Culture / Feature

あなたはどれから読む? いま話題のK文学入門書

文芸、詩、エッセイ、ミステリー、それともSF? まずは、気になるジャンルに手を伸ばして、K文学のビッグウェーブに乗ってみよう。

エッセイ
『きょうの肴なに食べよう?』

著者/クォン・ヨソン
訳者/丁海玉
本体価格/¥1,650(税込)
出版社/KADOKAWA

酒が登場しない作品を書こうとすれば「母国語を失った作家の心情を思い知らされるよう」な体験をするほど、作風と酒が切り離せない関係にあるクォン・ヨソン。彼女がソジュ(韓国焼酎)とともに食してきた四季の肴を切り口に、味覚の中に潜むさまざまな出来事を綴った初エッセイ集。作家の舌は「どんなふうに食べて生きてきたか知る履歴書」と作中で語るように、母とのほろ苦い過去にも触れる本書は、著者の奥深い生きざまをも描き出す。


『死の自叙伝』

著者/金惠順
訳者/吉川凪
本体価格/¥2,420(税込)
出版社/クオン

“詩壇のノーベル賞”といわれるグリフィン詩賞をアジア人女性として初めて受賞した詩集『死の自叙伝』の49編と、長詩「リズムの顔」を収録した本書。あとがきで「無念な死がこれほど多い国で書く詩は、先に死んだ人たちの声になるしかないではないか」と綴られているように、権力による暴力や怠慢がもたらした死に捧げられた詩は容赦なく力強い重さを放つ。“ことばで訴える”とは本来どういうことかを、この詩集で痛感してみてほしい。

文芸
『仕事の喜びと哀しみ』

著者/チャン・リュジン
訳者/牧野美加
本体価格/¥1,980(税込)
出版社/クオン

板橋(パンギョ)テクノバレーでの勤務経験を持つ著者が描く“仕事”をテーマとした短編集。過酷な受験戦争を勝ち抜き、大企業に就職すれば得られるといわれていた理想の人生像と、現実におけるギャップを生々しくもユーモラスに描いた物語は、著者と同じミレニアル世代のみならず、就職氷河期を体験した世代も共感するところが大きいはずだ。特に爽やかな余韻を残す「タンペレ空港」は、せわしない日々を送る読者にぜひおすすめしたい。

SF
『わたしたちが光の速さで進めないなら』

著者/キム・チョヨプ
訳者/カン・バンファ、ユン・ジヨン
本体価格/¥1,980(税込)
出版社/早川書房

韓国の書店による「今年の作家」にも選出された新世代作家のデビュー作にしてベストセラーでもあるSF短編集。認知科学や宇宙開発などにおける未来を描いた7編は、私たちが“正常”だと捉えている物事の基準がいかに曖昧で一方的なものかを突きつける。地球外知的生命体と接触した祖母の物語を描いた「スペクトラム」は『はちどり』のキム・ボラ監督による映画化が決定済み。世界的なキム・チョヨプ旋風が起きる前に、ぜひ一読を。

ミステリー
『種の起源』

著者/チョン・ユジョン
訳者/カン・バンファ
本体価格/¥1,760(税込)
出版社/早川書房

韓国におけるエンタメ小説の先駆者の一人であり、人間の心に潜む“悪”を描き続けるチョン・ユジョンの第5長編。持病による発作で記憶障害が起きる主人公が血まみれの状態で目覚め、母の死体を発見する場面から始まる3日間を描いた物語は、家族関係のひずみが生む問題を浮き彫りにするミステリーであると同時に、悪意の源を探求する哲学的な側面も持ち合わせている。倫理観を揺さぶる、韓国文芸のレベルの高さを実感できる一冊。

SF
『となりのヨンヒさん』

著者/チョン・ソヨン
訳者/吉川凪
本体価格/¥1,980
出版社/集英社

2017年に韓国SF作家連帯を設立し、初代代表を務めたチョン・ソヨンによる短編集。宇宙からやって来た隣人との風変わりな交流を描いた表題作をはじめ、少数派であるがゆえに社会からはじき出されてしまった人々に寄り添う物語は、優しさと温もりに満ちている。SF作品だからといって変に身構えず、近年身近になりつつある異なる文化や価値観を持つ人たちとの相互理解などをテーマとした“すこしふしぎ”な物語として触れてみて。

【手前上から時計回りに】キム・ウォニョン『실격당한 자들을 위한 변론(失格の烙印をされた者たちのための弁論)』(未訳) キム エラン『走れ、オヤジ殿』古川 綾子/訳(晶文社) 【左奥上から】イ・ラン『アヒル命名会議』斎藤真理子/訳(河出書房新社) ハン・ガン『ギリシャ語の時間』斎藤真理子/訳(晶文社) チェ・ウニョン『ショウコの微笑』牧野美加、横本麻矢、小林由紀/共訳 吉川凪/監修(クオン) 【右奥上から】ミン・ジン・リー『パチンコ』(グランド・セントラル・パブリッシング) 『地球にステイ! 多国籍アンソロジー詩集』四元康祐/編(クオン) キム・チョヨプ、キム・ウォニョン『사이보그가 되다(サイボーグになる)』사계절 ハン・ガン『菜食主義者』きむ ふな/訳(クオン)
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Text:Miki Hayashi Photo:Kiyoko Eto Edit:Chiho Inoue, Mariko Kimbara

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