ブレイク間違いなしのいち押しアーティストたち【2】Lotta
米原康正が太鼓判を押す7人のアーティストにインタビュー。 いま最も勢いのある彼女たちの作品とともにそこに込めた想いや、これからの展望について聞いた。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』3月号掲載)
「ソックスちゃんを見せてもらったとき、これはどう考えてもみんなが好きだし、僕自身も絶対欲しいなと思った。アートはお家に飾ったときにどう思うかっていう部分もあるけど、圧倒的にお部屋に飾ってかわいいよね」by 米原康正
コロナ禍直前に、絵一本で生きていこうと思った
夢を叶えたゴーストキャット
──絵を描き始めたきっかけは?
「幼い頃から絵が好きで、ずっと描いていました。おじいちゃんが画家だったので、絵の具やペンキに触れる機会が多くて。2、3歳ごろから絵の具を触り始めていたと思います。アーティストとして、絵を作品として描くようになったのはつい最近です。キャンバスにアクリルで描き始めたのも一昨年から。それまでは水彩画でした」
──作品に登場するモチーフについて教えてください。
「黒猫のキャラクターがいて『ソックス』という名前です。自分だけのオリジナルのキャラクターを一つは持っていたいと思っていて、そのために落書き程度でしたが、ずっと描いてました。あるとき、猫の形をしたお化けのキャラクターがぱっと出てきたんです。一目見た瞬間に『これ、かわいいな』と。この子を主軸としていろんな世界観を表現できたらと」
──米原さんと出会ったのは?
「米さんは、1年半前ぐらいにインスタグラムでフォローしてくださって。私もお名前はもちろん知っていたので『おっ、米さんだ』と。その後、水彩画スタイルのときに連絡がありましたが、展示するには至らず。作品の数も、『この絵を売るんだ、広めるんだ』というモチベーションもそこまでなかった。それでどうしようかと考え始め、キャラクターを作って、若い子たちでも親しみやすいような、ポップな印象に仕上げたらどうかなと、そしてアクリル画に変えました。」
──水彩画からアクリル画への転向は大きな変化でしたね。
「アクリルを触るのは初めてだったので、参考書とかYouTubeで調べて、学びながら描きました。光の表現の仕方も真反対なんですよ。水彩は色をのせないのが明るさになりますが、アクリルは逆で、明るい絵の具で描いていく。光を描き足していけるのはすごく面白かったです」
──独学で挑まれたのですね! そしてソックスが生まれ、2020年11月に「Socks the Ghost Cat展」開催へ。
「米さんからは『今の絵、めっちゃよくない?』みたいな感じで連絡があり、『私もそう思います!』と(笑)。両者が合点したところで、じゃあ一緒に展示をやろうとなりました」
──そうして21年7月に個展「DREAM COME TRUE」が実現したのですね。この作品には、どんな思いが込められていたのでしょうか。
「『夢、叶う』というタイトルで、画家として生活していくという、私の一つの大きな目標が達成できつつある瞬間の喜び、うれしさ、そういうことを表現したかったです。絵の中の女の子は私自身をモチーフに作ったキャラクター。だから太眉も目の下のほくろも腕のタトゥーも全部、私と一緒。月があって、ソックスとお化けになった私が一緒に漂っているような感じです」
みんなに伝えたいのは、安心感
──いつから画家になりたいと思っていましたか。
「小さな頃から一つの夢があったわけではなくて、そのときそのときで、好きなことをやっていけたらと思ってました。ファッションの勉強をしてアパレルの仕事に就きましたし、建築も好きで、インテリアデザインの学校にも行きました。そしてバイト生活を送りながら、合間に絵も描いて。仕事をやめて絵一本で生きていこうと思ったのは、コロナ禍に入るホント直前です」
──幼い頃、お絵描き以外に熱中したことはありますか。
「実は絵より音楽が好きでした。しかも単に好きではなく、“変態っぽい好き”で……。ランドセル横のキーホルダーを、歩いたときに好きな音が鳴るように、長さや重さを変えてカスタマイズしてましたね(笑)」
──制作するときも音楽を?
「絶対に何かしらは聞いてます。『DREAMS COME TRUE』のときはハッピーなテンションでいたかったので、ディスコっぽい曲だったり、ソウルとか温かみのある音楽を聴いて。あとはヒップホップ系とか。」
──「Lotta」という名前の由来は?
「高校生のときに『Lotta Love』という古いディスコっぽい曲がすごく好きで、ニックネームにしていたんです。それをアーティストネームに」
──海外での展示も決まっている22年ですが、さらなる夢、伝えたいことは?
「一つの作品にじっくり、のめり込んでいく時間をつくっていきたいと思っています。そして、みんなに伝えたいと思うのは安心感だったり、癒やしですね」
──作品のタイトルからも思いが伝わってきます。言葉も大事にされていますよね。
「言葉もめちゃくちゃ好きです。小さな頃から物語をずっと書いていて。ソックスに関しても、まだ皆さんに伝えきれていないような物語や裏側のイメージもあるので、どんどん表現していけたらと思っています」
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Interview & Text:Hiromi Mikuni
Profile
Instagram:@l_otta_work