21世紀少女 vol.1
デザイナー中里周子
カオスアートのニューエイジ
フォトグラファー田口まきと、小誌エディトリアル・ディレクター軍地彩弓がお送りする連載「21世紀少女」。クリエイターやアーティストなど、21世紀的な感覚を持つ新世代女子を紹介。ファッションブランド「NORIKONAKAZATO」デザイナーの中里周子のアトリエに潜入し、4人の仲間たちと無造作に置かれた制作材料に囲まれながら、彼女の頭の中を探った。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2015年3月号掲載)
中里周子の年表
2003年 15歳
初めて一人で海外に行った。カナダのバンクーバー。
2007年 19歳
大学浪人時代。初めて死ぬ気で努力した。
2011年 23歳
「ここのがっこう」入学。デザイナーになる決意。
2012年 24歳
東京藝術大学大学院美術教育専攻に入学。
2014年 26歳
「ITS」2014でジュエリー部門グランプリ受賞。
中里周子への5つの質問
──今の日本をどう思いますか?(政治・経済・文化など、総合的な意味で)
「今の日本…。なんか、あんまり実感ないですよね。これは世代的に半径数メートルの世界で生きているからなのかもしれないけど。でも、それが自分の弱みにもなっていると思うんですよ。弱みだけど、見なくてもやり過ごせるような。日本にいれば、生命の危険を感じないんですよね。ぬるま湯に浸かっているんですよね。安全だからヘタれるし、安全だから、こんなくだらないもの作っていられるし…。死にそうだったら絶対こんなの作らないですもん(笑)」
──尊敬している人や憧れの人は誰ですか?
「writtenafterwordsの山縣良和先生と、mikiosakabeデザイナーの坂部三樹郎先生です。お二方とも“ここのがっこう”で講師をされていて出会いました。今回一緒に撮影した他の4人も同じ学校の仲間たちで、卒業生や在学生同士で作品作りをしたり、面白いコミュニティが出来上がってますね。あとは、自分の家族は素晴らしい。私に対しての愛情が尋常じゃないので、感謝しかないです。自分のクリエイションも、家族で作っているくらいの気持ちです」
──今後の目標や、挑戦したいことは何ですか?
「デパートを作りたい! 自分の好きな物だけ置いて包装紙まで全て自分で作って…。服を作るだけじゃなくて、場所も全て作りたいんですよね。“奇想天外な売買の場所”というか。あとは“ネタの宝庫”になりたい。誰かが見たときに「やられたー!」「その見方、あったかー!」みたいな、驚きや新らしさを更新していきたいんです。そのためなら表現のジャンルは問わない。でも、動きとダイナミズムとエレガンスは絶対に欠かせない要素です」
──今いちばん興味があること、今いちばん怖いと思うことは、それぞれ何ですか?
「興味があるのは、地方の土産物屋さん(笑)。変なものとかが置いてあって、土産物自体がもうヤバい。寂れてれば寂れてるほど好きです。今回のメンバーで地方の土産物を買って作品作りをしながら行脚とかしたい(笑)。怖いのは、いつもショートスパンで締切があること。その度にスベったらどうしようって、いつも考えてます。自分のやっていることに対して突如として恐怖を感じることがあって。始めちゃえば、没頭して何も思わなくなるんですけどね」
──10年後の日本はどうなっていると思いますか?
「うーん…。あんまり変わっていないんじゃないかな。相変わらず安全で、あってもなくても生命に関わらないようなクリエイションがたくさん存在していて。「これから悪くなる」という話をよく耳にしたりしますが、私自身にはそんな実感はないし…。私が今のもの作りを続けていくのであれば場所は問わないので、海外に行くことも視野に入れてはいます。でも正直、まだわからないですね。そこまで深く考えたことなかったな」
Photos:Maki Taguchi
Direction:Sayumi Gunji
Text:Rie Hayashi