この名前を知っていたら100倍楽しめる! プロデューサーで聴く、大人のためのK-POP入門(3) | Numero TOKYO
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この名前を知っていたら100倍楽しめる! プロデューサーで聴く、大人のためのK-POP入門(3)

IZ*ONE ©OFF THE RECORD
IZ*ONE ©OFF THE RECORD

韓国でミュージシャンとして活躍し、現在は、ラジオパーソナリティやK-POPの日本語ボーカルディレクションなどを手がける、NICE73(ナイスナナサン)をナビゲーターに迎えた「大人のためのK-POP入門」第3回は、良質な楽曲を次々と生み出すプロデューサーに注目します。この名前を覚えたら、K-POPがもっと楽しくなるはずです。

今特集にて、大人のためのK-POP沼へのガイド役を引き受けてくれたNICE73(ナイスナナサン)。
今特集にて、大人のためのK-POP沼へのガイド役を引き受けてくれたNICE73(ナイスナナサン)。

「SHINee」が転換点? 韓国のポップスが「K-POP」になった理由

SHINeeのデビュー曲「Replay」(2008年)。

現在、韓国のポップスは「K-POP」と呼ばれ、ひとつのジャンルのようになっていますが、現在の流れは「SHINee」がデビューする2008年前後から始まりました。彼らが所属する「SMエンターテインメント」が次々と北欧の作家たちの曲を採用し、世界的なDJと組んで、世界市場で戦える楽曲を制作し始めました。その頃、私も韓国に滞在していたのですが、「SHINee」「f(x)」「BIGBANG」が面白い楽曲を発表する一方で、洋楽の影響が強すぎてオリジナリティがない楽曲も多かった印象です。しかし、徐々にリスナーの耳も肥え、オリジナリティを求める声が高まり、現在、活躍する30代前半の作家たちの、ひとつ上の世代あたりから、世界に通じる「K-POP」が形作られてきた私は感じています。

ラップのスキルも高い! アイドルとK-HIPHOPシーンとの関係とは

また、K-POPはヒップホップとの影響が強いと言われていますが、韓国では長年バラードの人気が強く、ヒップホップがその座に取って代わったのはここ数年です。ヒップホップサバイバル番組『SHOW ME THE MONEY』(※1)『高等ラッパー』(※2)の人気で、お茶の間にもヒップホップが浸透しました。

2020年に大ヒットしたZICOの「Any song」(アムノレ)。

アイドルとヒップホップに関しては、「2PM」のメンバーだったパク・ジェボム(※3)や「Block B」のZICO(ジコ)(※4)の存在が欠かせません。芸能界で活躍していた彼らが「アイドル音楽のおまけのラップ」ではなく、ヒップホップシーンでも通用する実力を見せてくれたことで、アイドルとヒップホップの距離が一気に近づきました。現在は、「SMTM」や「高等ラッパー」に挑戦するアイドルも増え、逆にアンダーグラウンドで活躍してたミュージシャンがアイドルをプロデュースしたりと、音楽好きも唸るアイドルの楽曲が次々と誕生しています。こんな韓国音楽シーンの背景を踏まえて、今、注目したいプロデューサーをご紹介します。

K-POPの今の音を作る、若手プロデューサーたち

MonoTree

代表のファン・ヒョンを中心に、プロデューサーや作曲家などが10人以上所属する「MonoTree」(※5)。代表のファン・ヒョンは芸術家肌で、コード進行もクラシカルで難しい曲が多いため、彼が手がけた初期「LOONA」のように、音楽ファンの間で話題になっても、韓国国内で毎回、大ヒットするというわけではありませんでした。しかし、現在、彼らがプロデュースする「ONF」の最新1stフルアルバム『ONF: May Name』が大ヒット中なので、ついに結果が伴った「MonoTree」がこれからどこまで行くのか注目です。

e.one

元々はチェ・ヒョンジュンを含めた2組のユニットだったのですが、現在は、チョン・ホヒョン(※6)がこの名義で活動しています。彼の特徴は、美しいコード進行とストリングスの使い方。「MonoTree」のファン・ヒョンよりもファンキーなイメージで、J-POP好きにも愛されるテイストがあります。彼は特にガールズグループのプロデュースワークが素晴らしく、4月にプロジェクト終了が発表された「IZ*ONE」や、「APRIL」「TWICE」「KARA」「WJSN(Cosmic Girl)」など数多くのグループの楽曲をプロデュースしています。

B.O.

