藤井フミヤが語るアートとの関係 | Numero TOKYO
Art / Feature

藤井フミヤが語るアートとの関係

昨年、東京・南青山の住宅街に一軒家のギャラリーがオープンした。企画展では、著名なアーティストが名を連ねたかと思えば、知る人ぞ知る注目の若手を紹介している。オーナーは藤井フミヤ。自身もアーティストである彼に、アートとの関わり方を聞いた。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年6月号掲載)

グルーヴ感を生むギャラリーとして

──「Feb gallery Tokyo」をオープンしようと思ったきっかけを教えてください。

この場所(東京・南青山にある一軒家)をリフォームして、なんか面白いことをやってみようっていう発想から結果的にギャラリーにしたんだけど、ビジネスというよりは、東京のアートシーンの中でグルーヴを生む場所になればいいなと思っていて。村上隆さんのおかげもあって、海外ではアニメや漫画が現代アートになっているけど、そもそも日本の子どもたちはアニメを観て育つし、DNAへのアニメと漫画の入り込み方には、ほかの国は勝てないと思う。そんなふうに育った日本人のアーティストが世界に出て活躍する可能性を大切にして、このギャラリーでは若い人たちを応援して面白いことをやっていきたいです。

──作家はどのように選定していますか。

スタッフの皆で話し合って決めています。うちはギャラリーとしてまだ初心者マークだから、安定するにはまだ時間がかかるだろうなって感じですけど、ここはいろんなことをやれるんですよ。次は映像の展示も考えているし、ダンサーの写真展ではここで踊るという案も出ているし。そういうこともやれたらいいなと思っています。


Feb gallery Tokyoで今秋に展覧会開催を予定している加藤崇亮の作品『草原の食事』(2021)。アーティストのヒロ杉山を通じて存在を知った。「とてもファッション性を感じるので、ヌメロ読者の方にぜひ推したいなと思いました」

──ご自身の作家活動については、ここ最近どんなスタイルの作品を手がけていますか。

ずっとCGをやっていたんだけど、ここ3年くらいは筆で描くようになっていてアナログが再開した感じですね。俺がCGを始めた頃は、コンピューターでアートやっている人が少なかった。だけど家庭にコンピューターが入ってきて、年賀状でもフライヤーでも自分で作れる時代になりましたよね。そしたらやっぱり一点しかないものが面白いよなって。手で描いているといろいろ発見もあるし。

──今回、紹介している作品もCGですね。

この頃は女性の体をバラバラに表現してしまう癖みたいなものがあって、立体的な造形と組み合わせたタイプの作品が多い。今も女性を描くことが多いです。自分はもともと絵画が好きで、絵画って宗教画や神話モチーフが多いですよね。だからモデルがいるわけではなく、ヴィーナスや女神を描いている感覚なんですよ。


藤井フミヤが2003年に手がけた作品『GIRL』。この頃はCGで作品を制作することも多かった。「木を切って平面に貼り付けて作ったアナログ作品のためにコンピューターで作った下書きがあり、それをベースにした作品です」

純粋なフィーリングをアートに託す

──ご自身が制作されているアートから発信したいことは?

歌っていうのは大衆性があって、その大衆に聴かせることが目的だから発想として好き勝手なことはできないというか。音楽っていうのは昔から愛にあふれているから、基本的には安心できるもの。でも絵は逆に、自分は何をやってもいいわけですよ。大衆に受ける必要性もないから自由なの。

──ミュージシャンとしての藤井フミヤができないことを、アートを通じて表現している?

そうですね。アートは好き勝手やらせてもらっています。だけどアートでもやっぱりポップスというか、結局大衆性のあるものを作っているんですよ。あまり難解なものは作らない。それが自分のスタイルみたい。

──ご自宅にはどんなアート作品を飾っていますか。

いちばん大きいのはルーヴル美術館にあるモネの作品の本物に限りなく近い模写で、縦3mくらいある。あと、ベランダに東京五美術大学の卒業制作展で学生から買った大きな木のオブジェがあるんだけど、感想を書くノートに「売ってほしい」って、電話番号を書いて売ってもらった作品です。

──どんなタイミングでアートを購入しますか。

出会いだね。「買いに行くぞ!」って狙って行くよりは、なんとなく観に行ったらビビッときて買ってしまったのが多いかな。あまり統一感はないです。

──アートの買い方を教えてください。

作家で買うパターン、直感で「これいいな」と思って買うパターン。あの壁に掛けたいとか、玄関に置きたいとか考えて。あとは値段だと思うけど、自分はフィーリング重視だから、売ることを考えて買ったことは一度もないですね。買ったらすぐに倉庫行きというコレクターもたくさんいるし、目利きであれば芽が出てきたものを狙って、価格が上がって売れるときに売る人もいるけど。昨日売ったものが次の日に倍の値段で売られたりすることもあるから、今は転売されないようにギャラリーがきちんとやらないといけないような時代ですね。もちろんギャラリーでは作品を売ることも考えないといけないけど、アートに対する純粋なフィーリングは忘れたくないのかな。

※写真の展示は終了しています
※写真の展示は終了しています

Feb gallery Tokyo(フェブ ギャラリー トウキョウ)
藤井フミヤの「若いアーティストを応援したい」という想いが形になった場所。閑静な住宅街に佇む一軒家のギャラリーで、若手のほかにもさまざまな展覧会を企画中。
住所/東京都港区南青山4-8-25
TEL/03-6459-2062
https://febgallerytokyo.com

Photos:Namiko Kitaura Interview & Text:Kana Yoshioka

Profile

藤井フミヤFumiya Fujii 1983年にチェッカーズとしてデビュー、数多くのヒットを飛ばす。93年以降はソロアーティストとして活動。「TRUE LOVE」 や「Another Orion」などミリオンヒットを世に送り出す。歌手活動のほか90年代より美術作家として個展を開催している。

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