2025年に羽ばたくのは? 注目したい日本ブランド6選 | Numero TOKYO
Fashion / Feature

2025年に羽ばたくのは? 注目したい日本ブランド6選

国内産地と共に取り組むこだわり、日本の自然を感じる色彩、誠実さと真面目な姿勢。日本という場所だからこそ生まれる新たなファッションがある。今回はファッションジャーナリストの大杉真心とスタイリストの早川すみれが、2025年に注目すべき国内ブランドをピックアップ。ブランドを見る二人視点の違いにも着目して。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年1・2月合併号掲載)

スタイリスト/早川すみれ

Ans Dotsloevner|アンス ドッツローヴナー

“KAWAII”カルチャーを独自の美学で新規開拓
2021年に百瀬華乃が立ち上げたブランド、アンス ドッツローヴナー。デザイナーのパーソナルな部分にフォーカスしながら、ブランドの美学を反映させたフェティッシュで遊び心があるアイテムを中心にワードローブを展開。「東京は現在オーバーサイズシルエットのムードが主流ですが、タイトなシルエットで新しく確立した世界観が魅力。デザイナー百瀬さん本人もとてもファッショナブル。ブランドの代表アイテムといえるバラのトップを筆頭に、スタイリングに一つ入れるだけで存在感が増すデザインに注目です」

fluss|フルス

時の流れで変わる気持ちを反映するものづくり
2022年春夏にスタートしたブランド、フルス。セントラル・セント・マーチンズ卒のデザイナー児玉耀はニットウェアを中心に新しい人間像を提案。「fluss」はドイツ語で「川」「緩やかな流れ」を意味する。「いま注目すべきはメンズのユニセックスブランド。その中でもフルスの服作りが面白い。メンズとして作っているかもしれないが、女性も着たくなるデザイン。印象に残る斬新なカットアウトや素材へのこだわりを見ていると、スタイリストとして着せたいと思わせる魅力たっぷりのブランドです」

MARGE|マージ


何げない日々に丁寧で優しい「着飾る」を提案
ウェディングドレスのデザイン、ディレクションを手がけてきた久保浩美と園山真以により、2021年に誕生した神戸のブランド、マージ。環境に配慮した素材選びや適切な供給量を踏まえて1点を丁寧に作り上げる。「日本では着飾れるものが少ないなか、大人の女性にも着やすいチュールやエンブロイダリーレースをドレスの華やかなディテールに洋服を落とし込むブランド。チュール部分もとてもきれいに作られていて、できる限り少量生産を心がけたものづくりで行っています。できるだけ消費されないものを作る姿勢にも惹かれました」

(はやかわ・すみれ) 武蔵野美術⼤学卒業後にスタイリスト長瀬哲朗のアシスタントを経験。 2011年にスタイリストとして独立。 広告、雑誌、音楽、シアターなど活躍は多岐にわたる。楽天ファッションウィークの25年春夏キーヴィジュアルのスタイリングも手がける。

ファッションジャーナリスト/大杉真心

TELMA|テルマ


日本各地の伝統技術と西洋で培った色使いに注目
2022年春夏シーズンにデザイナー中島輝道が立ち上げたブランド、テルマ。25年春夏コレクションでは織物=生地へのこだわりや、鶴の端正な佇まいを連想させる“鶴の恩返し”を裏テーマに初のショーを開催。「中島さんはドリス ヴァン ノッテンとイッセイミヤケで経験を積んだ実力派。ドリスで培った色彩感覚とイッセイでの素材開発力が生かされており、日本の産地とともに取り組んだこだわりの素材を使った上質なコレクションを提案しています」

HATRA|ハトラ

生成AIとファッションを掛け合わせる先駆者
2010年にデザイナー長見佳祐がハトラを設立。「リミナルウェア」というヴィジョンを掲げ、3Dクロスシミュレーションなどのデジタル技術を応用し、境界や曖昧な領域を肯定する服を提案する。24年パリ五輪ではアシックスとともに日本代表ユニフォームのデザインに携わった。「3DのCGや生成AIを使ったファッションデザインの先駆者で、ここ数年その技術を磨いてきました。今季はその一つの集大成のようなコレクションで、完成度の高さに驚きました。今後世界中から注目を集めると思います」

mukcyen|ムッシャン

中国と日本のルーツを融合したダークで退廃的な世界観
2023年夏にスタートしたブランド、ムッシャン。デザイナーの木村由佳は日本生まれ中国育ち。文化服装学院を卒業後、デザイナーズブランドの企画部に4年間在籍したのち、独立し自身のブランドを設立。「MASUの親会社であるSOHKIによる新しいウィメンズブランド。体にフィットするドレスやコルセットなどのボディコンシャスなデザインが魅力。日本と中国のルーツを融合したオリエンタルかつ退廃的な世界観が新鮮で、デザイナーの木村さんの着こなしも素敵です」

(おおすぎ・まみ) 文化学園大学とニューヨーク州立ファッション工科大学でファッションデザインを学ぶ。「WWDJAPAN」で編集記者としてコレクション取材を担当。2021年8月に独立。24年に10周年を迎えたTOKYO FASHION AWARDの限定記念冊子の制作にも携わる。

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