香取慎吾インタビュー「難しいことに挑戦するのはワクワクするんです」 | Numero TOKYO
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香取慎吾インタビュー「難しいことに挑戦するのはワクワクするんです」

9月18日より、三谷幸喜脚本・演出によるAmazon Originalドラマ『誰かが、見ている』の配信がスタートする。予想外のハプニングを繰り返して周囲を振り回すもなぜか愛される主人公、舎人真一を演じるのは香取慎吾。作品は、彼を取り巻く個性豊かな登場人物とユーモアあふれる仕掛け、明るい笑いたっぷりのシチュエーション・コメディだ。コメディアンという新境地に挑んだ香取慎吾にインタビュー。

面白くて可愛い、コメディアン・香取慎吾としての新しい顔

──前回、三谷幸喜さん演出で香取さんが主演したシチュエーション・コメディ『HR』から17年ほど経ちます。今回『誰かが、見ている』で『HR』の経験が生きた部分はありますか? 「めちゃくちゃ生きましたよね。やったことある、っていうのは大きくて。(佐藤)二朗さんは最初のセリフが出なくて、お客さんに聞いてました(笑)。でも、どんなことがあってもストップしないっていう決まりがあったんで…フリートークになったりして。その辺、僕は経験に助けられました」

──今回は「振り回す香取慎吾を見たい」という三谷さんのリクエストがありましたが、振り回す役と振り回される役、どちらが面白いですか?

「振り回す方が良いですよね。ホントに『HR』は大変で、名だたるキャストをひとりで迎えるというのは大変だったので…。でも、今回はそこがまた面白いんですけど、そう簡単なことはさせてくれないんですよ。振り回す役だから楽しいはずなのに、振り回される人が壁の向こうなんです。目の前で振り回されてる人に好きなことして、「いやいや、ちょっとやめなさいよ」って言われて腕を払って暴れるとかだと、振り回す方は遊べるんですけど。今回の場合は、振り回す役なのに、振り回してるってことを舎人は気づいてなかったり。いくつも条件が乗っかってきてるから、すごく難しくて(笑)。セリフが聞こえるとこはセリフをきっかけにして次の動きをする。だけど壁もあるから、ちゃんと聞こえないときもあるので、スタッフさんがキューを出してたりするんですよ。

普通のドラマだったら目の前でキューを出せばいいんですけど、お客さんに見えないところでスタッフさんがキューを出す。左を向いているときは左の端っこの方で、右を向いてる時には右の黒い幕のとこで、キューを出すのを見た瞬間に動くとか。そういうのをキャストごとにやるんです。二朗さんには二朗さんのスタッフが、僕に僕のスタッフがキューを出したりして。

1回、スタッフの方が1話で40回くらいキューを出したことがあって。その方が1個間違えたら止まる。だけどお客さんもいるし、どんなにミスがあっても止まらないっていう約束でやってるから。振り回す役とはいえ、自由でもなかったですね」

香取慎吾が演じる舎人真一(右)は、普通に暮らしているだけで面白いキャラクター。舎人の母・尚美役には夏木マリ(左)。 ©︎2020 Amazon Content Services LLC
香取慎吾が演じる舎人真一(右)は、普通に暮らしているだけで面白いキャラクター。舎人の母・尚美役には夏木マリ(左)。 ©︎2020 Amazon Content Services LLC

舎人真一の隣人、粕谷次郎を演じる佐藤二朗(左)、その娘役の山本千尋(右)。 ©︎2020 Amazon Content Services LLC
舎人真一の隣人、粕谷次郎を演じる佐藤二朗(左)、その娘役の山本千尋(右)。 ©︎2020 Amazon Content Services LLC

──コメディアン・香取慎吾として見えた、新しい顔はどんなものですか?
「“おもしろ可愛い感じ”じゃないですか? 完全に子どもを演じているわけでもなく、大人なのに面白くて、なんか可愛らしい、っていうのが今回作られたかなと思います」

──舎人真一のセリフが凄く少なく感じたのですが、そこにはどういう意図が?

