シャンパーニュ中級者になるために知っておきたい5つのこと | Numero TOKYO
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シャンパーニュ中級者になるために知っておきたい5つのこと

こんにちは! ワインブロガーのヒマワインです。突然ですがみなさんはシャンパーニュが好きですか? 私は大好きです。こだわりのRMによるデゴルジュマン後数年を経たちょい熟ブラン・ド・ブランなんか最高……と、こんなことを言われても多くの方は「なにを言ってるんだこの人」となるのではないでしょうか。

実はシャンパーニュ(以下、シャンパン)にはその味わいを決定付けるさまざまな要因があり、それを知ることでもっともっと楽しめるようになるのです。そこで今回は、みなさんに“シャンパン中級者”になっていただくべく、ワインマーケット・パーティ沼田英之店長に話をうかがってきました! さっそくいってみましょう。

【目次】
知っておきたいこと①:NMか、RMか
知っておきたいこと②:ドザージュ量
知っておきたいこと③:熟成期間
知っておきたいこと④:品種
知っておきたいこと⑤:グラス
おすすめシャンパン1/フィリポナ「ロワイヤル・レゼルヴ・ノン・ドゼNV」
おすすめシャンパン2/ラエルト・フレール「ブリュット・ナチュール・ブラン・ド・ブラン」
おすすめシャンパン3/J・M・セレック ソレサン・エクストラブリュットNV 8300
おすすめシャンパン4/ドメーヌ・シャルリエ・エ・フィス シャンパーニュ・カルト・ノワールNV
おすすめシャンパン5/テタンジェ ノクターン・スリーヴァーNV
おすすめシャンパン6/テタンジェ ドゥミ・セックNV
おすすめシャンパン7/フルーリー・ジル ロゼ・ディスパハン ドゥー

知っておきたいこと①:NMか、RMか

ヒマワイン(以下、ヒマ)「さて、今日は読者のみなさんに“シャンパン中級者”になっていただきたいと思います」

沼田店長(以下、店長)「シャンパンはフランスのシャンパーニュ地方で造られるスパークリングワインですが、その基本を踏まえた上で、中級者を目指す上では知っておきたいことがいくつかありますね」

ヒマ「たとえばなんでしょうか?」

店長「まずはネゴシアン・マニピュラン(NM)とレコルタン・マニピュラン(RM)の違いから説明しましょうか。」

ヒマ「お願いします」

店長「自社での畑のブドウを使いつつ、購入したブドウや果汁、あるいはワインからシャンパンを造るのがNM。栽培から醸造までを一貫して行うのがRM。ヴーヴ・クリコとかモエ・エ・シャンドンとか、一般に知られている『大手メゾン』と呼ばれる生産者のほとんどがNMです。イメージ的には新宿に本拠地があって、江戸川区から葛飾区、八王子のブドウも使ってシャンパンを造るのがNM。それに対して、恵比寿を本拠地に目黒から渋谷までのブドウでワインを造るのがRM」

ヒマ「お、わかりやすい。NMは東京中のブドウを使い、RMはご近所のブドウでワインを仕込む感じですね」

店長「RMは基本的には家族経営で、家族で管理できる範囲の畑しか持っていません。だからこそ、その土地の気候や土壌が反映されやすく、かつ個性が突出したものを造る生産者も多いんです。私も一時期どハマりして、RMしか飲まない時期がありました」

ヒマ「それに対してNMの良さはなんでしょう?」

店長「品質の安定感です。多くの農家と契約しているから、江戸川区のブドウの出来が今年は悪かったから、八王子のブドウを多めにしよう、みたいなことができる。シャンパーニュでは品質を維持するためにその年の収穫の20%をリザーヴワイン(翌年以降の原酒にブレンドするためのワイン)にする必要がありますが、そのリザーヴワインも多くキープできます。RMの個性を知ってからNMを飲むと、その安定感に感動したりできるんです」

ヒマ「安定感のNM、個性のRMって感じですね」

知っておきたいこと②:ドザージュ量

店長「次はドザージュ量に注目しましょう。シャンパーニュは出荷直前に甘いリキュールを添加するのですが、その量がポイントなんです」

ヒマ「店頭で売られているものは、多くが『ブリュット(BRUT)』ですよね。いわゆる辛口」

店長「これ、実は糖分の含有量を示しているんです。ブリュットは12グラム未満。6グラム未満が『エクストラ・ブリュット』、3グラム未満が『ブリュット・ナチュール』。ブリュット・ナチュールのなかには、糖分を一切添加しない『ノンドゼ』と呼ばれるものも存在します。ノン・ドザージュ(フランス語で糖分添加なし)だからノンドゼ」

