【K-POPゆりこ×NICE73対談】ファン誕生の瞬間に立ち会った! K-POPの歴史を変えたデビュー曲〈後編〉
Culture / Feature

【K-POPゆりこ×NICE73対談】ファン誕生の瞬間に立ち会った! K-POPの歴史を変えたデビュー曲〈後編〉

全3回でお届けするK-POPゆりこ×NICE73対談。後編では、K-POPの歴史を変えたデビュー曲、女性グループ、アイドル以外の韓国の音楽シーンについて。長くK-POPを見守ってきたNICE73とK-POPゆりこさんだからこそ語ることができる、珠玉のエピソードが飛び出します。

あれは衝撃だった! K-POP史に残るデビュー曲あれこれ

ライター松田(以下、松田)「歴代のK-POPで好きなデビュー曲をお伺いしたいのですが」

NICE73(以下、73)「少女時代の『また巡り逢えた世界』です。彼女たちがデビューした2007年に、私はまだ韓国にいたので、現地で体験したのですがとても衝撃を受けました。日本のモーニング娘。やAKB48という大人数グループの流れが韓国にも来たんだと思うのと同時に、それまでバラード全盛期だったK-POPの流れが、BIGBANGから少女時代で完全に変わったと感じました。

それから、忘れられないのは、テレビの歌番組初登場シーンです。オープニングでカッコ良く登場したのに、真っ暗で顔が見えない! それがまた衝撃的でした。

男性アイドルでいうと、やっぱり東方神起の『HUG』です。童顔のユチョンさんの髭剃りシーンに『これは見ていいものなのか?』とドギマギしたし、『あなたのベッドになりたい』という歌詞も衝撃的でした」


K-POPゆりこ(以下、ゆりこ)「『HUG』は歌詞からしてインパクトのある曲でしたよね。そして少女時代の『また巡り逢えた世界』は私も大好きで、2024年の今もたまに聞いています」

73「2013年に『M COUNTDOWN』の収録に偶然立ち会って、防弾少年団『We Are Bulletproof Pt.2』を観覧したんです。彼らはまだデビューしたての新人で、観客のほとんどは他のグループのファンでした。あの頃は、推し以外のステージには背を向けることが忠誠心の表れと話しているのを聞いたことがあるんですが、そんな面白い時代で、最初は誰も気にしていなかったんです。でも、彼らのパフォーマンスが始まると、みんながこれはすごいと気が付いて、曲の中盤にはみんながステージの方を向いていました。終盤にキャップを投げるパフォーマンスでは『キャー!』と歓声を上げていて」


ゆりこ「ARMY誕生の瞬間に立ち会ったんですね!」

73「私もなんだこの人たちは!と驚いて、家に帰ってすぐ『防弾少年団』について調べました。今でも、あの衝撃を覚えています。K-POPは、いくつかの変遷があったと思うんです。歌を聞かせる時代から、徐々にダンスが増えていって、みんなヘトヘトになりながら歌って踊った時代があって。そのあと、パフォーマンスに集中するためにリップシンク中心の時代があり、そこに登場したのが防弾少年団でした。彼らはちゃんと歌ってハイクオリティのパフォーマンスを披露していましたが、それは当時、珍しかったんですよね」

ゆりこ「歴史を変えましたよね。私はSHINeeの『Replay』もボーイズグループの歴史を変えたデビュー曲だと思っています。これは、普通、デビューして5曲目くらいの曲だと思うんですよ。それを、デビューに持ってくるのもすごいし、今でもオーディション番組の課題曲になったり、年末の授賞式では、EXOの『Growl』とともにカバーされる曲になったり、K-POPを代表する1曲です。ちなみに、NewJeansが『Attention』で登場したときも、SHINeeのデビューと同じ衝撃を感じました。今話題のミン・ヒジンさんが関わっているという共通性もありますが」

73「そう考えると、Red Velvetの『Happiness』もアフロビーツでデビューなの!? って衝撃的だったし、SM(元SM含む)のプロデュース力はすごいですよね」

ゆりこ「それから、2NE1の『FIRE』とそこから続く、BLACKPINKの『WHISTLE』『BOOMBAYAH』もインパクトがありました。2NE1の次はどんな子だろうと思ってた時に、BLACKPINKがバーンと来て、さすがYGだなと思いました。そしてその要素はBABYMONSTERにしっかり受け継がれている」

73TWICEの『Like OOH-AHH』も時代を変えましたよね。それ以前は、不動のメインボーカルとラップ、ダンス、と役割が分かれていましたが、TWICEからみんながボーカルを取るようになりました」

ゆりこ「確かにそうですね! オーディション番組出身では、Wanna Oneの『Energetic』も忘れられません。Kep1erの『WA DA DA』も話題になりましたし、ZEROBASEONEの勢いも凄まじいですが、オーディション番組出身で韓国の国民的な曲にまでなったのは、『Energetic』以降まだ現れていないような気がします。デビュー曲ではありませんが『Pick Me(ナヤナ)』もセットで挙げたいです」

