文豪も愛した城崎温泉でレトロな7つの外湯や新名所を巡る | Numero TOKYO
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文豪も愛した城崎温泉でレトロな7つの外湯や新名所を巡る

志賀直哉ゆかりの温泉旅館「三木屋」のロビーフロア
志賀直哉ゆかりの温泉旅館「三木屋」のロビーフロア

志賀直哉の『城の崎にて』で知られているように、多くの文豪に愛されてきた城崎温泉。兵庫県の北部、日本海に面した関西有数の温泉街として、1300年以上の歴史を誇る。

城崎温泉はその立地から、関東近郊に住む人にとってはなかなか足を向けづらい土地にも思われるかもしれない。しかし、羽田空港から大阪伊丹空港経由でコウノトリ但馬空港へ飛行機で飛び、そこからバスや車に乗れば最短2時間半程度でアクセスできる。

浴衣姿でレトロな温泉街をそぞろ歩く、7つの外湯巡り

城崎温泉が他の温泉街と大きく異なるのが、外湯文化だ。街全体で訪れる人たちに温泉を楽しんでもらえるよう、旅館内の内湯は小規模にとどめ、7つの外湯を巡ってもらうよう設計されている。「駅が玄関、通りが廊下、旅館が客室、外湯が大浴場、商店が売店。城崎に住む者は、皆同じ旅館の従業員である」という考え方なのだ。そのため、訪れた人々は各旅館で貸し出される浴衣や下駄を身につけ、外湯巡りパスを持ち、温泉街をそぞろ歩くのが城崎温泉の楽しみ方となっている。

城崎温泉発祥の地と言われる「まんだら湯」
城崎温泉発祥の地と言われる「まんだら湯」

外湯は、歌舞伎座を思わせる建物が有名な「一の湯」や、自然に囲まれた開放的な露天風呂が自慢の「御所の湯」など、個性もさまざま。温泉街には川に沿って枝垂れ柳が立ち並び、その両脇に昔ながらの木造3階建ての温泉旅館が軒を連ね、浴衣姿の人々、カランコロンと鳴り響く下駄の音もあいまり、ノスタルジックな雰囲気が漂う。

老舗の魚屋「おけしょう鮮魚」が営む「海中苑」の海鮮丼
老舗の魚屋「おけしょう鮮魚」が営む「海中苑」の海鮮丼

また、温泉街には飲食店やお土産屋、いまでは珍しい射的などが楽しめる遊技場も多く立ち並び、夜遅くまで営業しているのも特徴だ。温泉を基軸に、食やエンターテイメントなど街全体をテーマパークのように楽しめるのも城崎温泉の魅力で、近年はグループで訪れる若者や、関西以外から訪れる人も増えている。

温泉街を一望するなら、ロープウェイに乗って展望台へ。山頂からは城崎温泉の街並みをはじめ、日本海まで見渡すことができ「ミシュラングリーンガイド」で一つ星を獲得した絶景が広がる。

展望台からの景色
展望台からの景色

山頂駅には展望台のほか、二面ガラス張りの店内やテラス席から眼下に広がる城崎温泉の街並みを眺められる「みはらしテラスカフェ」もある。

山頂駅にある「みはらしテラスカフェ」のテラス席
山頂駅にある「みはらしテラスカフェ」のテラス席

天空のカフェで、自家焙煎のスペシャルティコーヒーや軽食をゆったりと味わうのもいいだろう。

みはらしテラスカフェ
住所/兵庫県豊岡市城崎町湯島

TEL/0796-32-3365
営業時間/10:00~16:00
定休日/第2・第4木
URL/www.kinosakicoffee.com/

柳並木沿いに佇む、創業350年の老舗旅館「山本屋」

川側の客室の窓の外には、木造3階建ての老舗旅館と柳並木、大渓川など城崎温泉らしい景色が広がる
川側の客室の窓の外には、木造3階建ての老舗旅館と柳並木、大渓川など城崎温泉らしい景色が広がる

