新しくなった島根の2つの「界」めぐり玉造温泉で美肌&美食にご満悦♡ | Numero TOKYO
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新しくなった島根の2つの「界」めぐり
玉造温泉で美肌&美食にご満悦♡

春の訪れとともに、どこかへ旅したい気分も満開。そこで、島根はいかがでしょう? 神々の地・出雲で、温泉に開運、美味しいもの尽くしのショートトリップ。
2022年秋に星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」が島根で2軒同時に、新規&リニューアルオープン。この2つの界をめぐる、ごほうび旅を提案します。まずはスタイリッシュに生まれ変わった「界 玉造」から。

ご当地の魅力を届ける温泉旅館ブランド「界」
この秋、島根に2軒が新規&リニューアルオープン!

「王道なのに、あたらしい。」をテーマに、星野リゾートが運営する、日本初の温泉旅館ブランド「界」。現在、全国に22軒を数え、今後も日本有数の温泉地に約30軒を展開する予定です。

それぞれの界では、和にこだわった空間で、“地域”や“季節”を取り入れた、その土地ならではの旅を提案しています。

そのためすべての界において、地域の文化を投影した「ご当地部屋」、地域の伝統文化を無料で体験できる「ご当地楽(ごとうちがく)」、そして今のライフスタイルにフィットした湯治体験「うるはし現代湯治」など、共通したおもてなしやプログラムを用意。滞在を通して、ご当地ならではの体験ができるというわけ。プロパティごとにデザインが異なる風呂敷や、お湯印帳なども、リピートしたくなるきっかけに。


そして今回フォーカスするのが、島根の2軒の界。2022年11月16日に「界 出雲」が出雲大社近くにオープン。そして同日に「界 玉造」(かつての「界 出雲」から名称変更)が大がかりなリノベーションを経てリニューアルオープンしました。

美肌の湯が湧く神話の国、出雲の魅力をちりばめたステイ

界 玉造が佇むのは、玉造温泉の玉湯川のほとり。川床まで下りられる川沿いには夕暮れになると行燈が灯り、背後には小高い緑。風情あふれる温泉街です。

玉造温泉は『出雲国風土記』に記された日本最古の美肌の湯です。また、ここ出雲は神々による“国譲(ゆず)り”やスサノオノミコトによるヤマタノオロチ退治など、数々の神話がつむがれた地。国譲りにおいて相撲の原形が生まれ、神話の中でヤマタノオロチにお酒を飲ませたことから日本酒発祥の地ともいわれてもいます。

写真/石橋優太
写真/石橋優太

そして玉造温泉近くの宍道湖の名産しじみや、山陰の冬の味覚の王様である松葉ガニなど、美味しいお楽しみも。

界 玉造では、「いにしえの湯と出雲文化を遊ぶ宿」をコンセプトに、出雲ならではの体験がちりばめられた滞在が叶えられます。

門の先に待っているのは、出雲文化のおもてなし

しっとりとした風情の日本家屋の引き戸を開けると、目に飛び込んでくるのは手入れの行き届いた日本庭園。屋内に架けられた真っ赤な太鼓橋を渡って、館内を進みます。敷地中央には300基の竹あかりが並ぶ中庭、それを囲むように建物がレイアウトされています。

昭和13年に建造された建物を活かし、20年ほど前の改装時もそのままに残した庭園と茶室。扉を開けた時から、雑踏は遠のき、「界 玉造」の世界観に没します。1万平方メートルを超える広い敷地に、客室はわずか24という、ゆったりとした空間も現実を忘れさせるのかもしれません。

客室にてチェックイン。テーブルの上にはウェルカムスイーツ「酒粕あんさんぶれ」が用意されています。日本酒発祥の地にふさわしく酒粕を使った、スタッフ考案のオリジナルの和菓子です。ルームキーのキーホルダーも、日本酒から想起される桝と出雲名産の勾玉をモチーフにしたもの。細部まで“出雲”を感じます。

チェックイン時に茶室での「茶の湯体験」の予約も入れておきたいところ。松江は七代目藩主の松平不昧(ふまい)公が広めた、茶の湯文化が今も息づくお土地柄です。お作法よりも気楽にお茶を楽しむ習慣があるそう。茶の湯体験では、三斎流の影山勉先生のお点前をいただきつつ、先生の軽快なトークも楽しめます。

日本最古の美肌の湯でアンチエイジング!

まずは、温泉! 

と、その前に玉造温泉の歴史と効果的な入浴法を指南する「温泉いろは」に参加しましょう。界の湯守を担うスタッフがガイド役となり、紙芝居スタイルでわかりやすく伝えます。

玉造温泉は『出雲国風土記』に「ひとたび濯(すす)げば形容端正しく、再び浴すれば万の病ことごとに除こる」と記されています。つまり1回入れば美しくなり、もう1回入れば病気が治る!らしいです。 

泉質はナトリウム、カルシウム、硫酸塩、塩化物泉。天然の保湿成分と呼ばれるメタケイ酸もたっぷり。つまり、うるおい成分を塩のベールで閉じ込めて保湿しているわけです。

いざ、大浴場「玉肌の湯」へ! 

