動きはじめた「キンプトン新宿東京」の魅力を探りにLAの2つのプロパティへ
2020年10月にオープンした「キンプトン新宿東京」。マニュアルのないパーソナルなサービス、デザインに満ちた空間を特徴とする、ラグジュアリーなライフスタイルホテルのブランド「キンプトン」。その真価を体験するため、日本でのオープン前の2020年2月、LAの2つのキンプトンをたずねました。
「キンプトンホテルズ&レストランツ」(以下、キンプトン)は、創業者ビル・キンプトンによって1981年、サンフランシスコに誕生しました。とんでもなくパーソナルなサービスであることを大切にし、ホテルブランド名に“レストランツ”が入るように、地域に愛されるレストランがあることも、コンセプトのひとつ。そんなゲストとの距離が近い、“ブティックホテル”のコンセプトをアメリカで初めて導入した業界のパイオニア的存在です。 デザインやアートにも、重きを置いています。アートクリエイティブ・ディレクターが統括はするものの、プロパティごとに街にあわせて名称も、ロゴも異なります。ロゴにいたっては、フォントやカラースキームも変えています。たとえば、キンプトン新宿東京はブルー、クリーム、ゴールド、ブラックが基調です。
そして、キンプトンといえば、ラグジュアリーホテルとしては業界初のペットフレンドリーであること、全室にヨガマットを設置するなどウェルネスコンシャスであることなども特徴的。そして多くのリピーターが楽しみにしているのが、ゲスト・スタッフ同士が交流する“イブニングソーシャルアワー”。
2020年10月に開業した「キンプトン新宿東京」にも導入されている、これらのサービス。本場ではどんなふうに根付いているのでしょうか? そのあたりを2020年2月、チェックしてきました。
Kimpton La Peer Hotel
ウエストハリウッドの街に溶け込んだ
「キンプトン ラ ピア ホテル」
ファッションとアートが花盛りのウエストハリウッドのデザイン地区では初のホテルとして開業した「キンプトン ラ ピア ホテル(Kimpton La Peer Hotel)」。サンタモニカ・ブルバードとメルローズ・アベニューに挟まれたブロックに位置しています。
モザイク模様が規則的に並ぶファサードは、どことなくムーア文化を感じさせつつ、モダンな印象。アートに溢れた街に溶け込み、一見、ホテルに見えないかもしれません。
エントランスを抜け、館内に一歩入ると、どこかの邸宅のリビングに招かれたよう。アート作品が大胆に飾られつつも、落ち着いたトーンでまとめられています。「キンプトン ラ ピア ホテル」ではロビーエリアを“リビングルーム”と呼び、まさにくつろぎの場となっています。キンプトンが目指す“気取らないラグジュアリー”が、館内に入った瞬間から肌で感じられるのです。
館内のアート作品の多くが、オーストラリア出身、LAで活躍するジェームス・ピーター・ヘンリーさんの作品。彼の作品はキュビズム的要素と、アフリカやオーストラリアのアボリジニに見るプリミティブさが融合されたもの。実は彼、かつてキンプトンのウェイターだったことも⁉
ちなみにプールサイドの壁、「絵を描くの、手伝ってみる?」のジェームスさんの言葉に甘え、ちょっとだけ加筆させていただきました。そんな柔軟なスタイルも、キンプトンならではかも。
客室はスイートを含め全105室。各部屋にはアートワークがエレガントなアクセントを加え、カスタムメイドの家具やベージュやグレーなど、ニュートラルなトーンがくつろいだ雰囲気を出しています。バスアメニティはアトリエ・ブルーム(マリン&ゴッツがキンプトンのために開発)。そして、全室にヨガマットが置かれています。
「キンプトン新宿東京」でも好評の、“Forgot It? We’ve got it!”という、うっかり忘れてしまったアイテムをお部屋まで届けてくれるサービスはここでも。土地柄にあわせて、サロンフィニッシュのドライヤーなど美意識をくすぐるラインナップです。
メインダイニングのトラットリア「ヴィアレ・デイ・ロマーニ」は、カウンターやテーブル席、屋内外のパティオなど、その時の気分によって席を選べます。ウエストハリウッドを行き交うおしゃれな人々ウォッチングするなら窓際のテーブル席、プライベート感を味わうならパティオのプールサイドへ、といった具合。
サーブするのは、イタリアをベースに南フランスや北アフリカのテイストを取り入れたシーフードを中心としたメニューです。薪で焼きあげた魚介や鮮魚のクルード、そして脇を締める自家製パンやペーストリーも絶品です。
また、個性的なイベントやプログラムを開催しているのも、キンプトンの特徴。自転車をレンタルして、ウエストハリウッド界隈を回るもよし、ヨガや瞑想で心とカラダを整えるもよし。3カ月ごとにタロットカードや手相、チャクラヒーリングなど、占いやヒーリングのセッションも開催。ゲストは無料で体験できます。
アートに溢れ、気取らない雰囲気ながら、“ラグジュアリーなライフスタイルホテル”と呼ばれるキンプトン。ラグジュアリーとは“触れるもの”であり、“空気感”や“体験できるもの”がライフスタイル、とのこと。上質なものに囲まれながら、くつろいだ空気感を楽しみ、記憶に残る体験と出会えるのが、このホテルの魅力ではないでしょうか?