ヒマ「最近ナチュラルワインがブームなこともあってちょっと流行ってるんですよね、ノンドゼ。極力「なにも足さない」のがナチュラルの基本、ということで」

店長「個人的に注目してもらいたいのがちょっと甘めのカテゴリ。ブリュットよりも甘いスタイルとして、糖分含有量(残糖量)32グラム未満の「セック」、50グラム未満の「ドゥミ・セック」、50グラム以上の「ドゥー」があります」

ヒマ「意外と飲む機会が少ないんですよね、甘口シャンパーニュは」

店長「実際、あまり売れませんからね……(涙)。私は以前ホテルで勤務していて、たとえば結婚式でイチゴを入れたグラスにシャンパーニュを注いでサービスしたりしていました。そんなときは辛口だと合わないんです。少し甘口のものと合わせたほうが圧倒的においしい。食事の終わり頃に提供して、食後酒的に楽しむのもアリ」

ヒマ「夏に果物と合わせて、ちょっとしたカクテルとして楽しむなんて最高っすね〜。ビーチで海を見ながらとか、いつものBBQの格上げ要員に、とか」

店長「糖分って、シャンパーニュの“お化粧”だと思うんです。ノンドゼはスッピンの状態。ブドウの状態にものすごく自信がないと難しい。ブリュットが基本的なメイクだとしたら」

ヒマ「ばっちりメイクのセック、フルメイクのドゥミ・セックもたまには味わってみようってことですね」

知っておきたいこと③:熟成期間

店長「お次は『熟成期間』です。具体的には、デゴルジュマン後にどれだけ時間が経過しているか」

ヒマ「デゴルジュマンとは『澱(おり)抜き』のことですね」

店長「シャンパーニュはまず原酒である白ワインを造ってボトルに詰め、そこに酵母と糖分を添加します。すると瓶内二次発酵といって、ボトル内で酵母が糖を代謝する発酵が生じます。それによりアルコールと二酸化炭素が生成され、そのうちの二酸化炭素がシャンパンの泡になります。その後、酵母はボトルの中で澱となりますが、見た目に良くないそれをボトル外に出すのがデゴルジュマン」

ヒマ「勉強になります」

店長「このデゴルジュマンからがシャンパンにおける熟成のスタートだと思うんです。詳しいことは省きますが、その後どんどんウェハースやバタークッキーのような香ばしい風味が出てくる。それが出てくるまでにはデゴルジュマンから1年半くらいかかるんです」

ヒマ「そうそう、ちょっと熟成したシャンパンは本当においしいんですよね。ただ、どうすればデゴルジュマン後の経過時間を知ることができるんですか?」

店長「まずは裏ラベルを見るクセをつけてもらいたいですね。そこに書いてあるケースがままありますから。たとえば、「フィリポナ」という生産者は、すべてのボトルの裏ラベルにデゴルジュマンの時期や先ほど挙げたドザージュ量、使用品種などが書かれています」

ヒマ「あっ、ほんとだ。欲しい情報全部載ってますね、ここに」

店長「あと、シャンパーニュはわりと頻繁にラベルが変わったりもするので、旧ラベルを探したりとか、地方の酒屋さんに眠ってるのを発掘したりとか……」

ヒマ「急にマニアックになってきましたね(笑)」

知っておきたいこと④:品種

店長「マニアックでない話もしましょう。品種ですね。シャンパーニュで主に使われる品種は3つで、『シャルドネ』『ピノ・ノワール』『ムニエ』です。シャルドネは白ブドウで、レモンやグレープフルーツといった柑橘系の印象。ピノ・ノワールはイチゴやサクランボといった赤い果実。最後のムニエは、僕のなかで柿や枇杷といったオレンジ色の果実のイメージです」

ヒマ「うん、たしかにそうですね。私は酸味大好き人間なので、シャルドネ100%で造った『ブラン・ド・ブラン』が好きです」

店長「ただ、やっぱりシャンパンの場合の果実感はピノ・ノワールやムニエのほうが感じやすい。なので、最初のうちはピノ・ノワールやムニエ主体のものを選ぶのもいいと思います。品種は調べれば大体わかりますしね」

