ソムリエ店長がそっと教える「日本ワイン」のちょっとマニアックな基本
こんにちは! ワインブロガーのヒマワインです。
さて、最近ビストロなどのレストランで、ドリンクの選択肢として「日本ワイン」を選べるケースが増えていると思いませんか?
実は、ワイン界では日本ワインがここ数年ブーム。その個性的な味わいで、ファンをどんどん増やしているんです。
そこで、今後さらに人気になっていきそうな日本ワインの現在地、そしてオススメの銘柄を、都内最大規模のワインショップ、ワインマーケット・パーティ店長でソムリエの沼田英之さんに聞いてきました!
読めば日本ワインへの解像度が高まること請け合いの内容となっていますので、ぜひご覧ください。
▶︎「ちょっとマニアックな基本」白ワイン編はこちら
▶︎「ちょっとマニアックな基本」赤ワイン編はこちら
▶︎「ちょっとマニアックな基本」スパークリングワイン編はこちら
【目次】
1. 日本ワインの現在地点
2. 【北海道/国際品種】グランポレール 余市 ピノ・ノワール ブラン・ド・ノワール2020
3. 【大分/国際品種】安心院葡萄酒工房 安心院スパークリング
4. 【京都/国際品種】丹波ワイン『京都丹波 ソーヴィニヨン・ブラン2020』
5. 【長野/国際品種】ドメーヌ・コーセイ 片丘メルロー アンフィルタード ファイヴ・ローゼズ
6. 【新潟/国際品種】カーヴ・ドッチ『サブル・ブラン2022』
7. 【宮城/自然派】ファットリア・アル・フィオーレ アランチャ2022
8. 【山梨/固有品種】鳥居平今村 菱山ブラン2018
9. 【山梨/固有品種】ダイヤモンド酒造 シャンテY.A プティ・ディス2020
10. 【山形/固有品種】朝日町ワイン マイスターセレクション 遅摘みマスカット・ベーリーA ロゼ
日本ワインを楽しもう!
日本ワインの現在地点
ヒマワイン(以下、ヒマ)「今回は「日本ワイン」について教えてもらおうと思います。最近流行ってますよね、日本ワイン」
沼田店長(以下、店長)「流行ってますね。ここ数年、以前より日本ワインを買いにくるお客様が増えていると感じます」
ヒマ「日本ワインの特徴や魅力って、どんなところなんでしょう?」
店長「日本って水の国ですよね。なので、ワインにも水分量の多さを感じるんです。濃い・薄いではなくて」
ヒマ「あ、それわかります。体に染み込んでいくような感覚っていうんですかね」
店長「そうですね。そしてすごくフードフレンドリー。料理と合わせやすいものが多いので、そこも人気の秘密だと思います」
ヒマ「選び方のコツはありますか?」
店長「日本ワインと一言でいっても北海道、山形、長野、山梨、新潟といったように、地域によって特徴が異なるんです。まずはその特徴を知るのがいいのではないでしょうか」
ヒマ「地域ごとの特徴、ぜひ知りたいです!」
店長「たとえば『新潟』は日本酒のイメージだと思いますが、実は砂質の土壌でつくる『アルバリーニョ』という品種のワインがすごく高く評価されているんです」
ヒマ「アルバリーニョという品種は『海のワイン』とも呼ばれるとてもおいしい白ワインになる品種です」
店長「生産者が集って『新潟ワインコースト』として盛り上げているんです。アルバリーニョといえばスペイン、ポルトガルが有名ですが、新潟もいずれそこに連なる有名産地になる。それだけのポテンシャルがあると思います」
ヒマ「他の産地でいうと?」
店長「北海道は、ドメーヌ・タカヒコというカリスマ的な生産者さんがいます。タカヒコのある余市町を中心に、『ピノ・ノワール』という品種が大人気なんです」
ヒマ「ドメーヌ・タカヒコはなかなか買えない大人気ワインですが、北海道にしかない味わいで、とってもおいしいんですよね」