イブニングソーシャルアワーで支配人のニックさんと遭遇
夕暮れになると、“リビングルーム”という名のロビーラウンジの一画に、バーコーナーが出現。赤・白・ロゼのワインがゲストにフリーでふるまわれます。屋内のソファでリラックスするもいいし、プールサイドへ移動してビーチベッドに腰掛けつつ語らうもいいし。
そこへダックスフンドの愛犬を抱えた総支配人のニックさんが登場。愛犬と一緒にあちこちのゲストの輪に加わり、場をなごませていきます。隣のテーブルでは、別々のグループだったはずなのに、いつの間にか、イスを寄せ合って会話がはずんでいるもよう。
ニックさんは私たちのテーブルにもやってきて、「今日はどうでした?」。ウエストハリウッドでのおすすめのショップの話題、セレブもやってくるニックさんの行きつけのジムについて、パパラッチがひそんでいるセレブ御用達のバーなど、セレブ密集エリアならではのお話に興味津々。すると、ニックさんが近隣のおすすめスポットを案内してくれることに!
キンプトン ラ ピア ホテル ウエストハリウッド
Kimpton La Peer Hotel West Hollywood
住所/627 N. La Peer Drive, West Hollywood CA 90069
TEL/+1-213-296-3038
日本での問い合わせ先/0120 056 658(IHG・ANA・ホテルズ予約センター)
URL/www.lapeerhotel.com
総支配人ニックさんが案内するウエストハリウッド
「キンプトン ラ ピア」はメルローズ・アベニューのすぐそば。この界隈には話題のレストランや、斬新なディスプレイの人気セレクトショップがひしめきあっています。
ニックさんのお気に入りのショップも、メルローズ・アベニューとロバートソン・ブルバードに点在。どれもホテルから1~2ブロック圏内、歩いて行ける距離です。
Vol.1 マックスフィールド
ハイブランドのエクスクルーシブなアイテムが並ぶ、世界的に有名なセレクトショップ。LA店ではシャネルやロレックスのヴィンテージも揃えているが特徴。コンクリートの多角形の建物とガラス張りの建物からなり、敷居の高い雰囲気がそこはかとなく……。カニエ・ウエストやオルセン姉妹も、ここの熱狂的なファン。
マックスフィールド
Maxfield
www.maxfieldla.com
Vol.2 ドゥローク
扉を開くと、おもちゃ箱の中に飛び込んだよう。看板には“カスタム・ネオン・アート”とあるけれども、店内にはヒネリの効いたポップな雑貨が所狭しと並んでいます。
ジェフ・クーンズ風のオブジェ、グッチやシャネルへのオマージュ的ユーモアたっぷりのTシャツなど、思わずクスッと笑えるアイテムがたくさん! もちろんネオンもカスタムオーダーできます。
ドゥローク
DUROQUE
duroque.com
Vol.3 ジョン・バルベイトス
ロックンロールなど音楽に囲まれた環境から生まれた、米国のファッションブランド。ラルフローレンなどで重要な地位を経たジョン・バルベイトスが、自らの名前を冠したブランドを設立。タキシードからカジュアルウエアまで、生地にこだわり、高いクオリティからファンも多数。ここメルローズ店はNYに続く2軒目。
ジョン・バルベイトス
john varvatos
www.johnvarvatos.com
Vol.4 マルコ・ペルーシ・ヘアスタジオ
伝説的なヘアメイクアップアーティスト、マルコ・ペルーシさんご本人とサロンで遭遇。スタイリングはおまかせしても、リクエストしてもOK。顧客にはセレブも多いが、一般のゲストも。LAの旅の記念に、マルコさんの腕で新しい自分を引き出してもらってはいかが? 要予約。
マルコ・ペルーシ・ヘアスタジオ