ヒマ「主要3品種からお気に入りが見つかったら、品種軸で選ぶのも良さそうですね!」

知っておきたいこと⑤:グラス

店長「最後はグラスです」

ヒマ「ほう」

店長「シャンパンというと、細長いフルートグラスをイメージする方は多いと思います。ホテルの最上階のレストランで『君の瞳に乾杯』みたいな(笑)」

ヒマ「夜景かなんか見ながらね」

店長「ただ、フルートは細長い分だけ口径が小さく、香りがとりにくいんですよ。君の瞳に乾杯するには向いているけど、香りをとるのには向いてない」

ヒマ「君の瞳も捨てがたいけど、ここは香りをとりましょうか(笑)」

店長「となると、使ってもらいたいのは白ワイン用のグラスなんです。普通に白ワインを注ぐ量入れて、香りを楽しみながら飲んでもらいたい。もちろん泡は早く抜けてしまいますが、泡が抜けてもシャンパンはおいしいですから」

ヒマ「ね、泡はシャンパンの魅力のひとつだけど、なければないでそれもまた良し。翌日に残って泡の弱まったシャンパンもおいしいですもんね」

店長「はい。少しスワリング(グラスを回してワインを酸素に触れさせること)して泡を落ち着かせてあげながら飲むと、シャンパンの香りがより楽しめます……というわけで、『NMかRMか』『ドザージュ量』『熟成期間』『品種』『グラス』の5つにこだわると、みなさん立派なシャンパン中級者になれると思いますよ!」

ヒマ「知れば知るほど楽しいのがシャンパンですからね。では、シメに沼田店長のオススメ銘柄いきましょうか」

沼田店長のおすすめシャンパン1
フィリポナ「ロワイヤル・レゼルヴ・ノン・ドゼNV」

店長「今回は『ドザージュ量』ごとに選んでみました。まずはノンドゼから」

ヒマ「裏ラベルの情報が充実している沼田さんの推し生産者・フィリポナの『ロワイヤル・レゼルヴ・ノン・ドゼNV』(税抜9,000円)ですね。ちなみにNVは『ノンヴィンテージ』の略称で、複数の収穫年のブドウから造ったワインを混ぜるシャンパーニュでは一般的な表記です」

店長「大手メゾンでノンドゼを造っているところがそもそも少ししかないんです。フィリポナのこれはノンドゼながらピノ・ノワール主体で飲みやすさもある」

ヒマ「『初めてのノンドゼ』にも良さそうですね!」

沼田店長のおすすめシャンパン2
ラエルト・フレール「ブリュット・ナチュール・ブラン・ド・ブラン」

店長「続いてブリュット・ナチュールですね。ラエルト・フレールの「ブリュット・ナチュール・ブラン・ド・ブラン」(税抜8,000円)です」

ヒマ「白ブドウ(シャルドネ)だけで造るブラン・ド・ブランですね」

店長「はい。先ほどお伝えしたように、レモンやグレープフルーツ、ライムのような酸がある、キレのある味わいが楽しめます」

ヒマ「暑い季節なんかに良さそうですね」

店長「黄色い柑橘のニュアンスがあるので、塩と好相性。鯛のお刺身に塩を乗せたものと一緒に楽しんだりすると、最高ですよ」

沼田店長のおすすめシャンパン3
J・M・セレック ソレサン・エクストラブリュットNV 8300

店長「お次はジャン・マルク・セレックという若手の生産者の『ソレサン・エクストラブリュットNV』(税抜8,300円)。僕が次にブレイクする生産者は彼だと思っている、有望株なんです」

