人気SF小説家に空想アンケート! 【1】酉島伝法
SFのスタートは壮大な空想である。未来はどうなる? 宇宙へ行きたい? そしてSFとは? 人気SF作家の頭の中を覗いてみると、私たちの世界もまるで無限に広がっていくようだ。第一回は酉島伝法。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年1・2月合併号掲載)
日常が繰り返しになりすぎると心が平坦になっていく。そうならないためのSF
──100年後の未来、人間の肉体はどのように変化/進化/退化していると思いますか?
「100年前と現代の人間を比べても、身長が伸びたり、スタイルが変わった程度なので、さほど大きな変化はないような気がします。性差は少なくなっていきそう、というのと、あと顎が小さくなってそう。遺伝子改変がある場合は、肉体じたいがファッション化するのかもしれません」
──肉体の変化にともない、100年後の衣服やファッションはどうなっていると思いますか?
「デザインはさまざまに変化するでしょうが、それとは別に新たな機能性を備えた新素材が増えていそうです。生地という言葉にふさわしく、生きている皮膚や毛皮でできた動きを補助してくれる人肌の温もりのある生地とか、白癬菌や角質を食べてお肌を綺麗に保ってくれる生地とか」
──もし24時間だけ未来か宇宙に自由に行けるなら、どちらに行ってみたいですか? その理由は?
「宇宙ですね。そのどこかにあるかもしれない可住惑星の、地球とは異なる生態系や知的生物の文化習俗を見てみたいです。未来の地球には驚きもあるでしょうが、人類にあらためてがっかりしそうな気もして」
──SFというジャンルが誕生して久しいですが、なぜ作家やクリエイターは遠い未来や宇宙など「ここではないどこか」に思いを馳せると考えますか?
「素直に、面白くて刺激を受けるんですね。日常が繰り返しになりすぎると、閉じ込められたような息苦しさを感じて、だんだん心が平坦になっていくのですが、ここではないどこか、はそれをこじ開けてかき混ぜ、自分をなにひとつ知らない人として驚かせてくれるのが良いのかもしれません」
Realization:Miki Hayashi