まるでスイート!? カタール航空のビジネスクラス&ドーハのストップオーバーを体験

世界中の航空会社で唯一、スカイトラックス社の「ワールド・ベスト・エアライン」賞を8回受賞しているカタール航空。特にビジネスクラスの「Qsuite(以下、Qスイート)」はその名の通り、スイートのようなラグジュアリーな座席仕様とおもてなしで、ジェットセッターからの評判がかなり高い。私の中で「いつか乗りたいビジネスクラスリスト」のトップだったQスイートに、2024年12月初めて搭乗することができたのでレポートしたい。あわせて並ばずカタールの入国審査が完了するVIPなアライバルラウンジと、1泊14米ドルから叶うドーハでのストップオーバーパッケージも体験してきたので紹介したい。
ダブルや4人向かい合わせも可能! 世界初の個室型ビジネスクラス
今回の旅程は、東京の成田空港を出発し、カタールのドーハ・ハマド空港でトランジットし、サウジアラビアのジッダへ。復路でカタール航空のストップオーバーパッケージを使い、ドーハで一泊し、帰国するという内容だった。Qスイートは往路の22:30成田発、4:05ドーハ着のQR807のフライトで利用した。
まずはビジネスクラスレーンでスムーズにチェックイン。カタール航空のビジネスクラスを利用する場合、搭乗までの待ち時間に同じワンワールドアライアンスに加盟している、JAL(日本航空)のサクララウンジで過ごすことができる。食事やアルコール類の提供があるのはもちろん、シャワールームやマッサージチェアまで備えられているのでフライト前のリフレッシュにありがたい。
今回私が搭乗したQR807の機材は、ボーイング777機。2025年2月15日(土)より増便されるQR809の成田-ドーハ線では、エアバスA350-900型機が使用されるようだが、どちらにもQスイートが搭載されている。
まず驚いたのは、ビジネスクラスでありながら扉付きの個室型シートであること。実は世界で初めてビジネスクラスに扉をつけたのがこのQスイートだ。カタール航空のイメージカラーであるバーガンディを基調としたスタイリッシュで高級感ある設えも目を引く。
Qスイートは、扉を閉めずとも周りの視線が気にならない造りだ。しかし扉を閉めると個室となり、一気にプライベート感が高まる。モニターもかなり大きく、一人暮らし家庭のテレビぐらいあるのではないかと感じた。
ビジネスクラスのシート配置は1-2-1。エコノミークラスが3-4-3であることを考えると、その広さは格別だ。Aの座席が後ろ向き、Bの座席が進行方向というように、シートを互い違いにすることで、よりゆとりある座席へと作り上げている。

Qスイートで特筆すべきは、前後や中央隣り合わせるシートのパーテーションが可動式になっていること。中央席の場合、最大で前後4席をボックスシートにすることができるため、移動中に複数人で会議や歓談をすることができる。実際に私が搭乗した際は、中央の2席をダブルシートに変えて、子供と添い寝する乗客の姿も見られた。
機内食はミシュラン2つ星「NARISAWA」コラボ、アメニティはディプティック
搭乗するとウェルカムドリンクでもてなされる。ソフトドリンクのほか、シャンパンは「BILLECART SALMON Brut」か「Taittinger Prestige Rose」の2種類から選べるのが嬉しい。機内でのワイン提供の場合、揺れが予想されることから足なしのグラスが使われる場合が多いのだが、Qスイートでは足つきグラスが使用されていた。こういったちょっとした特別感が、かなり嬉しい。
離陸後にもドリンクとスナックのサービスがあり、その後機内食が登場。カタール航空の東京発便のQスイートでは、ミシュラン2つ星を有し、「世界のベスト50レストラン」でも常に上位にランクインしている「NARISAWA」の成澤由浩シェフ考案の機内食を選ぶことができる(※1月中旬で終了)。
スターターは、一流の魚問屋として知られる「やま幸」のマグロを使ったサラダをチョイス。彩り鮮やかで見た目からスペシャル感溢れる。ねっとりとした食感のマグロに、オクラやイカ、イクラ、エビ、湯葉に柚子のビネグレットや穂じそがかけられており、今まで食べたビジネスクラスの機内食の中でもピカイチに完成度が高かった。ビネグレットと湯葉の組み合わせはチーズのようでもあり、シャンパンにも合う。
「和牛のしぐれ煮シチュー」は、口の中でやわらかく溶ける和牛が印象的。ゴボウ、ナス、ピーマンも入ったシチューは、日本人も外国人も親しみやすい和洋折衷な味わいだ。日本の里山にある豊かな食文化と先人たちの知恵(里山文化)を、料理を通じて表現する「イノベーティヴ里山キュイジーヌ(革新的里山料理)」という「NARISAWA」の哲学が忠実に表現されている。バケットに添えられる「モンテヴィビアーノ」のスパイシーレモンオイルもかなりおいしいので、機会があれば是非ご賞味を。