アイドル以外も面白い! 韓国音楽シーンの現在

松田「最後に2024年注目の新人ガールグループと、アイドル以外の韓国の注目ミュージシャンについても教えてください」

ゆりこ「女性グループでいうと、なんといってもBABYMONSTERです(前編参照)が、KISS OF LIFEにも注目しています。彼女たちにはMAMAMOOにも通じる何かを感じるんです。もうガールクラッシュの大ブームは落ち着きましたが、その魂を受け継いだネオ・ガールクラッシュのようなグループがいくつかある中で、最注目はKISS OF LIFEかなと」

KISS OF LIFE
KISS OF LIFE

73「私もKISS OF LIFEを応援しています。それとYOUNG POSSE。DSPメディアといえば王道アイドルの事務所というイメージがあったけれど、こういうタイプのグループもプロデュースできるんだというのは意外でした」

ゆりこ「それから新人ではないけれど、NMIXXは『DASH』で、もう一段階上がったなと思いました。これからますます飛躍しそうで楽しみです」

73「それから、ついにメンバーが全員揃ったtripleSも目が離せません。Numero.jpのK-POP座談会のたびに、プロデューサーのチョン・ビョンギさんの話をしているような気がしますが、ARTMSを含め、“女性アイドル”という崇高な存在を通して、いい音楽を届けたいという意欲を感じます。だから、事務所のMODHAUSごと注目です」

松田「アイドル以外にも注目している韓国アーティストは?」

ゆりこ「ソロシンガーのBIBIさんです。チャン・ギハさんがプロデュースした栗羊羹の歌『Bam Yang Gang』が大ヒットしましたが、88risingでは一転して、ジャクソン・ワンさんとコラボしたセクシーなムードのMVが話題になりました。タレントとしても注目されていて、韓国では“影のIU”とも呼ばれています。さすがユン・ミレさんが発掘しただけあって、とても多才です」

73「チャン・ギハさんがプロデュースだから、4分の3拍子なんですね! 納得〜」

ゆりこ「そうなんです。ちょうど『Bam Yang Gang』がリリースされたとき、IUさんも『Shopper』でカムバックしていたんですが、音楽番組でIUさんを抑えて1位を獲得したということで、話題になりました。私は元々、クォン・ジナさんやHeizeさんの声が好きなんですね。その流れで、BIBIさんは注目しています。クォン・ジナさんはNetflixのチョ・ジョンソクさん主演の『魅惑の人』のOSTにも参加しています」

73「韓国のR&Bやヒップホップシーンでは、TabberさんがDEANさんをフィーチャーした曲も話題になりました。そこが一緒にやるんだ!という新鮮な驚きもありましたね。『SHOW ME THE MONEY』も2022年のシーズン11から放送されていないし、GIRIBOYさんがZion.TさんのSTANDARD FRIENDSに合流したくらいで、そんなに大きな変化はありません。NewJeansの登場前後から、R&Bやヒップホップシーンのアーティストがアイドルの楽曲制作に回ることが増えたんですよ。Balming TigerSan YawnさんもRMさんのソロアルバム『Right Place, Wrong Person』に参加していましたし、そういう制作側の仕事が増えているのかもしれません」

松田「最近、GroovyRoomのAT AREAに、どんどんアーティストが集結していているような気がするんですが」

73パク・ジェボムが自ら創立したAOMGとH1GHR MUSICを去って、焼酎のプロデュースを始めましたが、ご自身のソロ活動楽曲は相変わらずカッコ良くて酔いしれちゃいます」

ゆりこ「パク・ジェボムはお酒とアイドルをプロデュースすると宣言していましたが、アイドルのほうはいつ頃発表されるんでしょう。ご自身のアーティスト活動も活発化していますね。先ほど注目グループとしてお話ししたのKISS OF LIFENATTYさんとのコラボ曲『Taxi Blurr』も2人の得意とするR&B、しかも途中から2stepが入ってくるのが最高でした!あとバンドでいうと、Silica Gelですね。彼らはSE SO NEONのプロデュースもしてますし、6月下旬に来日を控えています。そしてARMY、特にRMファンにはお馴染みBalming Tigerは今後も名前を見る機会が増えそうです」

 

 

Text: Miho Matsuda Edit: Yukiko Shinto

Profile

K-POPゆりこ 音楽・エンタメライター。専門はK-POPと韓国カルチャー全般。雑誌編集者を経て渡韓、1年半のソウル生活を経験。現在は帰国し、女性誌やニュースメディア等で執筆、ラジオ出演、番組の構成なども行う。Twitter: @yurikpop0327 Threads: @kpop_yuriko
NICE73 韓国にて歌手として活動後、K-POPグループの日本語の訳詞、日本オリジナル楽曲の作詞、作曲、レコーディングボーカルディレクションなど、制作にも携わる。近年、韓国関連の各種イベントでMCや、テレビやラジオのナレーションを担当。Numero.jpでは「大人のためのK-POP入門」2021年「K-POP忘年会」、2022年「K-Pop座談会」、2023年「私たちの偏愛的K-POP 2023!」にも登場。Twitter: @NICE73555 Instagram: @nice73 YouTube: @NICE73deSHOW Ch.求韓日もお見逃しなく!

Magazine

DECEMBER 2024 N°182

2024.10.28 発売

Gift of Giving

ギフトの悦び

オンライン書店で購入する