女性写真家のまなざしと、その先にあるもの 【3】𠮷田多麻希
社会が抱える問題や女性の身体、生きづらさなど、さまざまな主題で写真と向き合う日本人女性写真家たち。今年開催10年目を迎える国際的な写真フェスティバル「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2022」にて「10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭」supported by KERING’S WOMEN IN MOTIONとして、活躍が期待される日本人の女性写真家10人の作品を展示する。ここでは4人のアーティストをインタビューとともにご紹介。第3回は、𠮷田多麻希。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年5月号掲載)
𠮷田多麻希|Tamaki Yoshida
人と動物の共存を問いかける
──『Negative Ecology』シリーズとは、どのような作品なのでしょうか。
「もともと環境破壊を含め、動物に対して人間たちがどういう態度で接するべきなのかに興味がありました『Negative Ecology』は化学物質が混ざった生活排水を使ってフィルムを現像していて、汚染されてダメージを受けているかもしれない野生生物や自然を表すメタファーでもあります。でも『環境を守りましょう』とか『化学薬品はダメ』と言いたいわけではありません。私たちだって自分の身の回りをきれいにして生きたいし、便利なものに助けられてもいる。逆に野生動物たちにとっても、例えば道路に撒く雪の凍結剤から必要なミネラルを摂取するなど、利用しているものも多い。本シリーズでは人間と動物がお互いに良好な共存の形を探っていきたいという思いを込めています」
──本作は昨年度のKG+SELECT(本祭のサテライトプログラム)でも発表され、アワードを受賞されました。2年目の発表となりますが、展示空間に変化はあるのでしょうか。
「本シリーズは『水の循環』をテーマにした作品でもあるんです。水は、私たちが暮らしている生活圏を潤し、雨や雪となって森や川、海へと降り注ぎ、気化したり地下水となって……。つまり地球では常に同じ量の水が回っているんですよね。前回は鑑賞者が森の生態系の中に入っていくイメージで空間設計を試みたんですが、今回は動物の生息域と人間の生活する都市部とのつながりを、もう一歩広い視点で見られるような空間にしたいと思っています」
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2022
京都で開催される国際的な写真祭 「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2022」。国内外作家の貴重な写真作品や写真コレクションを京都市内各所の歴史的建造物や近現代建築の空間に展示。記念すべき第10回目のテーマは「ONE」。
会期/2022年4月9日(土)〜5月8日(日)
場所/京都市内11ヵ所
「10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭」supported by KERING’S WOMEN IN MOTION
会場/HOSOO GALLERY
www.kyotographie.jp
Interview & Text : Akane Naniwa Edit : Michie Mito