店長「山形は日本の固有品種である『マスカット・ベーリーA』がとてもおいしい。山梨はなんといってもこれまた固有品種の『甲州』が外せませんし、長野は『メルロー』や『カベルネ・ソーヴィニヨン』といった国際品種の栽培が盛んなんです」
ヒマ「そうやって考えると日本ワインも『日本ワイン』と一言でくくれないですね」
店長「そうなんですよ。産地ごとの特徴をつかんでもらえると、より日本ワインが楽しめると思います。そしてもうひとつ大きな魅力が『行ける』ってことです」
ヒマ「どこにですか?」
店長「蔵元です。たとえばなんでもいいので日本ワインをいくつか試してみる。それで、気に入ったワインが見つかったら、その蔵元を訪ねてみるわけです」
ヒマ「おっ、いいですね。見学NGのところもなかにはありますが、多くの造り手さんがショップを併設していたり、なかには畑や醸造施設を見学できるところもありますもんね」
店長「そうすれば思い入れも深まりますし、自分の出身地や一緒に飲む人の地元のワインを手土産に選ぶとか、日本ワインならではの楽しみ方をしてもらえるとうれしいですね」
ヒマ「では、いくつか地域別におすすめ銘柄を教えてください」
店長「もちろんです!」
【北海道/国際品種】グランポレール 余市 ピノ・ノワール ブラン・ド・ノワール2020
店長「まずは北海道余市町の、ピノ・ノワールを使ったスパークリングワイン『グランポレール 余市 ピノ・ノワール ブラン・ド・ノワール2020』です。2023年11月に発売されたばかりのワインですね」
ヒマ「ピノ・ノワールはシャンパンにも使われる世界中で大人気の国際品種。ラベルを見るとヴィンテージ(収穫年)は2020と書いてあるから、2年半くらい熟成していることになりますね……!」
店長「シャンパンと同じ製法で造るなど、こだわりを感じられます。今飲んでもおいしいのですが、数年寝かせることでさらにポテンシャルを発揮しそうなワインなんです」
ヒマ「シャンパンもフランスのなかでは北に位置する涼しい産地。そう考えると、北海道も今後スパークリングワインの一大産地になるかもしれませんね」
店長「期待を込めて選んでみました」
【大分/国際品種】安心院葡萄酒工房 安心院スパークリング
ヒマ「続いては九州・大分の安心院葡萄酒工房の『安心院スパークリング』ですね。ちなみに安心院は『あじむ』と読みます」
店長「このワインを初めてブラインド(品種と産地を隠した状態)で飲んだとき、フランスのワインだと思ったんです。それくらい本格的なワイン」
ヒマ「価格も3000円台。シャンパンの値段が高騰しているなか、この価格は相対的にコスパの良さを感じます」
店長「シャンパンの大手メゾンのスタンダードがもう5000円では買えないですからね。3000円台でこの味、しかも日本ワインとなると、自分で飲むにしても、手土産やプレゼントにするにしても、かなり使い勝手がいいと思います」
【京都/国際品種】丹波ワイン『京都丹波 ソーヴィニヨン・ブラン2020』
店長「続いては白ワインにいきましょうか。これは京都の丹波ワインがつくる『京都丹波 ソーヴィニヨン・ブラン2020』というワインです」
ヒマ「ニュージーランド産が有名な、すごくフレッシュでさわやかな品種ですね。京都で作られているとは意外です」
店長「エチケット(ラベル)にも京都感があって素晴らしいですよね。味わいもとても良くて、さっぱりしたなかに複雑さや、グレープフルーツの皮のようなニュアンスもあるんです。ちょっと飲んでみましょうか」
ヒマ「おっ、これはおいしい! おっしゃる通り黄色い柑橘の皮と果肉の感じがしつつ、岩清水みたいな体に染み渡るような柔らかさも感じます」
店長「丹波ワインさんは、『てぐみ』っていうスパークリングワインがスーパーでも売っていたりするので、見かけたら手に取ってもらいたいですね」