ヒマ「シャンパーニュのライジングスターだと。このワインはどのようなワインですか?」

店長「シャルドネを中心に、ムニエを40%、ピノ・ノワールを10%加え、半分はリザーヴワインを使用。ドザージュは2グラムです」

ヒマ「この記事を読んでくださった方なら、意味を読み取っていただけると思います(笑)」

店長「味わいは柑橘系のニュアンスがありながら、非常にバランスが良いんです。値段も今後上がってしまうと思うので、今が“飲みごろ”ですね」

沼田店長のおすすめシャンパン4
ドメーヌ・シャルリエ・エ・フィス シャンパーニュ・カルト・ノワールNV

ヒマ「次は王道の『ブリュット』ですね。ドメーヌ・シャルリエ・エ・フィス シャンパーニュ・カルト・ノワールNV(税抜5,600円)ですか」

店長「はい、これも裏ラベルに情報が充実していて、2017年の4月に瓶詰め、2020年8月にデゴルジュマンしていることがわかります」

ヒマ「取材時点(2023年6月)でデゴルジュマンから1年10か月が経過して、まさに飲みごろを迎えてますね!」

店長「その通り。軽いクッキーやナッツの香りも出てきていて、一回目の飲み頃になっているかと思います」

ヒマ「いいですね〜」

店長「僕はムニエはお寿司と合わせるケースが多いんです。とくにガリと合う。ガリとムニエは、高校時代から付き合ってそのまま結婚したカップルくらい合います」

ヒマ「それは相性バッチリですね……(笑)」

店長「シャンパン好きにも、これからシャンパンを好きになりたい人にもオススメです!」

沼田店長のおすすめシャンパン5
テタンジェ ノクターン・スリーヴァーNV

店長「続いては少し甘さを感じる『セック』。ドザージュ17.5グラムのテタンジェ『ノクターン・スリーヴァーNV』(税抜10,000円)を選んでみました」

ヒマ「ちょうどいい甘さですね。甘いと感じるかどうかのギリギリのラインでしょうか」

店長「まさにそうで、酸味がしっかりとあるので甘いとは感じないかもしれません。テタンジェは定番のシャンパーニュですが、ブリュットとこのセック、次に紹介するドゥミ・セックで品種の構成が変わらないんですよ。シャルドネが40で、ムニエとピノ・ノワールが30ずつ」

ヒマ「ワイン好きとしては、つい飲み比べたくなっちゃいますね」

店長「うん、すごく面白いと思いますよ。ドザージュの量で味わいがどう変化するか、よくわかると思います」

沼田店長のおすすめシャンパン6
テタンジェ ドゥミ・セック NV

ヒマ「というわけでお次は同じテタンジェの『ドゥミ・セック』(税抜10,000円)ですね」
店長「こちらは残糖量35g/Lというワイン。さすがに35g入っていると、少し甘さを感じられると思います。みなさんには、お店にドゥミセックがあったら一度手に取っていただきたいんです」

ヒマ「それはなぜ……?」

店長「やっぱり、売れ残ってしまっていて、お店のなかで熟成が進んでる可能性が高いからです(笑)。糖分が高い分、香りがどんどん良くなっていきますから」

ヒマ「『Demi-Sec』という表記を見たら要チェックですね!」

沼田店長のおすすめシャンパン7
フルーリー・ジル ロゼ・ディスパハン ドゥー

店長「最後は『ドゥー』です。フルーリー・ジルの『ロゼ・ディスパハン ドゥー』(税抜4,900円)」

ヒマ「恥ずかしながら、ドゥーは飲んだことないんですよ、私も」

店長「なかなか飲む機会がないですよね。でも、これがドライフルーツなんかと合わせると抜群にうまい。ドライフルーツの甘さにまったく負けませんからね」

ヒマ「パーティの終わりにデザート食べながら甘いシャンパーニュとか、最高の贅沢になりそうっすね」

店長「僕が『シャンパン縛り』のワイン会を催すとしたら、最後にもってくるのがこのドゥーでしょうね」。

ヒマ「思ったよりも価格が高くないし、これはいいかも!」

シャンパーニュ中級者になろう!

店長「というわけで、以上7本をオススメさせてもらいました」

ヒマ「『甘さ違い』でこんなにあるんだってこと自体を楽しんでもらえるといいですよね。それぞれに良さがあると思うので」

店長「はい。RMとNM、ドザージュ量、品種……すべて「どれが良い」というものではなく、それだけ違う個性のものがあるということなんです。

ヒマ「その個性の違いがシャンパーニュの面白さですよね。さらにそれが熟成することでさらに違う表情を覗かせてくれる……」

店長「その通り。読者のみなさんも、ぜひシャンパーニュの魅力をさらに深く楽しんでみてはいかがでしょうか?」

ワインマーケット・パーティ
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
営業時間/11:00〜19:30
Tel/03-5424-2580
winemart.jp


Photos & Text: Hima_Wine

Profile

沼田英之Hideyuki Numata ソムリエ、1978年生まれ。ホテルやレストラン勤務後、イタリア・トスカーナに留学。帰国後、レストランにソムリエとして勤務し、その後フランスワイン専門店ラ・ヴィネに入社。現在は姉妹店である都内屈指の大型店、ワインマーケット・パーティの店長を務める。
ヒマワインHima_wine ワイン大好きワインブロガー。ブログ「ヒマだしワインのむ。」運営
https://himawine.hatenablog.com/
YouTube「Nagiさんと、ワインについてかんがえる。Channel」共同運営
https://www.youtube.com/@nagi-himawine
Twitter:@hima_wine

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