大浴場の入口には日本酒が置かれています。これは飲むこともできる、お肌のパック用。日本酒には“α-EG”という麹菌がもつ酵素が含まれています。これが、ハリ・弾力の源となるコラーゲンやエラスチンなどの生成に働きかけるのだとか。入口で日本酒を桝に注ぎ、大浴場内で源泉を加えて、紙のフェイスパックを浸します。しばしお手入れタイム。温泉と日本酒、ダブルのアンチエイジング効果、期待できます。

入浴後は湯上がり処で、水分補給を忘れずに。レモン水とはま茶、大山白バラ牛乳の3種類のミルクバーが用意されています。深めのソファに沈みつつ、中庭を眺めれば、時が経つのも忘れそう。

界らしい和モダンな新ルームは地元の意匠があちこちに

2カ月間のクローズを経たリニューアルで、いちばん変わったのが客室。かつての純和室の客室が、スタイリッシュな和洋室にアップデートしました。造りを変えて、10畳+4畳半に相当する広めのスペースを確保しています。

小上がりを上がると、リビング+ベッドルーム、次の間には吉野杉の酒樽テーブルを置き、まるで酒蔵の麴室(こうじむろ)のよう。さらに進むと、広めの脱衣場&露天風呂。1階は庭もあるので露天風呂も広々としています。ちなみに湯船は、1階はヒノキと信楽焼、2階は信楽焼です。

露天風呂ではぜひ日本酒風呂に挑戦を! 酒持田本店が10種をブレンドした日本酒を、トクトクトクとおちょこではなく、湯船へ投入。最初はとろりとした独特な感触があり、鼻をくすぐる日本酒のいい香りに包まれます。

客室の随所に飾られた地元の工芸品も目を楽しませてくれます。ベッドボードの天野紺屋による藍染めは、宍道湖に指す“天使のハシゴ”(雲間から無数の光が差す光景)を表現。同じものは2つとありません。出西窯の湯のみ&コーヒーカップなど、ご当地の作家さんの作品と出合うきっかけでもあります。

冬のぜいたく、感動のカニ尽くし! 来年もまた!

冬の食の王様といえば、カニ。山陰で獲れるズワイガニは“松葉ガニ”と呼ばれ、凝縮した旨みや甘さがたまりません。解禁となる11~3月は最もカニの美味しい時期。しかも島根県は近海で漁を行うため、活きたまま水揚げされ、鮮度もバツグンです。

冬のカニ漁が解禁されている期間中は、活蟹会席が卓を飾ります。しかもただの松葉ガニではありません。生産者がわかるタグ付きの、上質なもの。それをあらゆる調理法を駆使して、楽しませてくれます。

界 玉造では今年、蒸し蟹料理を「活松葉蟹の杉板奉書蒸し」に刷新。奉書蒸しとは、7代目松江藩主の松平不昧公ゆかりの調理法。不昧公が、浜辺で漁師たちが蟹を食べているのを見かけ、「食べてみたい」と興味津々。漁師たちは恐れ多いと、奉書で巻いて献上したのが始まりだとか。うまみ成分が流れ出ずに、蟹本来の味を余すことなく楽しめます。

今回はワインとのペアリングで、冬の特別会席「タグ付き活松葉蟹会席」を満喫。とろけるような甘みのカニ刺しには、青りんごのアロマが香る「NIKI Hills ワイナリー/HATSUYUKI」。

香ばしい焼き蟹には、柑橘由来の香りがマッチする「北条ワイン/砂丘 白」。

新メニューの奉書蒸しには、日本酒の樽で寝かせた個性的な「島根ワイナリー/甲州清酒酵母仕込み」。

活の蟹足をトルコのお菓子のカダイフで巻いた揚げ物には、レモンをキュッと搾ったような柑橘系の「島根ワイナリー/縁結ソーヴィニヨンブラン」。

宍道湖の大振りなしじみで出汁を取る蟹すき鍋には、やさしい酸味と心地よい渋みの「奥出雲葡萄園/杜のワイン ロゼ」。

絶品カニとワイン(もしくは日本酒)のみごとなマリアージュ。こちらの「タグ付き活松葉蟹会席」は残念ながら、3月10日までで今年は終了。毎年、蟹漁の解禁時期にこのプランは開催されるので、次の冬にぜひ。

ちなみに、日本海に立地する3軒の界では冬にカニ料理が並びます。「界 出雲」は出雲大社のダイコクさまにちなんだ一品、「界 加賀」では活蟹をしめ縄でしばって蒸した一品がシグネチャー。来年はカニめぐりもいいですね。

珍しいご当地銘柄を日本酒バーで飲み比べ

日本酒発祥の地とされる島根は、酒蔵も多数。酒樽がずらりと壁を覆う「日本酒BAR」では、島根の酒蔵30カ所の42銘柄を揃えています。中には県外へはめったに出ない、珍しい銘柄も! 