【長野/国際品種】ドメーヌ・コーセイ 片丘メルロー アンフィルタード ファイヴ・ローゼズ
ヒマ「続いても国際品種ですね。長野といえばという赤品種『メルロー』を使ったワイン」
店長「ドメーヌ・コーセイの『片丘メルロー・アンフィルタード ファイヴ・ローゼズ』ですね。長野は土壌がメルローの栽培に向いているとされています」
ヒマ「メルローはフランスのボルドーで有名な、世界的にも大人気の品種。長野産の特徴はどんなところですか?」
店長「一般にメルローは濃い系の品種なのですが、長野の場合少し青っぽいニュアンスが入るのが特徴です。このワインは、フランス製のオーク樽で熟成させることで世界基準と長野っぽさの中間くらいのニュアンスになっています」
ヒマ「樽熟成はブドウ自体の質がよくないとできないって聞くので、ブドウ自体高品質なんでしょうね」
店長「国際品種を使っているだけあって、世界基準を狙っているワインという印象です」
【新潟/国際品種】カーヴ・ドッチ『サブル・ブラン2022』
ヒマ「続いては先ほど話題に挙がった新潟のアルバリーニョを中心に使ったワインですね。カーヴ・ドッチの『サブル・ブラン2022』」
店長「アルバリーニョは砂質の土壌と相性がいいと言いましたが、ワイン名のサブルとはフランス語で『砂』という意味。新潟ワインコーストの魅力が詰まったワインです」
ヒマ「使用品種はアルバリーニョにリースリング、セミヨン、ヴィオニエのブレンド。どれも国際的に人気のある品種ばかりです」
店長「味わい的にも素晴らしい。砂質の土壌を思わせる非常に細かい後味。豊かなフルーツ感もあります。そして日本料理との相性が抜群にいいんです」
ヒマ「カーヴ・ドッチはワイナリーステイも楽しめるんですよね。一度泊まってみたいなーと思い続けています」
店長「それも魅力ですよね!」
【宮城/自然派】ファットリア・アル・フィオーレ アランチャ2022
店長「お次は自然派ワインを紹介させてください」
ヒマ「自然派ワイン(ヴァンナチュール/ナチュラルワイン)も日本ワインと並んでというか、大きなトレンドですよね」
店長「はい、日本にも自然派ワインの造り手は多くいますが、宮城県のファットリア・アル・フィオーレもそのひとつ。小学校を改築して醸造所にした蔵元で、この『アランチャ2022』は野生酵母で発酵、アンフォラと呼ばれる素焼きのツボで熟成させ、無濾過、無清澄、亜硫酸塩無添加で仕上げた自然派のオレンジワインです」
ヒマ「品種は……デラウェアを中心に、シャルドネをブレンドしているんですね」
店長「近年世界的に流行になりつつあるアンフォラの自然派ワイン、日本でも造る方が多くなってきましたね。 独自の方向性を向いた日本のナチュラルワインもワイン選びのアクセントのひとつとして面白いと思います」
ヒマ「ナチュラルワインと日本ワイン、両方に興味のある方は多いと思いますし、オレンジワインも人気ですからね。気になる方が多そうです」
【山梨/固有品種】鳥居平今村 菱山ブラン2018
店長「さて、ここまでスパークリングワイン、国際品種のワイン、自然派ワインと見てきましたが、ここからは日本の固有品種である甲州やマスカット・ベーリーAを使ったワインをご紹介しましょうか」
ヒマ「まずはなんといっても甲州ですね。日本最大の産地・山梨県を代表するブドウ品種。山梨を訪ねると、本当にそこかしこで栽培されていて感動します」
店長「紹介したいのは鳥居平今村という生産者の『菱山ブラン2018』。これは私の一押しの甲州なんです」
ヒマ「おっ、これは気になる」
店長「お店にフランスのお客様が来て、お土産に日本ワインを選んで欲しいと言われたのでこれを勧めたんです。その1本をホテルで飲まれて、翌日再度来店され、5、6本まとめ買いされていきました。それだけ、海外のお客様にも勧められる味わいなんです。ちょっと飲んでみましょうか」
