚本通りの編集を考えていたんですが、作品の世界観はもう少し寡黙でもいいんじゃないかなと思い始めたんです。でも、どのシーンも思い入れが強くて、削ぎ落とせなくて。そんな中、アピチャッポン・ウィーラセタクンの映画の編集や監督としても知られているタイのエディター、リー・チャータメーティクンがラフで編集したものを観てワァ!となって。私が悩んでいた部分が思いきり削られていて、そこから自分の気持ちに抜けができたというか空気が入ってきて、ようやく楽になれたという感覚でした」
──説明的なセリフやカットが少なかったですよね。
「脚本で説明的だった部分を削ったんです。半年以上、自分と向き合って試行錯誤しながら作って、ようやくある程度固まったというタイミングで、東京国際映画祭の方に観ていただいたんです。東京国際映画祭にはこれまで本当にお世話になってきていて、だからこそ厳しい目で見るはずだし、一観客としてコンペティション作品のレベルの高さも知っていたので、選出決定の連絡をいただいた時は、驚きましたし、救われたという心境でした」
──作品に対しての気持ちも切り替わってきましたか?
「はい。紆余曲折を経て、心から愛せる作品ですし、私らしい作品になったなと思っています。良いところも悪いところもすべて受け入れてこれからも進化していきたい」
衣装協力/TADASHI SHOJI
Photos:Yuji Namba
Interview:Tomoko Ogawa