ヒップホップのアーティストとして自身の作品も発表しているB.O.(※7)は、アイドルの楽曲制作も手がけています。彼の名前が入っていると確実にいい曲に当たる、K-POPの「今」の音を作る作家の一人です。

153 / Joombas Music Group

作家を多く抱えるクリエーターズ・レーベル「153 / Joombas Music Group」(※8)。スクールも運営していたり、海外の作家とも提携しています。「EXO」「NCT」「少女時代」のテヨンなどのSMエンターテインメントのアーティストや、「A.C.E」、昨年デビューして評価も高い「MCND」「THE BOYZ」「JBJ95」「OH MY GIRL」の楽曲などを手がけています。ここの所属作家の曲はいろんなところで見かけるのですが、どれも確実にいい曲です。所属する作家の数が多いので、ここから無限に名曲が輩出されるのではないかと思います。

次回は、アイドル以外も良曲の宝庫! 大人のためのチルなR&B / HIP HOPをご紹介します。

【注釈】

(※1)『SHOW ME THE MONEY』……「SMTM」や「ショミド」と呼ばれる、「Mnet」のヒップホップサバイバル番組。審査員には、Dynamic DuoやSwingsなど韓国のヒップホップ界を代表するアーティストが登場する。2012年にスタートし、現在はシーズン9まで放映された。「iKON」のバビがシーズン3で優勝したり、シーズン4では「WINNER」のミノが準優勝、「VIXX」のラビ、「SEVENTEEN」のバーノン、シーズン9では「Stray Kids」のチャンビン、「PENTAGON」のウソクが参加した。

(※2)『高等ラッパー』……「Mnet」で放映されている、高校生ラッパーによるヒップホップサバイバル番組。「NCT」のマーク、「THE BOYZ」のソヌ、「SF9」フィヨン、「MCND」ウィンなどがひとりの高校生として参加している。

(※3)パク・ジェボム……アメリカ・シアトル出身。2008年に「2PM」としてデビュー。2010年に脱退し、ソロで活動を開始。2013年にAOMGを設立。2017年、アジア人として初めてジェイZのレーベル「ロック・ネイション」と契約。同年、「H1GHR MUSIC」を立ち上げる。

(※4)ZICO(ジコ)……ソウル生まれ。日本、カナダ、中国の留学経験がある。2011年「Block B」としてデビュー。ソロとしても作品を発表。2018年契約が終了し、2019年「KOZ Entertainment」を設立。2020年「Big Hitエンターテインメント」の傘下に。現在、兵役履行中。

(※5)MonoTree……KARAをプロデュースする「Sweetune」に所属していた、ファン・ヒョン、ユ・ジサン、イ・ジュヒョンの3人を中心に設立された作曲家集団。現在10人以上の作家が在籍している。彼らのディスコグラフィーはこちら。また、この連載の第1回目で紹介した「ONF」の「Beautiful Beautiful」の制作裏話は、こちらのMonoTreeオフィシャルYouTubeにアップされているので、深く知りたい方はこちらをチェック!(英語字幕あり)

(※6)E.ONE / チョン・ホヒョン……ディスコグラフィーはこちら

(※7)B.O.……ディスコグラフィーはこちら

(※8)153/Joombas Music Group……ディスコグラフィーはこちら。プロデューサー・シンガーソングライターののシン・ヒョクが設立。数多くの作家が所属しており、例えば、「NCT U」の「My Everything」を手がけたPark Jissoは、「NIve」としてシンガーとしても活躍しており、BTSの「Blue & Grey」の制作にも参加。

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Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Chiho Inoue

Profile

ナイスナナサンNICE73 中学生の頃より父の勧めで韓国語の勉強を始める。15歳の時から「2002年W杯自主応援歌」歌手として活動を始め、全国のサッカー競技場などを歌って回る。2005年、韓国での日本人の歌手デビューが珍しい中、ソロ歌手として韓国デビューを果たす。帰国後は、K-POPグループの日本語の訳詞、日本オリジナル楽曲の作詞、作曲、レコーディングボーカルディレクションなど、制作にも携わる。近年、韓国関連の各種イベントでMCや、テレビナレーション、ラジオ担当。現在、InterFM『casaricoto radio』(毎週日曜21:00〜21:30)パーソナリティ。「三々五々に、問う」名義でアーティストとしての作品制作ライブ活動を再開させ、活躍の場を広げている。YouTubeチャンネル『NICE73deSHOW』では、K-POPの歌い方講座や、カムバック情報も動画も配信中。

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