いま買うべきアーティスト、教えます vol.3 ギャラリーディレクター | Numero TOKYO
Art / Feature

いま買うべきアーティスト、教えます vol.3 ギャラリーディレクター

初めてアートを買いたい人、新たな作品に出合いたい人必見! 長年アートを見続けているクリエイターやライター、ギャラリーのディレクターたちが注目するアーティストを紹介。作品は3~100万円のものまで。あなたの心にささる作品を見つけてみて。きっと楽しい景色が待っているはず。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年6月号掲載)

Gallery 01
Printed Union/原田光丞

『Emotions cannot be translated into words 』(2020)
『Emotions cannot be translated into words 』(2020)

人とのつながりと共に暮らす豊かさを味わって
「彼女の絵は人や動物、自然、花などの身近なモチーフの作品が多く、日常に溶け込み鑑賞者を別の世界に連れていってくれるような心地よさがあります。中でもこの作品は童話的な世界観の中で人が抱擁しているモチーフで、穏やかな気持ちにしてくれます。戦争やコロナ禍など、人と人とのつながりが分裂される状況下にあって、安らぎを取り戻してくれるような作品です。各地で精力的に展覧会を行っており、実際の作品を見ることができる機会も多いので、ぜひ足を運んでみてほしいです」

【土屋未久|つちや・みく】
1991年生まれ、愛知県出身。展示を行いながら書籍の装画・挿絵、イベントヴィジュアル、ロゴなどの仕事に取り組む。 絵を通して見たことのない知らない場所へ自分や他者を連れていきたいという思いを描く。

プリンテッド ユニオン
東京都渋谷区神宮前6-32-7 近藤ビル1F
URL/www.printed-union.com

Gallery 02
CLEAR GALLERY TOKYO/松﨑裕紀

『ルーム』(2021)¥165,000
『ルーム』(2021)¥165,000

ポップに見えてシリアス。作家と作品の絶妙な関係性が面白い
「エアブラシを用いて独自に開発した技法で描いたシリーズは、昔のアニメの1シーンや古雑誌からモチーフを抽出しており、作家の個人的な意識を外の出来事として距離感を持って描かれています。そのドライな関係性が静寂とポップに見えてシリアスな状況を作り出しています。画面の中の線は曖昧で、図像は揺らいでみえ、視覚を通してざらついた低い解像度の映像となり、見る人の記憶の断片に重なっていくのかもしれません。世代を超えて哀愁を誘う彼の描く世界を堪能してほしいです」

【岡野智史|おかの・さとし】
1979年生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。対象についての考察と技法の実験などを制作のテーマに、油彩画、鉛筆画のほか、エアブラシを用いて描いた作品を制作している。7月にCLEAR GALLERY TOKYOにて個展を開催予定。

クリア ギャラリー トウキョウ
東京都港区六本木7-18-8 岸田ビル2F
TEL/03-3405-8438
URL/cleargallerytokyo.com

Gallery 03
nidi gallery/清水ありさ

『Friendship Tea』(2021)¥253,000
『Friendship Tea』(2021)¥253,000

視覚的な要素だけではなく背景にある思考やメッセージも感じて
「彼女の作品は様々な問題を抱える現代社会で前向きに生きるヒントが詰まっています。それは作品の素材選びから、岩絵具や野菜を原料とした天然素材の絵具を用いて、折り目や皺のある紙に絵が描かれているのも特徴的。背景にストーリーがある紙が好きでそこからインスピレーションを受けて制作しています。この作品の紙は日本に住む友人からもらった手漉きの和紙だそう。お茶を注ぐ手元にフォーカスした構図や描き方がユニークで、和やかな光景が印象に残ります。『お茶しませんか?』と声をかけて友情が始まるように、お茶は人と人を繋げて、共有する時間を生み出します。穏やかで親密なお茶の時間が共生や調和を象徴していると思います」

【ジョアンナ・タガダ・ホフベック】
1990年、フランス生まれ。自然豊かなアルザス地方でパーマカルチャーを実践する祖父と幼少期を過ごし、現在はイギリス・オックスフォードシャーの田園地方を拠点に活動するアーティスト。ペインティング、写真、テキスタイル、インスタレーション、出版など幅広い表現で、環境問題に言及した作品を発表している。