Marco Pelusi Hair Studio
marcopelusi.com
ウエストハリウッドの人気レストラン2選
Vol.1 ピッツァーナ
伝統的なものと予測不能なものを掛け合わせた、革命的なピザ。イタリアから取り寄せた小麦粉をブレンドし、ゆっくりと48時間熟成させたピザ生地を使用。ピザ職人御用達のチーズ“フィオーレ・ディ・ラッテ”もナポリから直送。トッピングはトリュフやシイタケ、アンティチョークなど、市場に並ぶ季節の食材を、絶妙なバランスで組み合わせています。細長い店内レイアウトが印象的。
ピッツァーナ
Pizzana
pizzana.com
Vol.2 グラシアス・マドレ
「キンプトン ラ ピア」から徒歩1分のメルローズ・アベニュー沿い。100%オーガニックな植物由来のメニューを供するメキシコ料理店。ヤングココナッツを使ったセビーチェや、細かく裂いたジャックフルーツのタコスなど、ビーガンとは思えないボリューム感。テキーラ60種やメスカル70種など、ドリンクも充実しています。サンタフェ風の店内に加え、木陰が気持ちいいパティオ席も。
グラシアス・マドレ
Gracias Madre
www.graciasmadreweho.com
The Kimpton Everly Hotel
ハリウッドの文化的ハブ「ザ キンプトン エヴァリー ホテル」
LAのもうひとつのキンプトンは、ハリウッドヒルズのふもとにある「ザ キンプトン エヴァリー ホテル(The Kimpton Everly Hotel)」。
2階まで吹き抜けた大きな窓から外光が差し込む、開放感いっぱいのリビングルーム(ロビーラウンジ)は、天井高約8.5メートル! アート作品に囲まれたスペースにはビリヤード台が置かれ、遊び場的なワクワクする雰囲気です。
レストラン&カフェバーの「Jane Q」はカリフォルニア発のスローフードトレンドを取り入れたメニューと、遊び心たっぷりのカクテルを用意。たとえばエイミー賞やアカデミー賞のウィークには、ノミネート作品にちなんだオリジナルカクテルがお目見えします。
ダウンタウンを見下ろす5階のプールデッキは、ファイヤーピットを囲んで、カクテルやライトミールも楽しめます。空の下でくつろげる、人気のスポットです。
15階建てのホテル棟に、客室は216。シックな色使いのインダストリアル調の客室からは、ハリウッドサインやダウンタウンを望み、ザ・ハリウッドな眺望が楽しめます。5階の客室はプールデッキにそのまま出られ、人気です。
3カ月間限定で開催された「ルーム301」は、ユニークなこころみ。ゲストはポラロイドで自分自身の写真を撮り、ピンボードに宣誓と共に貼付。ノートに詳細を書き記し、次のゲストへつなぐ、というもの。人と人を結ぶキンプトンらしい実験ですね。
「ザ キンプトン エヴァリー ホテル」では、スタンドアップコメディなどのイベントも定期的に開催。若きアーティストを支援し、才能を伸ばす場を提供しています。いわく、「ビヨンセよりも、がんばっている彼女のいとこに出てもらいたい」とか。新たなるスターと出会えるかも⁉
ザ キンプトン エヴァリー ホテル
The Kimpton Everly Hotel
住所/1800 Argyle Avenue Los Angeles, CA 90028
TEL/+1-213-279-3532
日本での問い合わせ先/0120-056-658(IHG・ANA・ホテルズ予約センター)
URL/www.everlyhotelhollywood.com
Photos:Chieko Koseki, Kimpton La Peer Hotel, Kimpton Everly Hotel Text:Chieko Koseki