初めてのポーランド旅へ! ショパンの聖地巡り&グルメガイド | Numero TOKYO
Life / Travel

初めてのポーランド旅へ! ショパンの聖地巡り&グルメガイド

ポーランドってどんな国? 日本より少し狭い国土に驚くべき世界遺産が多く点在し、古き良きヨーロッパ文化が息づく実に美しい国です。フォークロアアートや建築、舞踊、食、大自然……と行くたびにその深い魅力に沼っていきそう。ポーランドは未体験という方へ、首都ワルシャワの見どころや、今地元で話題のミシュランレストラン、名物ケーキ、ファッションストリートなどもご紹介します!

ポーランドが生んだ天才音楽家、ショパンが愛したワルシャワを歩く

ポーランドの偉人といえば、地動説を説いたコペルニクス、新元素ラジウムを発見したキュリー夫人、国を民主化へと導いたワレサ議長、旅する法王と言われたヨハネ・パウロ2世など。しかし、まず浮かぶのは音楽家フレデリック・ショパン(1810ー1849)ではないでしょうか。


ワルシャワは、ショパンが幼年~青年時代を過ごした街。まずは、世界のショパンファンが必ず訪れるという「聖地」へ足を延ばしてみましょう。

1. ショパンが夏休みを過ごした「ジェラゾヴァ・ヴォラの生家」

「やあ、親愛なるヤン君、この手紙がどこから出されたか、わかるかい? カジュミエシュ宮殿の2番目のドアからだと思うでしょう? 違うよ。いやいや考えなくていいよ、無駄だから。正解はジェラゾヴァ・ヴォラ。じゃあ、いつ書いたものか分かる? 駅馬車から降りてすぐの館で書いているんだよ。ママは、僕とルドヴィカ(姉)がここに来ることはあまり賛成しなかったけど、やっぱりここにいるんだ(略)」

なんとお茶目な文面でしょう! これは15歳のショパンが親友ヤンに宛てた手紙です。ショパンは生後7か月でワルシャワに引っ越しますが、この手紙からわかるように、夏休みや祝日になると、頻繁に生家に里帰りをしていました。

そんなジェラゾヴァ・ヴォラ村を訪れてみました。生家の周りは庭園として整備されています。小川が流れる中、しだれ柳の垂れる小路や咲き乱れる花々を愛で、ショパンは創作のヒントを得ていたのだろうか、などと想像しながら散策を楽しめます。

ワルシャワの天才児として有名だったショパン。夏ここへ帰ってきたときは、ピアノを外に出して、松とシナノキの木陰で演奏をしていたそうです。

こちらは生家の室内。当時の建物は消失しましたが、家具や内装はショパンが生まれた当時のままに復元され、ショパンの出生証明書に洗礼証明書、家族の肖像画などが公開されています。好奇心あふれる少年時代がよみがえる癒しの場所、一色まことの漫画『ピアノの森』でも登場するジェラゾヴァ・ヴォラの生家は必見です。

ショパンの生家(ジェラゾヴァ・ヴォラ)
住所/Żelazowa Wola, 96-503 Sochaczew ※ワルシャワから西へ約60km

2. ショパンの几帳面さや趣味がわかる「フレデリック・ショパン博物館」

オストログスキ宮殿内にある美しすぎる博物館! 17世紀に建てられたバロック様式の宮殿は戦後再建されました。ここにはショパンが生前弾いていたオリジナルのピアノや、直筆の楽譜、愛用品、関わりのあった人の写真や書簡、当時のコンサートのポスターなどが展示されています。

例えば、引き出しを開くとショパン直筆の楽譜が出てきてその音楽が流れるなど、マルチメディアを駆使していて、ショパンをよく知らないという人でも楽しく見学できます。上の肖像画は左がショパン、右は両親。

意外だったのがショパンが授業中に描いたという先生の似顔絵。これがなかなかの腕前! 少年時代から成績優秀で、アルファベットの練習帳などもあり、実に美しい初期の譜面をみても幼少のころから几帳面であったことが伺えます。上写真はショパンが実際に弾いていたピアノ。ショパンが評価したピアノは飛ぶように売れたといいます。