ニーディ ギャラリー
東京都渋谷区東2-27-14 ペガサスマンション恵比寿#102
TEL/03-6277-5579 
URL/nidigallery.com

Gallery 04
clinic/オククボコウタ

『Inner Surface (N)』 協力:BENIZAKURA PARK ART Annual2018、ソリトン・コム ©Akira Takaishi
『Inner Surface (N)』 協力:BENIZAKURA PARK ART Annual2018、ソリトン・コム ©Akira Takaishi

多次元階層における表現と向き合い続けた精神力と画力に感動
「彼は多次元階層を内包する絵画表現の可能性に徹底的に向き合って制作しています。時にはキャンパスを切り刻んで再構築したり、地面を掘削する作品もありました。ストイックすぎる精神とそのプロセスが、絵画表現に強度を与え、次元を超越したイリュージョンを起こしているように思います。この作品は“見続けることで何か発見があるかもしれない”と予感させる不思議な効果があります。映像やグラフィックなどの視覚表現をされる方は、より奥深さを感じるかもしれません。アート作品と所有者には、生活空間で共存していてほしい。彼の姿勢や人柄に触れて恋心を抱いてくれる人に手に取ってほしいなと思います」

【高石晃|たかいし・あきら】
1985年生まれ、神奈川県出身。2010年武蔵野美術大学大学院美術専攻油絵コース修了。絵画表面の微細な操作や、大地への大規模な掘削などによりイメージと物質の境界を横断する作品を制作している。

クリニック
東京都世田谷区三軒茶屋1-33-18
TEL/050-5375-9572
URL/www.clinictokyo.com

Gallery 05
INHERIT GALLERY/藤本薫

無題 ¥130,000(参考価格)
無題 ¥130,000(参考価格)

タイトルや説明はなし。自身が感じるままに受け取って
「幼少期に焼きついた原風景をベースに作品を制作されています。実際にお会いしていろいろとお話したのですが、作品を見る頃には彼自身の人柄に魅力を感じていました。彼の作品にはタイトルや説明文、メッセージなどが特にありません。悩み事は人それぞれ大小さまざまあると思いますが、作品を見ると純粋に癒やされるのです。初めてアートを買いたいと思っている人はぜひ彼の真っすぐな作品を手に取ってほしいです。自分の部屋にお気に入りの窓(風景)が一つ増えると思って見てみると楽しいですよ」

【小川洋平|おがわ・ようへい】
画家。新潟県出身。長く住んだ東京を離れ今年から制作拠点を静岡へ移す。幼少の頃に焼きついた原風景を作品のベースにして描く。“カレー作り歴は今年で10年。東京・下高井戸にあるカレーとクラフトビールの店「HATOS OUTSIDE」でカレーのレシピも手がける。

インへリット ギャラリー
東京都世田谷区下馬1-48-3
URL/inheritgallery.com

Gallery 06
CALM & PUNK GALLERY/安部憲行

『Pao』
『Pao』

誰かに忘れ去られたものへ新しい発見と愛を注ぐ
「彼は日課的に中古品店巡りやネットサーフィンを通して詳細不明のジャンク品を集めていて、作品の素材に使っています。それらは誰かに忘れ去られたものだったりしますが、フェティッシュ的ともいえる愛情を持って彼らを再発見して自分の作品にしていきます。モノの見た目はクールで美しいというより、間抜けだったり不憫だったりしますが、彼が『笑えるほうがいい』と語っていたのがすごく印象的で魅力的だと思いました。長く愛でることによって作品が持つさまざまな奥行きを体験できると思います」

【宮澤謙一|みやざわ・けんいち】
アーティストユニット「magma」として活動しながら、立体作品、ペインティング、陶芸など自身の作品を日々制作している。2019年にCALM & PUNK GALLERYで自身の初個展を開催後、21年にも同ギャラリーで個展「LIVING DEAD STOCK」を発表。

カーム アンド パンク ギャラリー
東京都港区西麻布1-15-15 浅井ビル1F
URL/calmandpunk.com

※価格は4月8日現在のものです。

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Text:Saki Shibata

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November 2022 N°161

2022.9.28 発売

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