香取慎吾が17年待ったシチュエーション・コメディ。三谷幸喜脚本・演出『誰かが、見ている』の配信が9月18日よりスタート
三谷幸喜と香取慎吾。演出家・映画監督と俳優として数々の名作を生み出してきた二人が、9月にAmazon Originalドラマという新しいステージに踏み出す。配信ドラマという舞台にふたりが仕掛けるのは『誰かが、見ている』。『奥さまは魔女』や『フルハウス』といったアメリカの大ヒットドラマに代表されるシチュエーション・コメディだ。
舞台とテレビを知り尽くした三谷幸喜と、“普通に暮らすだけで面白い”香取慎吾の最強タッグ
香取が演じる舎人真一は、何をやっても誰も予想がつかないような失敗を繰り返す男。そんな舎人を偶然みつけた穴から、ジッと観察しているのが隣人、粕谷次郎(佐藤二朗)だ。ひとりで暮らしている部屋の中でも、さまざまな面白さを発揮してしまう舎人。そんな舎人を見ていることが娘にバレた粕谷次郎だが、その娘も段々と舎人に興味を持って、ついにあり得ない行動に出てしまう…。三谷作品らしく、周りを気にしない人物とその人物が気になりすぎてしまう人物。作品中には、昨年の収録で録音された観客の笑い声があふれている。
シチュエーション・コメディといえば、こうした観客の笑い声がその象徴とされることも多いのだが、三谷によればそれが必須条件ではないという。
三谷いわく、シチュエーション・コメディの条件は「シチュエーションと登場人物が限定されていて、連続ドラマではなく、毎回1話完結。だから色んな事件が起きるんだけども、主人公が全然成長していかない」ものらしい。そこに観客の反応とそれを盛り上げるほぼ一発撮りを取り入れているのが、舞台とテレビの良いところを知り尽くした三谷幸喜らしさと言えるだろう。
実は、三谷と香取はすでにこのジャンルで一度、顔合わせをしている。2002年~2003年にかけて放映された本格的シチュエーション・コメディ『HR』だ。今でも、思い出すと顔のほころぶファンも多い、伝説のドラマである。物語は、夜間中学を舞台に、香取演じる枠に収まらない教師と、浅野和之、小野武彦、國村隼、白井晃、戸田恵子など手練れの俳優たちが演じる型破りな生徒たちが織り成すコメディ。多数のカメラを駆使し、いくつもあるセットで同時進行する芝居を生放送のようにほぼ一気に撮影するという手法はここで生み出された。
香取にとってもこの『HR』は思い入れの深い作品だったようで、その思い出を「一発本番みたいなすごく楽しい現場だった」と語っている。香取がこの出演を機に「日本でもこれからどんどん増えるんだろうな」と感じたシチュエーション・コメディは、残念ながらそこまで増えることもなく、今日に至る。三谷は「2〜3m先にいるお客さんに向かって演じることで、俳優の圧が(一般的な)ドラマとは違ってくる。それが良い緊張感や面白さにつながっている」と語っているのだが、演劇さながらの熱量を保ちながら、テレビサイズに物語をまとめる、という作業ができる演出家は三谷以外に何人もいないだろう。
香取は『HR』後の17年というもの、この現場の雰囲気を忘れられず、こうした作品を「ずっとやりたい」と思い続けてきたという。そうした中で、声がかかったのが、今回の『誰かが、見ている』だ。
三谷の言葉を借りれば「朝起きて歯を磨いて、普通に暮らしてという行動だけでも面白い」香取が、周りを巻き込んでいく。今までの三谷作品で香取が演じたのは、圧倒的に「個性の強い登場人物に振り回される」役だったが、今回求められるのは真逆の「振り回す」役。とはいえ、隣人役の佐藤二朗はじめ、久しぶりの競演となる稲垣吾郎、大竹しのぶ、小日向文世など毎回登場するゲストも一筋縄ではいかない人物ばかりだ。切望していた2度目のシチュエーション・コメディ。良い意味で様々な事件を巻き起こしながら、成長しない香取慎吾が楽しみで仕方ない。
Amazon Original新ドラマシリーズ『誰かが、見ている』
脚本・演出/三谷幸喜
出演/香取慎吾、佐藤二朗、山本千尋、長野里美、宮澤エマ、夏木マリ
ゲスト出演/くっきー!(野性爆弾)、西田敏行、髙嶋政宏、寺島進、稲垣吾郎、山谷花純、近藤芳正、松岡茉優、橋本マナミ、八嶋智人、さとうほなみ、小日向文世、大竹しのぶ、新川優愛、小池栄子(登場順)
©︎2020 Amazon Content Services LLC
2020年9月18日(金)よりAmazon Prime Videoにて独占配信
Instagram: https://www.instagram.com/darekagamiteiru/
Twitter: @darekagamiteiru
Text:Reiko Nakamura Edit:Chiho Inoue, Yukiko Shinto