そこにあるだけで、眺めるだけで、使うだけでなんだか豊かな気分になる。Numero CLOSETがセレクトした毎日の暮らしを彩る新作アート&クラフトをご紹介。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年5月号掲載)
※掲載作品(一部を除く)は小誌オンラインストア『Numero CLOSET』にて順次販売。
01
Kaoru Usukubo|薄久保香

『Bananas are berries, but strawberries are not. バナナはベリー、でも苺はベリーじゃない』(2026年 油彩/キャンバス)¥286,000
現代アーティスト・薄久保香による、緻密に描き写すことで完成された絵画を切断し、その断片を再配置する「断片の力学」シリーズ。「バナナは学術分類ではベリーに入るのに、苺はベリーではない」という事実を起点に制作された本作は、「切ってはいけない」絵を、苺の花から着想したかたちに小さく切断することで、私たちが当たり前に信じていることの輪郭に触れる。
02
Yuka Ando|安藤由香

フラワーベース(左から)¥38,500 ¥33,000 ¥16,500
凛とした端正なフォルムに、空を思わせるつかみどころのない繊細な色のグラデーションが印象的な陶芸家・安藤由香の作品。釉薬をとことん追求し、色にこだわり続け、色を表現するために行き着いた造形。障子越しにうっすらと差し込む自然光に合うような、陰影を味方にする色と質感を模索して生まれた、グレイッシュなニュアンスカラーとの調和が美しい。
03
Ⓛ|エル

15色以上の糸を使って仕上げたウェアラブルなアートピース。スウェット『PLANET OF LOVE』¥137,500
直に触れる人に新しい感情を呼び起こさせ、その感覚を祝福するために制作する、刺繍作家ユニットⓁ。スウェットのボディに私写真を刺繍した作品『PLANET OF LOVE』に縫い表されているのは、とある惑星に流れる静かで穏やかな愛の時間。
04
Kie Terasawa|寺澤季恵

グラス(左から) ¥22,000 ¥20,000 ¥14,300 ¥20,000
金沢を拠点に、吹きガラス特有の形や現象と自身の生命観の間で制作するガラス彫刻作家・寺澤季恵。腐敗や死から「生」を表現するモチーフや集合体には、不気味さと美しさが共存する。独特な色合い、ステムに増殖する粒々、泡のような、生命体のような造形のアーティスティックなグラスたちが不思議な存在感を放つ。
05
WOWs|ワウ

『徘徊するヘアカタログ』(2025年 アクリル/ジェッソ/キャンバス)¥55,000
これまでに影響を受けてきたさまざまな文化的要素を土台に、時代のムードや自身の感情を織り交ぜたグラフィック表現を行う、ワウ。視覚的な再構築を通して日常とカルチャーの接点を、多様なスタイルで描き出す。ノスタルジーを纏いながら、素顔を探し徘徊する様子を表現した。
06
Mizue Fukagawa|深川 瑞恵

まるで石に繊細なガラスの植物が生息しているかのような『stone to burgeon』(すべて参考作品)¥16,500〜(参考価格)※6月以降の販売予定。
身近に起こる小さな変化や発見に意識を向け、感じたことを植物とガラスを用いて可視化させ伝える。ガラス作家・深川瑞恵は、幼少期より日常の中で目にし、触れてきた植物の、素直なフォルムからあふれる生命力の儚さに惹きつけられ制作する。
07
Rinoi Imada|今田莉野生

(左から)『つぶやきのかたまり』各¥33,000、『Between』¥66,000。
ガラス造形作家・今田莉野生は、言語に基づくアイデンティティや感情の刹那をすくい上げることを主題に、ガラスを媒介に思考を視覚化する多角的な制作を行う。言葉を発することへの感情の揺らぎ、心の中のつぶやきを可視化させた、吹き出しのようなオブジェ『つぶやきのかたまり』(左)。他者とのコミュニケーションの中で生まれる言葉と感情の残り香をガラス膜に押し込み「感情の内側」のかたちとして表現した『Between』(右)。
08
Maoka Ueda|上田真央香

(左から)『Agnes 』¥38,500、『The soil』¥75,900
「Wonky Tunes(グラグラで不安定な旋律)」をコンセプトに、生命力と宇宙の神秘をポップなヴィジュアルで魅せる、上田真央香。黄金比や渦といった自然界にひそむ普遍的で数理的なパターンをベースに、キャラクターを踊るように連ね、曼荼羅のような象徴的イメージを描く。『Agnes 』(左)は夕暮れどきに舞う芽を、『The soil』(右)は、土から生命が生まれ、微生物や花々、ミクロからマクロの命のめぐりをそれぞれ表現。
09
Yuuki Abe|阿部有希

鉄絵マグカップ(大)¥8,250 (小)各¥7,480
土が作り出す形や質感、模様の面白さを大切に作陶する陶芸家、阿部有希。細かな土の罅による模様が印象的な罅絵、繊細かつダイナミックに黒い鉄絵を施した器を通じて、釉薬の肌触りなど土が見せる表情を味わえる。モダンなフォルムと土の温かみを捉えたプリミティブなテクスチャーが調和し、静かなる重厚感を醸し出す。
10
Chiaki Hirano|平野千明

『CAT』(2026年 紙)¥55,000
白と黒の紙の重なり、カッターナイフ一つで精巧緻密に像を切り出す。アーティスト平野千明は、自然に見立てた紙を切り開くことで可視化される存在をコンセプトにアートワークを行う。動物をモチーフとした造形を通じて、生物進化と人間文明との相互作用を視覚的に探る「現代型進化論」シリーズ。作品に刻まれた抽象的な文様は、進化の軌跡と文明の構造とが複雑に交錯する過程を象徴し、動物のフォルムそのものを、生命史と人類史の交点として再定義する。
Photos:Kouki Hayashi Edit&Text:Masumi Sasaki