「セリフはすごく少ないです。三谷さんと相談したわけではないんですけど。舎人は見られてると思ってないから、しゃべるというよりは動きの方が多かったですね。それと、後から三谷さんが言ってたのは、配信ということを意識したときに、セリフの日本語としての面白さも大事だけど、身体で面白かったら世界中の人が笑えるんじゃないか、と。でも、冷蔵庫から味噌を出してくるシーンとか、どう説明するのかな、とは思いますけど(笑)」

ジャケット¥260,000、 シャツ¥98,000、スニーカー¥114,000、「Gucci Off The Grid」パンツ¥115,000/Gucci(すべてグッチ ジャパン クライアントサービス 0120-99-2177)
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──衣装がすごく特徴的ですね。衣装から役に入るっていう事はありますか?

「ほとんどそこから入る感じですね。台本をあんまり家で読まないんですね。セットに入って衣装を着けて…でないと家で読んでもよく分からないので。そういう意味で事前に勉強しないんです。

動きでも、(着ているジャケットの)このポケットに手を入れてセリフを覚えたとしても、明日、現場に行ったら、衣装にポケットが無いかもしれないんですよ。その瞬間にちょっと、この手が行き場を失うなと。そういうことが山のようにあるので、だったらその現場で、本番であるものや本番の衣装でセリフも覚えたいんです」

──動きとセリフを一体化させて覚えたいということですか?
「そうなんです。『HR』のときも、収録終わって皆さん帰られるんですけど、ひとり残ったりして。残って、ひとりで1時間くらいセリフを覚えたりする。周りから見るとすっごい真面目に見えるんだけど、ここで、このセットで覚えたい!っていう気持ちで。その分、このセットから出たら、一切、台本は見ないんです。だけど、なんか残ってやってるの見ると、凄くまじめな子だな!って思われちゃうんです(笑)」

──17年間「やりたい!」と思い続ける、シチュエーション・コメディの魅力は、どんなところですか?

「実は舞台って僕、苦手で。お芝居自体苦手。緊張する方だから。そのはずなのに、シットコム(=シチュエーション・コメディ)は好き。テレビで育った中で、テレビのカメラ位置とかを感覚的に把握しながら動くのが好きなんです。いま、こう映ってるな、って自分で分かるし。そう思いながら、お客さんの反応も見る、っていうのは、より難しいんだと思う。でも、より難しいことに挑戦するのがワクワクするんですよ」

Amazon Original新ドラマシリーズ『誰かが、見ている』

脚本・演出/三谷幸喜
出演/香取慎吾、佐藤二朗、山本千尋、長野里美、宮澤エマ、夏木マリ
ゲスト出演/くっきー!(野性爆弾)、西田敏行、髙嶋政宏、寺島進、稲垣吾郎、山谷花純、近藤芳正、松岡茉優、橋本マナミ、八嶋智人、さとうほなみ、小日向文世、大竹しのぶ、新川優愛、小池栄子(登場順)
©︎2020 Amazon Content Services LLC

2020年9月18日(金)よりAmazon Prime Videoにて独占配信 

Instagram: @darekagamiteiru 
Twitter: @darekagamiteiru

Photos:Takao Iwasawa Styling:Kayo Hosomi Hair&Make-up:Tatsuya Ishizaki Interview&Text:Reiko Nakamura Edit:Chiho Inoue, Yukiko Shinto

Profile

香取慎吾Shingo Katori 1977年1月31日、神奈川県生まれ。2017年に「新しい地図」を立ち上げ、18年8月にスタイリスト祐真朋樹とともにディレクションを手掛けるショップ「JANTJE_ ONTEMBAAR(ヤンチェ オンテンバール)」を帝国ホテルプラザにオープン。同9月にはフランス・パリのカルーセル・デュ・ルーヴルにて初の個展「NAKAMA des ARTS」を開催した。20年1月には初のソロアルバム『20200101』をリリース。Amazon Originalドラマシリーズ「誰かが、見ている」が9月18日より配信予定。 Instagram:@katorishingo_official/ YouTube:SHINGO KATORI

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