【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.14 日本が目指すべき社会のイメージとは | Numero TOKYO
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【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.14 日本が目指すべき社会のイメージとは

Sumally Founder & CEOの山本憲資による連載「ニュースから知る、世界の仕組み」。アートや音楽、食への造詣が深い彼ならではの視点で、ニュースの裏側を解説します。

あけましておめでとうございます。2022年はどんな年になるのでしょうか。年越ししてからすぐの『朝まで生テレビ』や、新聞のこの1年を見通す、といった記事を読んでいても、特にマクロ経済の視点からは正直明るい気分には全くなりませんでした。その中でも特に印象に残った、1月3日付けの日経新聞に載っていた衝撃的なグラフについて新年一回目は書きます。

vol.14 日本が目指すべき社会のイメージとは

「心の資本」は十分ですか さらばテイラーシステム(日経電子版)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL066RJ0W1A201C2000000/

この記事の中に、ギャラップ社が昨年調査したという上記のデータのグラフが掲載されているのですが、日本は「仕事への熱意の強さ」「生活満足度」ともに、ここに載っている国の中では最下位でした。グラフのタイトルについている仕事の熱意が強いと生活満足度が高くなるという相関があるのかどうかは記事からはいまいちよくわかりませんでしたが、どちらの項目も他国に比べて相対的に非常に低い、というのは紛れもない事実なのでしょう。

仕事に熱意がある人は5%しか存在せず、生活に満足できている人は20%。僕個人としては仕事には(※グラフが示しているのは個人の熱意の%ではないですが)120%以上の熱意がありますし、生活にもそれなりに満足しています。

日本はいつのまに、なぜこうなってしまったのでしょうか。終身雇用を維持し、その維持がためにも平成の30年には非正規が増加していったという今の雇用システムの成れのはてがこの数字だとするとあまりにも虚しい話です。

そういう世相を反映してなのか、脱資本主義・脱成長を唱える経済思想家の斎藤幸平氏のような学者に注目が集まったり、政治家の公約の中でも分配に重きが置かれているのと、あとSDGsも2022年も大きく取り扱われるひとつのテーマで、脱資本主義・脱成長の主張とも強くリンクしています。

脱資本主義というキーワードはキャッチーですが、提言としては弱く、そのキーワードだけだと、資本主義というシステムに対するただのイチャモンでしかありません。

経済学者の成田悠輔氏も「ネオ江戸時代」へと日本がなっていくと何かでコメントしていましたが、斎藤氏の主張の先に、資本主義をやめて鎖国をしていた江戸時代のような生活スタイルにシフトしていくべきだ、といった内容がもしあれば国家の向かう先をまだ想像できます。実際、斎藤氏は脱資本主義の一貫で排ガスをたくさん出す飛行機を移動に使わないそうですが、国家全体でそういうシフトをすることが現実的なのかどうかを考えると、僕にはいまのところそうは思えませんし、目指すべき社会のイメージなしにただ脱成長と唱えることにはあまり共感できません。

ただ、環境や人権への意識を持たずに収益をあげることを最優先する時代はとっくに終わった、という認識は僕も強く持っていますし、そして同時にSDGsに力をいれることが資本主義に反することだとは思いません。

資本主義という経済システム自体、ある意味一種のスポーツみたいなもので、社会が成熟するとルールが厳しく整備されていくというのは至極当然の流れです。同時にその余裕こそが社会が豊かになるということでもあります。そして、そのルール改正の対象範囲が広ければ広いほど、その機会はむしろ成長へのチャンスと捉えるべきです。

ルールをハックできるテクノロジーを開発できれば、新たなルールが適用される対象が広いほど提供先が増えます。その先にある社会のイメージとともに、国家と企業も共闘して日本が戦えそうな分野において未来の世界スタンダードを作るというステイトメントともに投資をしていかねかればなりません。ある意味、フクシマもそのひとつのチャンスだったとも言えますが、残念ながらピンチをチャンスに変えられた、という機会には今の所なっていません。

日本が失ってしまったのは、社会が向かう先のイメージなのだと思います。高度経済成長時代には、来たるべき未来の豊かさが国家・国民感で共有されていて、それを一丸となって目指していました。今我々が目指すべきものは、エコにやたらめったら強い国家なのか、老人との共生がとにかく最適化された社会なのか、はたまた内需を内製でまかない国家をまわしていく江戸時代スタイルの先駆者なのか。その目指すべきものがどういうものなのかは、若い世代も含めてもっと議論をすべきです。

そのイメージさえうまくまとまれば、チャレンジができます。その上で失敗してしまうのは、しょうがないでしょう。このまま没落していくより遥かにマシです。チャレンジこそ成長の源泉であり、資本主義はポテンシャルのある挑戦に優しいのですよね。チャンスは日本にもまだあるはずだと僕は思っています。2022年は、挑戦の年に。

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Text:Kensuke Yamamoto Edit:Chiho Inoue

Profile

山本憲資Kensuke Yamamoto 1981年、兵庫県神戸市出身。電通に入社。コンデナスト・ジャパン社に転職しGQ JAPANの編集者として活躍。その後、独立して「サマリー」を設立。スマホ収納サービス「サマリーポケット」が好評。

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