アートという名の “果てしなき色” vol.1 松山智一
私たちの見る色は、一人ひとり違う。色は光の知覚にして、個性や美しさの表れでもあるから。その極致がアートだ。内なる色彩に導かれ、色合いを深め、まだ見ぬ色を追い続ける——それはアーティストの生きる道そのもの。六人六様の“見果てぬ色”を眺めてみよう。Vol.1は松山智一。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2024年1・2月合併号掲載)
Tomokazu Matsuyama|松山智一
弘前れんが倉庫美術館「松山智一展:雪月花のとき」出展作より、古今東西のモチーフや対比的な色彩で織り成す絵画作品。(すべて©︎ Tomokazu Matsuyama)
2024年、どんな色にしたい?
「対立する価値観をグラデーションでつなぐ」
目がくらみそうになるほどまばゆい色彩と繊細な描線で、洋の東西や過去・現在・未来など対極にあるものを、重層的に混交させるのが松山智一の作品世界だ。なぜそんなことが可能なのか。根っこにある考えをこう開陳してくれた。「私たちは人種や国籍、言語に定義されるアイデンティティではなく、それぞれがそれぞれのカラーを持つ。この感覚こそ、ポストパンデミックの時代において、向かう先を見失った私たちのアイデンティティが正しく社会に適応するモーフィングの仕方を示し、希望ある未来への道筋になると信じています」。その理念は現在開催中の、国内の美術館では初となる個展「松山智一展:雪月花のとき」でも、日本の伝統技法や西洋の様式を融合した作品の数々に体現されている。
Text : Hiroyasu Yamauchi Edit : Keita Fukasawa
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