インディペンデント出版社発、通いたくなる小さな本屋 | Numero TOKYO
Culture / Feature

インディペンデント出版社発、通いたくなる小さな本屋

K文学の聖地だったり、フェミニズム作品の学びの場だったり、本好きの拠り所だったり。気の合う友人の本棚を想起させる、小さな本屋の主は独立系出版社だった。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2021年5月号掲載)

Photo:Kiyoko Eto
Photo:Kiyoko Eto

1.CHEKCCORI(チェッコリ) ~韓国の本とちょっとしたカフェ

韓国の“現在進行形”がわかる専門書店

韓国文学や関連書籍の翻訳本を数多く出版している「クオン」の金承福さんが出版社の一角に“読者と会える場所”として2015年にオープン。木製の什器が並ぶ温かな雰囲気の店内には韓国語の原書約4,000冊に加え、日本語に訳された韓国関連本約500冊が揃う。

そのラインナップは文学作品だけでなく、絵本や漫画、詩集、美術や建築、実用書に至るまでかなり幅広い。ユニークなのは曜日ごとに店長が変わること。店長それぞれに詳しいジャンルがあり、彼女たちの視点で選ばれた本がほぼ毎週韓国から入荷。現地で注目されている本とタイムリーに出合うことができる。

コロナ禍によって、それまで年間100本ほど行っていた店内でのイベントは開催が難しくなってしまったが、オンラインに移行したことで東京近郊の人だけなく、全国各地、韓国在住のゲストも気軽に参加できるようになった。

日本と韓国を行き来することはまだまだハードルが高い今だからこそ、イベントを通じて韓国や韓国文化をより身近に感じられるよう、今後もさまざまな試みを展開していく予定だ。

住所/東京都千代田区神田神保町1-7-3 三光堂ビル3F
営業時間/火~金12:00~20:00、土11:00~19:00
定休日/日、月
TEL/03-5244-5425
URL/www.chekccori.tokyo

2.エトセトラブックスBOOKSHOP

女性たちの声を届ける場所

身近なフェミニズムの問題を特集し、共感を呼んでいる専門誌『エトセトラ』をはじめ、フェミニズムに関するさまざまな本を出版する「エトセトラブックス」が2021年1月に開いた小さな本屋。場所は新代田駅から歩いて約1分。

女性一人でも安心してアクセスしやすい立地を選んだと言うのは、出版社代表の松尾亜紀子さんだ。棚に並んでいるのは国内外のフェミニズムにまつわる本約2,000冊。専門書だけでなく、小説、エッセイ、コミックや絵本など幅広く、また古書や希少本も取り揃え、多様なフェミニズムのあり方を提示する。

一面ガラス張りの店内には自然光が入り、明るい雰囲気。オンラインショップで販売されているトートバッグやTシャツなどオリジナルグッズも購入が可能。店長の寺島さやかさんは人気のトークイベントを多数開催している本屋「B&B」のスタッフでもある。

今後は『エトセトラ』発刊に連動した配信イベントや、読書会の開催なども予定している。フェミニズムを知り、学ぶ場所、また、女性たちの声をつなぐ場所を目指す。

住所/東京都世田谷区代田4-10-18 ダイタビル1F
営業時間/木~土12:00~20:00
定休日/日~水 
URL/etcbooks.co.jp/bookshop

3.本のあるところ ajiro

珠玉の言葉に出合える福岡のブックカフェ

九州最大の繁華街である天神駅から徒歩5分の場所に位置する本屋。その母体は、詩歌や海外文学を重点的に刊行している出版社「書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)」だ。

自社出版の本だけでなく、他の版元で出版されている詩歌や海外文学などを幅広く紹介する“アンテナショップ”を目指して、一般書店では手に入りにくい同人誌やZINEも積極的に仕入れているほか、なかなか目にすることのない世界各地の文学に触れてほしいという思いから、英語以外の翻訳文芸書も重点的に揃えている。他の本屋では見つけにくい本を目指して全国から足を運ぶファンも多い。

店名は、一般的な無線綴じに比べて強度があり、バラバラになりにくく長持ちする製本方法「あじろ綴じ」に由来して、店が末長く続いていくよう願いを込めて名付けた。

店内で提供されるコーヒーは福岡のコーヒー豆専門店「焙煎屋」のオリジナルブレンド。オーダーを受けてから豆を挽き、ハンドドリップで抽出した一杯は酸味が少なく、ほろ苦い味わい。街の喧騒から離れて、本とコーヒーの静謐な時間を楽しんでみては。

住所/福岡県福岡市中央区天神3-6-8 天神ミツヤマビル1B
TEL/080-7346-8139
営業時間/水~日12:00~19:00
定休日/月、火、不定休 
URL/www.kankanbou.com/ajirobooks

Text:Mariko Uramoto Edit:Chiho Inoue, Mariko Kimbara

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