ショパン愛用のタバコのキセル(デカイ!)や、手帳、ペン、懐中時計、小皿、ガラスのティーカップなど。変わったところでは、ショパンがお守りとして持ち歩いていたという神様(驚きの強面!)も。写真はティーカップとお守り。

興味深かったのが、ショパンが生きていた19世紀前半のワルシャワの街の風景画でした。第二次大戦で旧市街は戦禍にのまれ焼け野原となりますが、このような絵を参考にして旧市街(後述)をリアルに再興したのだろうか、と想像できました。

そして、驚いたのが30代後半に撮影されたというショパンの写真。それは50代かと思うほどの険しい風貌で、晩年に近くなるにつれ、病気や望郷の念で心も病んでいたのだろうかなどと想像できます。

館内は7,000点を超える資料や写真が保管されていて、展示の内容は劣化を防ぐために3か月に一度は入れ替えられます。ですので、何度訪れてもまだ知らないショパンの資料に出合えるというわけです。

フレデリック・ショパン博物館
住所/Pałac Gnińskich, Okólnik 1, 00-368 Warszawa

3. ショパンの本物の心臓が納められた「聖十字架教会」

驚きですが、なんとショパンの心臓がこの教会の柱の中に保存されています。正真正銘、ホンモノです! ショパンは1830年の11月2日、20歳の時にワルシャワから音楽の都ウィーンへ演奏旅行へと旅立ちますが、これが愛する祖国との永遠の別れとなりました。当時ポーランドを統治していたロシア軍に対し、ワルシャワの革命軍が蜂起します。旅の途中で革命軍がロシア軍に鎮圧されたことを知り衝撃を受けます。その時に作曲したのが有名な練習曲12番「革命」。それ以降、ショパンは「ポーランドの魂を武器ではなくピアノで世界に伝えたい」と志し、パリで活動を続けます。もともと病弱であったショパンは結核を悪化させ39歳の若さで生涯を閉じました。

遺言に従い、ショパンの心臓は、姉ルドヴィカが特注クリスタルの器に60度のコニャック酒を入れ保存し、パリからワルシャワへ持ち帰りました。スカートに下に隠して! 現在でもお酒の量は少しも減らず心臓は当時のままとのこと。上写真は聖十字架教会内のショパンの心臓が納められている柱です。病気のとき、ポーランド語を話すと少し元気を取り戻した、というショパン。教会へ足を踏み入れると、約20年もの郷愁の念から解き放たれた彼の安堵が伝わってくるようです。

聖十字架教会(Bazylika Świętego Krzyża)
住所/Krakowskie Przedmieście 3, 00-047 Warszawa

4. ショパンがよく散歩をした「ワジェンキ王宮公園」

こちらは、ショパンもよく散歩をしたといわれる街の中心部にあるワジェンキ公園。

毎年5月中旬から9月まで、ショパン像のステージで野外コンサート(無料)が開かれます。花々が咲き乱れる公園で、夏風に吹かれながらショパンの調べを聴く……とくに好きな曲が演奏されると、この上ない幸福感に包まれます。

ワジェンキ公園(Łazienki Królewskie)
住所/Łazienki Królewskie, Al. Ujazdowskie, 00-001 Warszawa

ワルシャワに到着した夜は、プロのピアニストによるショパンミニコンサートへ。「ショパン・ポイント」で毎日開催されています。上記のほかにも、少年のショパンが日曜日のミサにピアノを弾いていた「ヴィトジキ教会」、ショパン家族がワルシャワで暮らしたワルシャワ大学内の建物、ショパンが贔屓にしていたレストラン「ホノラトカ」など、ゆかりの地がたくさんあります。

戦禍で壊滅し再建された旧市街がユネスコ世界遺産になった理由

もっとも重要なワルシャワの必見スポットは、世界遺産に登録されている「ワルシャワ歴史地区」。第二次大戦でドイツ軍に破壊されたワルシャワ旧市街は、過去の絵画や写真を基にして、建物のひび割れひとつに至るまで、完璧に復元されています。