今回の旅では、温泉街の中心地で「一の湯」に隣接するなど外湯巡りにも便利な「山本屋」にステイ。こちらは350年の歴史を誇る老舗旅館で、城崎温泉のシンボルである柳並木沿いに立地し、かつ木造建築を守り抜く数少ない旅館だ。

城崎の古き良き街並みを眺めながら味わえる「山本屋」の朝食
城崎の古き良き街並みを眺めながら味わえる「山本屋」の朝食

海が近い城崎温泉は松葉カニをはじめ、新鮮な魚介類も豊富なほか、但馬牛の産地でもある。旅館でもプランに応じて、地元産の厳選食材を使った料理が味わえる。

また、ホテルエントランスに地ビールカウンターが設置されていることからもわかる通り、「山本屋」直営工房で醸造した城崎の地ビールが味わえるのもこの宿の魅力だ。宿泊客であれば食事の時だけでなく、1階のバーコーナーや客室でも「山本屋」特製の地ビールが味わえる。近くに地ビールレストラン「グビガブ」もあるので、ビール好きな方はそちらもどうぞ。

山本屋
住所/兵庫県豊岡市城崎町湯島643

TEL/0796-32-2114

URL/www.kinosaki.com/

「銀座久兵衛」出身者が腕を振るう「をり鶴」で、城崎が誇る海の幸を堪能

「特上にぎり」6,600円にはお通し、茶碗蒸し、赤出しもつく
「特上にぎり」6,600円にはお通し、茶碗蒸し、赤出しもつく

城崎に来たからにはピンの海産物を味わっておきたいもの。創業80年の「をり鶴」では、「銀座久兵衛」などで経験を積んだ三代目が腕を振るう。名店出身とあり、ランチ時は連日行列ができるが、予約が可能なディナーであればゆったりと過ごすことができる。

訪れた2月には、柚子と竹野の「誕生の塩」を振りかけた赤貝や、珍しいハタハタの炙りなどが並んだ。二代目の頃から振る舞っているという、但馬牛のモモ肉を使った肉寿司もある。神鍋の北村わさび、但馬産のコシヒカリを使った「久兵衛」流の小ぶりなシャリがネタを引き立てる。

出会えたらラッキーな「松葉カニ甲羅味噌」3,000円〜
出会えたらラッキーな「松葉カニ甲羅味噌」3,000円〜

そして11〜3月の松葉カニシーズンには、特別コースも登場。特別なルートで仕入れることでコストを抑えた「松葉カニ甲羅味噌」は出会えたらラッキーな一皿だ。「香住鶴」の大吟醸など、地元産の日本酒を合わせたい。

をり鶴
住所/兵庫県豊岡市城崎町湯島396

TEL/0796-32-2203
営業時間/11:00〜14:00(L.O 13:30)、17:00〜21:00(L.O 20:00)
定休日/火、第2・第4水

URL/www.ori-zuru.com/

長期滞在時のリモートワークにぴったりなワーケーション施設

外湯も豊富で街歩きも楽しい温泉街とあれば、できれば数日滞在してゆったりと満喫したいところ。城崎温泉では、仕事をしながら温泉地に長期滞在するニーズに応える形でアーティスト・イン・レジデンス「城崎国際アートセンター」内のエントランスホールに「WORKATION IN TOYOOKA@KIAC」が2022年4月にオープンした。

デスク11台の他、個室も2部屋完備。予約をすれば1時間以内500円、1時間を超える場合は1,000円で利用可能だ(個室は+200円×時間)。

WORKATION IN TOYOOKA@KIAC
住所/兵庫県豊岡市城崎町湯島1062 城崎国際アートセンター内

TEL/0796-32-3888
営業時間/9:00~17:00
定休日/火
URL/kiac.jp/article/1156/

Photos & Text: Riho Nakamori

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