2000年代、ジャンル越境の機運を追い風に、あるギャラリーの戦いが幕を開けた。それから20年余り。躍進を遂げたNANZUKAが、設立の地・渋谷へ帰ってくる。こけら落としは奇想の巨匠・田名網敬一(たなあみ・けいいち)。遺志を継ぐ者×託した者、新たな狼煙(のろし)が立ち昇る。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年10月号掲載)



東京は渋谷駅の東側、宮益坂と青山通りに挟まれた三角地帯。2005年、今はなきビルの地下で、そのギャラリーは産声を上げた。
NANZUKA UNDERGROUND――デザイン、音楽、ファッション、ストリートカルチャーなど、アート周辺分野の創造性に光を当てる実験空間。以降、白金、原宿へと拠点を移しつつ国内外へと規模を拡大。田名網敬一、空山基、山口はるみなど、日本のアートシーンから疎外されてきた偉大な才能や、越境的な文化背景を持つ若手に評価を与え、世界へと接続を図ってきた。
なかでも田名網敬一(1936-2024年)はデザイン界で長いキャリアを築きながら、2000年頃にアーティストとして若者の間で人気が爆発。その後、同ギャラリーと共に海外アートフェアへ出展、世界各地で発表を行い、幼少時の戦争体験など脳内イメージ渦巻く作品宇宙を深めていった。

そして26年。新たな名のもとにNANZUKAが、設立の地に立つ複合施設「渋谷アクシュ」へと凱旋を遂げる。こけら落としは田名網敬一展「DO NOT BOMB」。2年前、国立新美術館の回顧展で発表した遺作で田名網は、自身が見たという“空襲の光に浮かぶ金魚”のモチーフにこのメッセージを添えた。
共にアート界の権威に挑んだ両者。日本の戦後アート文脈を世界の系譜につなげるため、ゆかりの地から新たな眺望を切り開いていく。


田名網敬一「DO NOT BOMB」
2024年誕生の複合施設にオープンする新NANZUKAのこけら落とし展。田名網が生涯にわたり描いた戦争の記憶を軸に、初期作品から未発表作までを紹介する。最新情報はサイトを参照のこと。
会期/9月12日(土)~ 10月17日(土)
会場/NANZUKA
住所/東京都渋谷区渋谷2-17-1 渋谷アクシュ3F
URL/https://nanzuka.com/ja/exhibitions/keiichi-tanaami-do-not-bomb
Edit & Text : Keita Fukasawa