再建された街がなぜ世界遺産に? という疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。保存価値を重視するユネスコ世界遺産にあって、それは異例中の異例。旧市街復興プロジェクトは40年以上にわたって市民運動として行われました。ワルシャワの人々の並々ならぬ復興への祈り、記憶、努力、行いが評価され、世界で初めて再建された町が1980年に世界遺産として認められました。

長い歴史の中で三度も国土を失った経験をもつポーランド。そのせいか、自国の歴史や文化に誇りを持ち、ショパンと同様、国民の愛国心は驚くほど深いものがあります。そんな尊い想いで再建された歴史地区をゆっくりと散策してみませんか。

新旧の魅力が入り混じる、ポーランド料理の楽しみ

筆者は5度、ポーランドを旅していますが日本食が恋しいと思ったことは一度もありません。それはなぜか? ポーランド料理は、不思議と日本人の口に合うものが多いからです。伝統料理でぜひトライしてほしいのは、酸っぱくてクセになる「ジュレックスープ(ライ麦発酵スープ)」、ポーランド版の水餃子「ピエロギ」、ポテトパンケーキの「プラツキ」など。乳製品も新鮮そのもの。ほとんどは塩、コショウ、砂糖といったシンプルな味付けで、余計なものが一切入らない味。素材そのもののおいしさと、ミネラル分やうま味を含む地元の岩塩、そして発酵という調理法のお陰でしょうか。ちなみに、ポーランド航空帰国便の機内食は、ピエロギです! 写真は歴史あるレストラン「ウ・ヴィェニャヴィ(U Wieniawy)」の前菜とポーランド産の極上ウォッカ。

ワルシャワでは、近年モダンポーランド料理も人気となっていて、今、ミュシュランレストランとしてグルマンたちに注目を集めているのが、「エポカ(Epoka)」や「ハブ・プラガ(Hub Praga)」(コース料理は要3~4時間)、「ロズブラット20(Rozbrat 20)」といったお店。写真はエポカのシェフ。

エポカは、古いポーランド料理のレシピを新しくアレンジし、9割は地元の食材を使い目にも麗しいお料理がワインとのペアリングで登場します。

ハブはもっとカジュアルで、若いカップルが目立っていました。前菜も美しいだけではなく本当に美味でした。

こちらは昨年12月後半に訪れたロズブラット20のメイン料理。彩りもよく野菜をたっぷり使ってヘルシー。こちらもなかなかの味でした。

※ワルシャワのミシュランレストランはこちらを参考に。

最後に、地元のファッションストリートを歩いてご当地ケーキを!

ワルシャワ観光をひととおり終えたら、ワルシャワ南部モコトフ地区のモコトフスカ通り(Mokotowska)へ。この通りの「ククーカ」というケーキ店でワルシャワのご当地ケーキ「ヴゼトカ(Wuzetka)」をいただきましょう! 

ヴゼトカはチョコレートスポンジケーキにホイップクリームを詰め、チョコレートアイシングでおおったペストリー。

ククーカ(Kukułka)
住所/Mokotowska 52, 00-543 Warszawa

ヴゼトカをいただいた後は、ファッションストリートのモコトフスカ通りを歩いてみませんか。今、ワルシャワで話題のお店が集まっています。こちらはユニセックスのお店「クピシュ(Qπш Robert Kupisz)」。

こちらは、かわいい色合いに惹かれて入ったお店「ビズー(BIZUU)」。美しいポーランド人女性スタッフをたくさん見かけました!

他のヨーロッパの国々に比べて、まだ物価が手頃なポーランド。たとえば、空港で買うSIMカードは500円もしません。来年2025年は5年に一度のショパン国際コンクールの年でもあります。今年中に一度旅してチェックし、余裕をもってコンクール鑑賞の再訪に備えてみてはいかがでしょう?

取材協力/ポーランド政府観光局
www.poland.travel/ja

Photos & Text: Sachiko Suzuki(Raki Company)

Magazine

JANUARY / FEBRUARY 2025 N°183

2024.11.28 発売

Future Vision

25年未来予報

オンライン書店で購入する