スイーツの「トロピカルフルーツパフェ」も成澤シェフが考案。添えられている白桃のモナカがプティフールの役割を果たしている。希望すればフランス産シェーブルやダナブル、レッドチェダーなどのチーズもオーダー可能だ。
食後はオリジナルのナイトウェアに着替えてリラックス。Qスイートでは、上下に分かれた着心地の良いナイトウェアもアメニティに含まれている。このサービスも他のエアラインではファーストクラスに相当するだろう。
このほかスリッパやブランケット、枕、フランスの高級香水ブランド「Diptyque(ディプティック)」の特注アメニティキットも付く。キットの中にはリップクリーム、ボディローション、エッセンシャルフェイスクリーム、フレグランスなどが入っている。長時間フライトのお供に大変ありがたいラインアップだ。
就寝時にはシートをフルフラットにして、ベッドパッドを敷いてもらい横になって休むことができる。扉を閉めて個室状態で眠ることができるという安心感はこの上ない。これを体験してしまうと、ほかのビジネスクラスでは満足できなくなりそうなくらいだ。
着陸前の朝食では、スターターでフルーツを、メインでサバの塩焼きを選択。飲み物にはパイナップルとマンゴーのスムージーも添えられ、クロワッサンやサワードゥ、パイナップルデニッシュなどの朝食パンもサービスされた。このほか、飛行中にお腹が空いたら、チップスやポップコーン、チョコレートやビスケットなどのスナックを自由にオーダーできる。

成田からドーハまでの飛行時間は約13時間だったが、コース仕立ての2回の食事に映画などの機内エンターテインメント、個室型フルフラットシートでの就寝時間を考えるとあっという間だ。CAの気持ちの良いサービスも含め、Qスイートは長時間のフライトでこそ真価を発揮するのだと実感した。
ガーデンを見渡す、豪華絢爛なドーハ空港の新ビジネスクラスラウンジ
ドーハ・ハマド国際空港でのトランジットも、ビジネスクラスであれば保安検査も専用レーンを利用でき、かなりスムーズ。乗り継ぎの間は、2023年にオープンしたカタール航空の「アル・ムルジャン ビジネスクラスラウンジ ザ・ガーデン」を利用した。こちらは、ファーストクラスおよびビジネスクラス専用で、「アル・ムルジャン ビジネスラウンジ – サウス」の別棟としてオープンした最新のラウンジだ。
このラウンジの特徴の一つが、「FIFAワールドカップ カタール2022(以下、ワールドカップ)」の開催に合わせて拡張された空港の新エリアで、1万平方メートルにおよぶ熱帯屋内庭園の「オーチャード (The Orchard)」を一望できること。ラウンジの内装もトロピカルガーデンや水辺の風景を反映し、自然光、豊かな緑、スタイリッシュなインテリアを取り入れたモダンなデザインとなっている。
ラウンジの広さは7,390平方メートルで、最大収容人数は707名にも及び、ダイニングエリアの「イーストウィング」とリラックスエリアの「ウエストウィング」の2つに分かれている。まずはエントランス右手に広がる「イーストウィング」で食事をいただいた。
料理は温冷菜のビュッフェが楽しめるほか、モーニング、ランチ、ディナーそれぞれの時間帯に応じて用意されたアラカルトメニューをオーダーすることができる。私は朝食の時間帯での利用だったので、エッグベネディクトを注文。
シャンパンメニューを見ると、英国王室に愛され続けるメゾン「LANSON」の「BLACK LABEL BRUT」もあったので“朝シャン”を満喫した。このほかにも「J.M. Gobillard & Fils」のロゼシャンパーニュなど豊富なアルコールメニューが揃うほか、カクテル&ビストロバーや、コーヒー&ペストリーバーもある。
ビュッフェでは洋食だけでなく、出来立てのアラビアン料理や世界各国の料理もラインアップ。ラウンジで食事をするだけで中東の食文化を体感できると感じた。
イーストウィングにはダイニングエリアに加えて、ゲーミングルームがあるほか、フィットネススタジオや7つのスパ・トリートメントルーム(トリートメントメニューは別途料金)施設まで備えられている。確かに長時間の移動で身体が凝り固るフライト後に、フィットネススタジオやスパで身体をほぐせるのは大変ありがたい。
食後はエントランス左手のウエストウィングへ移動し、しばし休息。ダイニングエリアよりも静かで落ち着いた雰囲気だ。