ヒマ「えっ、これ本当に甲州ですか? 味わいが非常に濃くて、すごくまろやか。まるでフランス・ブルゴーニュの白ワインみたいです」
店長「ですよね。僕が2023年に飲んだ中でベストの甲州がこれでした」
ヒマ「価格も2800円とこなれてる。漢字のラベルは海外からのお客様にもウケが良さそうですね!」
【山形/固有品種】朝日町ワイン マイスターセレクション 遅摘みマスカット・ベーリーA ロゼ
店長「続いても僕の一押しワイン、山形県の朝日町ワインの『マイスターセレクション 遅摘みマスカット・ベーリーA ロゼ』です」
ヒマ「マスカット・ベーリーAは、日本国内で日本人が交配して生まれた品種。軽快な赤ワインになる場合が多いですよね」
店長「はい。これはちょっぴり甘さを感じさせるスタイルに仕上げられているんです。砂糖漬けにしたチェリーのような感じがあって、マスカット・ベーリーAらしいキャンディのような香りもします。これも飲んでみてください」
ヒマ「えっ、うまっ! この品種ならではのキャンディっぽい香りは苦手な人も一定数いますが、これはその香りを活かして見事に味わいの一部にしています。ほんのり甘いし、ワインに興味を持った人に勧める『最初の1本』にベストかもしれません」
店長「そしてこのワイン、砂糖を使った和食にめちゃくちゃ合うんですよ。ワイン自体に甘みがあるので、みりんを効かせた肉じゃがや、牛肉のしぐれ煮なんかと抜群の相性です」
ヒマ「想像するだけでおいしそう。価格も1725円と安くていいですね」
【山梨/固有品種】ダイヤモンド酒造 シャンテY.A プティ・ディス2020
ヒマ「最後の1本もマスカット・ベーリーAですね。山梨のダイヤモンド酒造といえば、マスカット・ベーリーAの名手という印象です」
店長「ひとつ前の朝日町ワインさんのベーリーAがベーリーAの特徴を活かしたワインとすれば、この『シャンテY.A プティ・ディス2020』は『これがベーリーA!?』と驚くような本格的なワインなんです」
ヒマ「タイプが異なるわけですね」
店長「契約栽培畑のなかでもっとも標高の高い畑の最優良ブドウを使った特別なワイン。香りが素晴らしくて、飲み終えて30分経ってもグラスからその香りが消えずに残っているほどなんです」
ヒマ「特徴的な香りを、上手く活かしているわけですね」
店長「飲む30分前に開けておくのがおすすめ。ワインが『開く』とぼくらは言いますが、空気に触れることでより華やかな香りが広がります」
ヒマ「ポテンシャルの高いワインほど、この『開かせる』一手間が重要。それだけの実力を秘めたワインってことですね!」
日本ワインを楽しもう!
ヒマ「産地はどこか、品種は国際品種か日本品種か、あるいは自然派か否か……一言で『日本ワイン』と言っても、さまざまな切り口があることがよくわかりました」
店長「日本のワイナリーはいま急激に数が増え、400を超える数ができています。それに伴い品質も高まっていますし、自分の一押しを探す楽しみも増えていると思います」
ヒマ「日本ワインを入り口に、ワインに興味を持つ方も今後増えてきそうですよね」
店長「旅行先で立ち寄ったワイナリーで飲んだワインを気に入って、同じものを買いに来てくださるお客様も実際にいますしね。ラベルが日本語で書かれてあることも多いですし、とっつきやすさも魅力です。これからワインを飲みたい方はもちろん、ワインは海外のものしか飲まないという方も、ぜひ一度日本ワインを試してもらいたいですね」
ヒマ「完全に同意です。今日はありがとうございました!」
Photos & Text: Hima_Wine
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