人気ワインショップに聞く「チョコレートとワイン」ペアリングのすすめ | Numero TOKYO
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人気ワインショップに聞く「チョコレートとワイン」ペアリングのすすめ

Numero.jp読者のみなさまこんにちは。ワインブロガーのヒマワインです!

さて、まもなくバレンタインデー。友人やパートナーに贈るのはもちろん、自分のためにチョコレートを楽しむ機会も増えてくるのではないでしょうか。そんなわけで、今回はチョコレートとワインのペアリングをご紹介したいと思います。

チョコとワインが合うの? って思いますよね。わかります。私もワインにハマった当初はまさにそう思っていましたから。ワインとチョコが果たして本当に合うのか!? さっそく、東京・恵比寿の人気ショップ、ワインマーケット・パーティの沼田英之店長に、オススメの組み合わせを教えてもらいましょう! 以下、対談形式でお届けします。

チョコレートと合わせられるワインの条件

ヒマワイン(以下、ヒマ)「今日は『チョコレートとワインのペアリング』を教えてもらいたいなと」

沼田店長(以下、店長)「わかりました。実はお店にもチョコレートはいろいろご用意していて、日々試食しているんです。ワインとのペアリングも研究していますので、いろいろご提案できると思います」

ヒマ「おお、頼もしい。ではいくつか紹介していただけますか?」

店長「もちろんです。ただ、その前に「チョコレートと合わせられるワインの条件」をお伝えしてもいいですか?」

ヒマ「え、そんなのあるんですか?」

店長「はい。まずはアルコール度数が13.5%以上あること。それくらいのボリューム感がないと、チョコに負けてしまうんです。あるいは、甘口ワインであること。そのふたつが条件になるんです」

ヒマ「へー。じゃあ今回紹介していただけるのも、アルコール度数13.5%以上か、あるいは甘口ってことですね」

店長「そうなります。それをベースに、具体例を挙げながらワインとチョコレートを合わせるコツをお伝えできたらと思います」

苦いチョコ×甘いワイン

ヒマ「よろしくお願いします。まずは……イタリアの赤のスパークリングワイン『ランブルスコ』とカカオ100%の組み合わせですか」

店長「はい。ワインは『メディチ・エルメーテ ランブルスコ・キューイング』(税込1,540円)で、チョコは『ラティテュード ダーク 100% セムリキ』(税込1,078円)。ウガンダのチョコレートと合わせてみました」

ヒマ「これはどういう組み合わせですか?」

店長「チョコは原材料がカカオ豆のみのカカオ100%。甘味はすごく控えめなんですね。それに対してワインのほうはほんの少し甘味があるんです」

ヒマ「ワイン界隈でいう『残糖多め』ってやつですね。チョコ単体で食べると少し苦味を感じますが、チョコが口の中から消えたタイミングでワインを飲むと、後味に甘みが広がってきます。こりゃうまい!」

店長「『スイカと塩』効果ですよね。苦いチョコに甘いワインを足してあげることで、甘みが引き立ってくるんです」

ヒマ「カカオ100%のチョコって正直ちょっと苦手だったんですが、ワインのつまみと考えるとすごくいい気がしてきました(笑)」

調和の決め手はゴマ!?

店長「さて続いては、チョコレートがラティテュード ダーク 72% バニラビーンズ&ゴマ(税込1078円)。合わせるワインがジョエル・ゴットのソーヴィニヨン・ブラン(税込2750円)です」

ヒマ「なんと白ワインですか。チョコレートは赤が基本かなあと思っていたので、ちょっと意外です」

店長「まあ、まずは味わってみてください」

ヒマ「お〜、これも実にいい。ワイン単体だとボリュームと果実味をすごく感じるんですが、チョコと合わせるとなんだかさわやかな印象に変わってきますね。

店長「チョコレートにセサミが入っているんですが、ソーヴィニヨン・ブランにはない香ばしい風味がセサミによってプラスされて、いい具合に調和されるんです」

ヒマ「ソーヴィニヨン・ブランに特徴的なハーブっぽいニュアンスが強調されて、チョコと引き立て合っています。これは発見だなあ」

店長「これも、アルコール度数が12.5%くらいのソーヴィニヨン・ブランだとチョコに負けてしまってあまり合わないんです。ジョエル・ゴットは僕の好きなカリフォルニアの生産者なのですが、カリフォルニアワインは果実味がたっぷりあり、アルコール度数も高め。チョコに負けません」

ヒマ「ひとつめとはまた違う『調和』のペアリングという印象です。さて、お次は?」

ボルドーには柑橘系を

店長「続いてはフランスのボルドーから『シャトー・シャペル・ダリエノール』(税込2,860円)と、『エリート ダークチョコレート オレンジピール』(税込528円)を組み合わせてみました」

ヒマ「これまたワイン単体でもすごくおいしいですが、チョコと組み合わせると後味に柑橘系の酸味が足されますね。重厚なボルドーワインが軽快な甘ずっぱ系ワインに変身しちゃう感じで、ちょっとサングリアっぽくもある。うわなんだこれマジか(驚愕)」

店長「タンニン(渋み)とフルーツ(果実味)がしっかりとあるボルドーワインに欠けているのが柑橘のニュアンス。それをこのチョコで足してあげることでピッタリ合ってくるんです。これに限らず、オレンジピールやレモンピールなどはボルドーワインによく合うんです」

