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Culture Post

21世紀少女 vol.1
デザイナー中里周子
カオスアートのニューエイジ

フォトグラファー田口まきと、小誌エディトリアル・ディレクター軍地彩弓がお送りする連載「21世紀少女」。クリエイターやアーティストなど、21世紀的な感覚を持つ新世代女子を紹介。ファッションブランド「NORIKONAKAZATO」デザイナーの中里周子のアトリエに潜入し、4人の仲間たちと無造作に置かれた制作材料に囲まれながら、彼女の頭の中を探った。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2015年3月号掲載)

Photos:Maki Taguchi
Direction:Sayumi Gunji
Text:Rie Hayashi

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(左上から時計回りに)サスキア(モデル)、青木明子(デザイナー)、山本りさ子(ヘアメイク)、KOTONA(デザイナー)、中里周子(デザイナー)

軍地彩弓が読み解く
「浮遊する記憶と未来」

「新しいって、そんなに偉いことなんですかね?」。かつて読者インタビューをしていた頃に、22歳の青学の女子に言われた言葉がずーっと気になっていた。ファッション編集者が見出しに付けがちな「最新ファッション」「今年のトレンドはこれ!」的なコピーを根底から覆してしまう言葉だと思った。

中里周子の作品にはそのときとおんなじ感覚がある。なんだかぞわぞわさせられるのだ。盆栽とクリスタルを組み合わせたリング。鶴の置き物のようなネックレス。ヨーロッパ最大のファッションコンテスト「ITS」で受賞した作品には、お土産物屋さんで売られているようなカニのオブジェ。いろんな記憶を組み合わせて生まれるジュエリーや服たちは、新しさって感覚を突き抜けてしまっている。これってファッションなの? そもそもファッションってなんだっけ?

「モノと人の愛の形に惹かれるんです」と中里は言う。「没落貴族、の感覚みたいなもの、ですかね。親の影響もあると思うんですが、父姉兄が大学の研究者で、おばあちゃんちにはすごく上品なものと、どっか古くさいものとかが置いてあった環境だから、そういう影響があるのかもしれません。自分の美意識にかなっていればそれでいい。よく素材を探しに大井競馬場の場末感漂うフリマみたいなのに行くんですが、なんでこんなも作ったんだろー、という人の発想力に惹かれるんですね」。

作品は幕の内弁当のようにカオス、それでいてどっか醒めた目線を感じる。「今の時代感というか、私たちの世代って、そんなに頑張らなくっていいという、すごく緩い時代だと思うんです。そんなに頑張らなくても食べるのに困らないし、必死に生きなくてもいい。海外に行ってあらためて日本を見たときに、安全で生命の危機を感じないで済む場所、というのはすごいことなんだな、と。許容力のある社会だから“へたれ”でも生きていけるんです。へたれからの開き直り、というか」。

彼女の作品を支えているのが、writtenafterwordsの山縣良和やmikiosakabeの坂部三樹郎が主宰する「ここのがっこう」という学校で知り合った仲間たちだ。「ここで学んで、いろんな仲間と知り合えたから、一人じゃないんだって感覚がすごくうれしかったですね。認め合って助け合う。それが今のモノ作りの原動力です」。聖と俗、新しさと古さ、完成と未完。境界のないふわっと浮遊感がある社会で、しっかりと自分の美意識を探る。今っぽいなーと思う。そしてどっかで羨ましいと思う。境界なき世界がきっと未来だと思うから。

中里周子を読み解く
周りの“モノ”たち

Profile

中里周子(Noriko Nakazato) 1988年、東京都生まれ。「NORIKO NAKAZATO」デザイナー。東京藝術大学大学院博士課程(本郷研究室)在学中。欧州最大のファッションコンテスト「ITS(イッツ)」ジュエリー部門のグランプリを受賞。

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