「日本酒3種とおつまみのセット」1000円~をオーダー。名前のインパクトで選んだ「死神」、純米生酒辛口の「やまたのおろち」、原酒のコクと米のうまみを感じる超辛口の「環日本海」をチョイス。ダイニングメニューの日本酒は食中酒が中心なのに対し、日本酒BARは個性的なお酒が主流。ちびりちびりと、奥深き日本酒の世界をじっくり味わえます。日本酒BARのみならず、自室でも楽しむことができます。

のけぞる! 迫力の石見神楽
ご当地楽で知るユネスコ無形文化遺産

全国の界でそれぞれの地域の伝統文化などを紹介する「ご当地楽」。界 玉造では、ユネスコ無形文化遺産にも認定されている石見神楽を披露します。演目は、出雲に伝わる神話のヤマタノオロチ。

約16メートルもの大蛇が舞台狭しに太い胴体をくねらせます。その迫力は思わずのけぞるほど。みごと大蛇を退治したスサノオノミコトはクシナダヒメと結婚し、末永く幸せに暮らしたというストーリー。

最後にスタッフが演じていたと種明かしされて、びっくり。日頃、石見神楽の先生に教えを請い、鍛錬した舞台だったとは。スタッフの好演に、伝統文化がより身近に感じられるはずです。

おもてなし料理やごはんの友
朝食で味わう島根の食文化

目覚めの体操として「奉納相撲体操」でカラダをほぐし、朝食会場へ。

翌日の「ご当地朝食」も、島根ならではの食材や調理法が取り入れられ、食文化の豊かさを感じます。

メインの「うず煮」は旧暦元旦に出雲大社の神事にふるまわれる、ふぐが主役のおもてなし料理。そのまま食べて、ごはんを入れて、三つ葉やしじみの生姜煮といった薬味をいれて雑炊にして、と3通りの食べ方で楽しめます。

わかめを板状に干した「板わかめ」や、魚のすり身に赤唐辛子を混ぜ込んだ揚げ物「赤天」も、他では味わえないごはんの友。昨日あれほど食べたにも関わらず、朝から満腹になるまで食べちゃうのは必至です。 

界 玉造

住所/島根県松江市玉湯町玉造1237
TEL/050-3134-8092(界予約センター 9:30~18:00)
URL/https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaitamatsukuri/

界 玉造周辺で立ち寄りたいスポット

ヤマタノオロチ退治後に結ばれたスサノオノミコトとクシナダヒメ。二人が新居を構えたことから、八重垣神社は縁結びのご利益があるとされています。

写真/石橋優太
写真/石橋優太

スサノオノミコトが大蛇と戦っている間、クシナダヒメは八重垣神社の本殿裏の森に身を隠し、鏡の池の水面に姿を映して身づくろいをしていたとか。その鏡の池に硬貨を載せた占い用紙を浮かべ、沈む速さで、近々の出会いの有無がわかります⁉

写真/石橋優太
写真/石橋優太

八重垣神社
https://yaegakijinja.or.jp/

界 玉造でも採用されている「湯町窯」の作品。実は、大正から昭和にかけて巻き起こった“民芸運動”の担い手、柳宗悦やバーナード・リーチ、河井寛次郎も訪れ、指導したこともある老舗の窯元です。

どことなく欧風を感じるスリップウェアや筒描きの技法を駆使した焼き物が店内にはずらり。どれにしようかと迷ったら、迷わず手に取りたいのが、戦後から作り続けているという“エッグベーカー”。なんと、目玉焼き用の器! これが、何の調味料も入れなくても、贅沢な目玉焼きに。やさしい卵本来の香りが広がります。

湯町窯
住所/松江市玉湯町湯町965
TEL/0852-62-0726

玉野川沿いに佇む複合施設「玉造アートボックス」。1階には玉造温泉のお湯を配合した石鹸が人気の「姫ラボ」やお土産アイテム、2階に編みぐるみ作家のMinaminさんの作品やレトロな雑貨、カフェなどが入っています。おもちゃ箱を覗くような感覚で、掘り出し物を探しましょう。

玉造アートボックス
住所/島根県松江市玉湯町玉造1241

 

Photos & Text: Chieko Koseki

Profile

古関千恵子Chieko Koseki 旅行ライター。リゾートやエコ、ダイビングなど、国内外のビーチにフォーカスして寄稿。ここ最近は国内のビーチの美しさを再発見し、全国津々浦々を探訪中。目指すは伊能忠敬!? Instagram: @chieko_koseki

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