ヒマ「いやーこれは1本とられました。ボルドーに柑橘系チョコなんて考えもしなかったです」

店長「昔、日本食のお店で鴨のお吸い物に柚子のピールが乗っていたんです。それを飲んだあとにボルドーを流し込んだらすごくおいしかった。以来、ボルドーには柑橘を足すのが自分のなかで定番になっているんですよ。この銘柄に限らず、2,000円台から3,000円前後のボルドーならお好きなものを選んでください」

定番! 貴腐ワインとともに

ヒマ「続いては、定番中の定番ですね。極甘口ワインとチョコレート」

店長「はい。貴腐ワインに漬け込んだレーズンをチョコレートコーティングした『レザンドレ・オ・ソーテルヌ』(税込660円)とハンガリーの貴腐ワイン『パトリシウス トカイ・アスー 5 プットニョス』(税込5,610円)の、貴腐つながりのペアリングです」

ヒマ「貴腐ワインっていうのは、詳しい説明を省いてざっくりで言うと、ある特殊な条件下でのみ生まれる超甘口ワインですね。ハチミツのような甘さとやわらかいレモンのような酸味が同居して、さらに独特な香りを伴う天国の飲み物みたいなワインです」

店長「貴腐ワインにつけたブドウを貴腐ワインと合わせて合わないはずがないんですが、そもそもこのワインが非常によくできているんです。熟れたバナナやトロピカルフルーツのニュアンスがあって。値段は少ししますが、貴腐ワインは数週間くらいは平気で持ちますからね。チョコレートと甘口ワインのペアリングを試したことがない人にはぜひ試していただきたいです」

ヒマ「食後にこのレーズンチョコをひとつふたつつまんで、貴腐ワインをチビチビ飲むなんて、最高ですね……」

お手軽ホットワインでスイーツタイムを贅沢に

店長「さて、ラストはホットワインをつくりましょうか」

ヒマ「どういうことですか」

店長「めちゃくちゃ簡単においしいホットワインをつくる方法があるので、それをお伝えします。その上でチョコレートと合わせたいなと」

ヒマ「おお、すっごくいいですね、それ。ぜひお願いします」

店長「まずワインはカンティーナ・ディオメーデの『カナーチェ』(税込2,970円)。イタリアのブーツのかかと部分にあるプーリア州のワインで、非常に濃くて引き締まった味のワインなんです」

ヒマ「プーリアといえばイタリアの中でも果実味たっぷりで人懐っこい印象。それだけにそのままでもチョコレートに合いそうですね。アルコール度数も13.5%あるし」

店長「ですよね。実際、『ショコラ・マダガスカル カカオニブ・ダーク68%』(税込825円)との相性は悪くありません。でも、バレンタインデー近辺はまだまだ寒いですからね。ホットワインもいいものですよ」

ヒマ「どうやって作るんですか?」

店長「めちゃくちゃカンタンです。スライスしたオレンジをハチミツに漬け込んだローズメイの『オレンジスライスジャム』(1,760円)という期間限定の商品があるのですが、それを『カナーチェ』で煮るだけ」

ヒマ「なんか、想像していたよりさらにカンタンでした(笑)」

店長「このとき、ワインを温める程度にすればアルコール分はほぼそのまま。沸騰させるとアルコール分は飛びますが、私は少し煮詰めるのが好きなんです。実際につくってみましょうか」

ヒマ「完全に目分量ですが、オレンジスライスを3枚とかにワインをマグカップ1杯分とかそんな感じですかね」

店長「ここはお好みですよね。はい、飲んでみてください」

ヒマ「うま〜。めっちゃくちゃ落ち着く味です。なんですかねこれ。似てるところでいうと甘〜い柚子茶とか……? これを飲んでチョコを食べながら、海外ドラマとかをのんびり観たくなります」

店長「ですよね。このカカオニブが入ったダークチョコとの相性は抜群だし、ガトーショコラなんかもすごく合うと思います。ワインは古くなったワインならなんでもいいですよ」

ヒマ「いやはや、しかしチョコとワインの組み合わせ、こんなにバリエーションがあるとは思ってもみませんでした」

店長「ワインが甘口ならば基本的に多くのチョコレートに合わせることが可能です。お酒も甘いものも同時に楽しめて、すごく贅沢な時間が過ごせると思うので、ぜひ試してみてくださいね!」

ワインマーケット・パーティ
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
営業時間/11:00〜19:30
Tel/03-5424-2580
winemart.jp



Photos & Text: Hima_Wine

Profile

沼田英之Hideyuki Numata ソムリエ、1978年生まれ。ホテルやレストラン勤務後、イタリア・トスカーナに留学。帰国後、レストランにソムリエとして勤務し、その後フランスワイン専門店ラ・ヴィネに入社。現在は姉妹店である都内屈指の大型店、ワインマーケット・パーティの店長を務める。
ヒマワインHima_wine ワイン大好きワインブロガー。ブログ「ヒマだしワインのむ。」運営
https://himawine.hatenablog.com/
YouTube「Nagiさんと、ワインについてかんがえる。Channel」共同運営
https://www.youtube.com/@nagi-himawinenu
Twitter:@hima_wine

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