こちらのエリアには、シャワールームはもちろんのこと、プライバシーが確保された仮眠室を24部屋も完備。しかも各部屋にはブランケットや、クローゼット、ミネラルウォーター完備の冷蔵庫もあり、最大6時間まで利用できる。他社エアラインのビジネスクラスラウンジにも仮眠エリアが用意されていることはあるが、カーテンやパーテーションで仕切られている程度というのが多い。個室型の仮眠室がこんなにもたくさん用意されているなんて、ファーストクラスラウンジ並みの設えだ。
ちなみに「アル・ムルジャン ビジネスクラスラウンジ ザ・ガーデン」の2つのエリアをつなぐように存在するのが、世界初の「ルイ・ヴィトン・ラウンジ by ヤニック・アレノ」。こちらはカタール航空のファーストクラス、ビジネスクラスの限られた搭乗客、ならびにルイ・ヴィトンのVIP特別招待客のみ利用できるそうだ。
アライバルラウンジ利用&並ばずカタール入国が叶う「アル・マハ・サービス」
復路ではドーハでストップオーバー(途中降機)をした。この際に利用したのが、カタール航空のスタッフがアテンドし、乗り継ぎや到着時の入国、出発時の出国をスムーズに進めてくれる「アル・マハ・サービス」だ。ゴールドサービスと、プラチナサービスの2種類あり、今回利用したプラチナサービスでは、ドーハ到着の搭乗口で、私の名前をパネルに掲げたスタッフが出迎えてくれ、アライバルラウンジまで案内してくれた。
このサービスのすごいところが、アライバルラウンジで座って寛いでいる間に、預け荷物をスタッフがピックアップしてくれ、ラウンジに設けられた専用イミグレーションで並ばずに入国審査を済ませられることだ。ラウンジ内にはソフトドリンクや軽食が用意されているほか、ビジネスエリアなどもあり、待っている間は自由に寛ぐことができる。
さらにピックアップしてくれた荷物は、手荷物受取所から到着ホールまで運搬サポートをしてくれる。到着ロビーを過ぎた先にも、アライバルラウンジが用意されており、こちらでタクシーの手配などもお願いできる。
行列に並ばないといけない入国審査や、いつ出てくるかわからない手荷物の受け取り待ちという入国に関する煩わしい手続きを、ストレスフリーに済ますことができるのは大変ありがたい。「アル・マハ・サービス」の利用は、カタール航空のプリビレッジクラブのプラチナおよびゴールド会員は無料で、それ以外の場合は有料となっている。
ドーハの4つ星or5つ星ホテルが1泊14米ドル~叶う、ストップオーバーパッケージ
ドーハでのストップオーバーでは、カタール航空のストップオーバーパッケージ「DISCOVER QATAR」を利用してみた。ドーハでの乗り継ぎ時間が12時間以上96時間以内の場合、最大4泊までのホテル宿泊、観光ツアーを格安で予約することができるサービスだ。
4つ星ホテルの予約は1泊14米ドル~、5つ星ホテルの予約は1泊24米ドル~可能となっている。今回私は12月の週末に、ドーハの中心地で有名観光地の「スーク・ワキーフ」が徒歩圏内の4つ星ホテルを「DISCOVER QATAR」で予約。通常価格の約5分の1程度と、大変リーズナブルに宿泊することができた。
今回の旅程では金曜日の21:40にドーハ空港に到着し、そのままホテルで一泊。翌日の土曜日は「スーク・ワキーフ」や砂漠のバラをモチーフにした建築美が目を引く「カタール国立博物館」、ステンドグラスが美しい「Mina Fish Market」や、ワールドカップが開催された「ハリファ国際スタジアム」と併設のショッピングモールなどを巡った。
日本への帰国は日曜深夜2:30ドーハ発、同日18:30成田着のQR806を利用。現在カタール航空が運航している東京行きのフライトは深夜便のため、一泊だけでも丸一日時間を使うことができ、十分にドーハ観光を楽しむことができた。
ドーハはワールドカップの開催に合わせて街やインフラが整備され、どこも清潔で大変治安が良い。空港から街の中心部も近く、見どころがコンパクトにまとまっていて観光しやすい。また、ドーハメトロやUberなどの移動手段も充実してる上、格安だ。そして現地の料理がとてもおいしい。そのため、乗り継ぎのついでに短期間ストップオーバーして、気ままな女性一人旅や、グループ旅を楽しむには最適な街だと感じた。
現在カタール航空は世界約170都市へ就航中。世界最高峰とも言えるビジネスクラスの体験も素晴らしいが、中東各地やヨーロッパ、アフリカを旅する際の経由地としてドーハでストップオーバーするにも最適なエアラインだと感じた。
取材協力:カタール航空
URL/www.qatarairways.com/ja-jp/homepage.html
Photos & Text:Riho Nakamori