NFT×VRアーティスト せきぐちあいみインタビュー | Numero TOKYO
Art / Feature

NFT×VRアーティスト せきぐちあいみインタビュー

NFTでアートのチャンスはどう広がる? 今話題のアーティストを直撃取材!(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年6月号掲載)

──2021年3月に「OpenSea」へ出品したVR(仮想現実)アート作品が約1300万円で落札。当時は今以上に「NFTって一体何?」という状況だったと思いますが、NFTアートを始めた理由は何だったのでしょうか。

「ブロックチェーンとデジタルアートは相性がいいと何年も前からいわれていたので、可能性のある分野だなとは思っていました。デジタルがさらに私たちの一部になって、データが売り買いされる時代が絶対に来るだろうと思っていたんです。そんななか、Beepleのデジタルアート作品が約75億円で落札されたというニュースが出てきて。もう市場が整っているんだなと思い、ネットで調べて試してみたのが始まりです」

『Alternate dimension 幻想絢爛』(2021年)VRデバイスを装着して楽しむ空間作品。約1300万円で落札され、コレクタブルでないNFTアートの国内最高額を記録した。(画像提供:クリーク・アンド・リバー社)
『Alternate dimension 幻想絢爛』(2021年)VRデバイスを装着して楽しむ空間作品。約1300万円で落札され、コレクタブルでないNFTアートの国内最高額を記録した。(画像提供:クリーク・アンド・リバー社)

──高額落札された『Alternate dimension 幻想絢爛』は、どんな作品でしょうか。

「この作品は、こっそりゼロから作っていたものです。それ以前は同じVRでも、いわゆるクライアントワークが多かったんですね。一方で個人的な作品も作っていて、でもモノとしての実体がない以上、それをお金にしていく方法がなかったんです。『面白いし、可能性もあるけど、どうやって売っていくの?』ともいわれていました。私自身は焦らずにやってきましたが、こうしてNFTという新たな仕組みが出てきて、しかも好きで作っていたものが評価してもらえたのは、すごくありがたいことですね」

 『Ever Changing Phoenix』(2021年)2000年間にわたって色が変わり続けるVR鳳凰像アート作品。(画像提供:クリーク・アンド・リバー社)
『Ever Changing Phoenix』(2021年)2000年間にわたって色が変わり続けるVR鳳凰像アート作品。(画像提供:クリーク・アンド・リバー社)

──NFTアートというと「物理的な実体がないものでも販売できる市場ができた」という半面、いち早く飛びついた人たちによる投機的な面に注目が集まりがちな印象があります。

「デジタルアートは決して無価値ではないけれど、価値が付きにくかったんですよね。そもそも『デジタルデータを買う』という概念自体がありませんでした。ところがNFTによって所有している証明ができることになり、価値を生み出す仕組みが確立されたように思うんです。今後、現実で何かを買うのと同じように、デジタルデータを買う行為は加速していくだろうし、特にVRはご高齢の方こそ活用するようになると思います。同じ部屋にいながら旅行や趣味を充実させたり、人に会ったりできる。そうなると現実世界より、デジタル世界のほうが重要だという価値観に変化していくかもしれません。NFTアートも、VRやAR(拡張現実)の発展とともに広がっていくと思います」

『Crypto Zinja』(2021年)メタバース空間に神社を建立、千本鳥居に名前を刻む権利をNFTで販売した。(画像提供:クリーク・アンド・リバー社)
『Crypto Zinja』(2021年)メタバース空間に神社を建立、千本鳥居に名前を刻む権利をNFTで販売した。(画像提供:クリーク・アンド・リバー社)

──NFTという新たな仕組みの登場は、せきぐちさんご自身の表現にどのような変化をもたらしましたか。

「NFTという新しい価値が出てきて、その可能性に対して応援してくださる方もいらっしゃるんです。それによって、今までできなかったことに挑戦できる最適なフィールドでもあると感じています。例えば最近だと、メタバース空間に誰もが無料で入れる神社を創建して、境内の千本鳥居に名前を刻む権利をNFT化したり。まさに前例がない“実験”なんですよね。アーティストにしてみれば、これまではお金になるかどうか確証がなくトライしづらかったことでも、NFT化されればそれが買う人にとっても『新しい取り組みに賛同している』という証明になる。支えてくれる方のコミュニティができたりもしていますし、新しい可能性をサポートしてくださる方が出てきている印象があります。今はブロックチェーンに乗せやすいイラスト画像がメインになっている印象ですが、これからもっといろんな形が出てくると思います。私自身もどう使っていけるのか模索しているなかで、昨年だと福島県南相馬市でライブペイントしたVR作品を、その場で生配信のオークションに出品して、その売り上げをチャリティに活用してみました。NFTをもっと広く人のために使える事例をつくっていきたいなと思っていますね」

Interview & Text : Naniwa Akane Edit : Keita Fukasawa

Profile

せきぐちあいみAimi Sekiguchi VRアーティスト。クリーク・アンド・リバー社所属。VRアーティストとして多種多様な作品を制作しながら、国内外でVRパフォーマンスを行う。2021年に作品がオークションにて約1300万円で落札されて話題を呼び、「Forbes JAPAN」の今年の顔100人にも選出された。(写真提供:クリーク・アンド・リバー社)

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