Trip / Feature

感性を刺激する京都の新名所めぐり

オリンピックイヤーのはずだった2020年、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、オープン延期となっていた施設が5月末より続々開館し始めた。そんななか京都に誕生した話題のホテルと美術館、噂のレストランなど行っておくべき京都の新スポットを私的見どころとともに紹介する。

エーススイートの客室。Photo:Yoshihiro Makino
エーススイートの客室。Photo:Yoshihiro Makino

日本の伝統文化とデザインホテルの融合

エースホテル京都

まず、今回の京都旅行のステイ先は、6月11日にオープンした建築家・隈研吾監修のもと再開発された複合施設「新風館」に、アジア初上陸を果たした「エースホテル京都」。「East Meets West」というテーマのもと、京都という土地柄を反映した伝統工芸や和モダンテイストと、エースホテルならではの音楽やアートといったカルチャーの融合を感じさせる空間は、エースホテルと長年のパートナーであるCommune Design(コミューンデザイン)が手がけた。

エントランスを入って、左には銅製の円形カウンターのレセプション。
エントランスを入って、左には銅製の円形カウンターのレセプション。

隈研吾による圧巻の杉の木組みにパイプを組み合わせたロビー吹き抜けの天井の照明、銅製の円形カウンターのレセプション、各客室のしつらえなど随所に和の意匠が散りばめられている。

ロビー奥にはアメリカ、ポートランドから日本初上陸の「STUMPTOWN COFFEE ROASTERS」。Photo:Gorta Yuuki
ロビー奥にはアメリカ、ポートランドから日本初上陸の「STUMPTOWN COFFEE ROASTERS」。Photo:Gorta Yuuki

併設された飲食施設にも注目! ロビー奥には、アメリカ、ポートランド発の人気コーヒーショップ「スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ(STUMPTOWN COFFEE ROASTERS)」の日本1号店が登場。他にも、フィラデルフィア出身のイタリアンシェフ、Marc Vetri(マーク・ヴェトリ) 監修のアメリカ風イタリアン・オステリア「Mr. Maurice’s Italian (ミスター・モーリスズ・イタリアン)」。

バー&タコスラウンジ「PIOPIKO」 Photo:Yoshihiro Makino
バー&タコスラウンジ「PIOPIKO」 Photo:Yoshihiro Makino

ロビーから中二階、二階へと続く天井高で開放的な空間に位置するバー&タコスラウンジ「PIOPIKO(ピオピコ)」では、LA育ちのメキシコ系アメリカ人、Wes Avila(ウェス・アヴィラ)が監修したLAフードシーンで話題のコンテンポラリーなメキシコ料理を提供する。

ベッドの上に飾られているのは、90代の現役染色アーティスト・柚木沙弥郎の作品。
ベッドの上に飾られているのは、90代の現役染色アーティスト・柚木沙弥郎の作品。

そして肝心なお部屋。今回滞在したのはベーシックなスタンダードツインですが、全室共通で90代の現在もなお現役の染色アーティスト・柚木沙弥郎の作品が客室を飾る他、客室によっては、ターンテーブルにレコード、ギターなどエースホテルならではの音楽を感じさせるインテリアで構成。

客室によって、エースホテルお馴染みのターンテーブルとギターが用意されている。
客室によって、エースホテルお馴染みのターンテーブルとギターが用意されている。

ポットはBALMUDA、湯呑は額賀章夫作、小皿は伊藤丈浩作、茶筒はSyuRoなど、アーティストや職人によるこだわりのクラフトやメーカーを取り入れている。
ポットはBALMUDA、湯呑は額賀章夫作、小皿は伊藤丈浩作、茶筒はSyuRoなど、アーティストや職人によるこだわりのクラフトやメーカーを取り入れている。

素材に天然真珠と活性炭を使ったPearl+製ソープ、しょうぶ学園の生徒によるソープ用小皿。
素材に天然真珠と活性炭を使ったPearl+製ソープ、しょうぶ学園の生徒によるソープ用小皿。

バスルームは、天然の玄昌石を取り入れた石瓦のタイルと木材をあわせた浴室。「uka」のヘアケア & ボディケアアイテム。プラスチックごみ削減を考慮したバンブー製歯ブラシと歯磨きタブレットのセットなど細部にも日本的要素とサスティナビリティがスタイリッシュに共存していました。

木の温もりで和を感じさせる洗面スペース。
木の温もりで和を感じさせる洗面スペース。

Ace Hotel Kyoto(エースホテル京都)

住所/京都府京都市中京区車屋町245-2 新風館内 
TEL/075-229-9000
www.acehotel.com/kyoto/

ホテルのチェックインを済まし、ひと息ついたところで、話題の新風館内を散策。緑豊かな中庭にはランドマーク的に、名和晃平作の巨大な彫刻が。館内の店舗も心なしか、植物など自然的な要素を意識したところが多いように感じました。とりわけSOLSO FARMを運営するDAISHIZENによる、Nature・Craft・Artをテーマにした「(THISIS)SHIZEN」は、空間やアートディレクションを名和晃平率いるSandwichが手がけたというだけに、店内にも植物が生い茂りまるで中庭の延長のような印象。

Sandwichが空間デザインとアートディレクションを手がけるショップ「(THISIS)SHIZEN」
Sandwichが空間デザインとアートディレクションを手がけるショップ「(THISIS)SHIZEN」

他にも、東京でもお馴染み「メゾン・キツネ」に「カフェ・キツネ」「1LDK」「uka store」などが並び、地下にはミニシアター版シネコン「アップリンク京都」も。そして、連日行列の人気店が、京都・高辻で創業した「ぎょうざ処 亮昌」。伏見のキャベツ、京の都もち豚、九条ねぎなど地元食材を味わう餡に、中華調味料不使用、かつおだしベースにまろやかな味噌を加えたという上品な和のぎょうざは飲んだ後のシメにも食べたくなるお味でした。

新風館

住所/京都府京都市中京区烏丸通姉小路下ル場之町586-2
開館時間/ショップ 11:00〜20:00 レストラン 11:00〜23:00
https://shinpuhkan.jp/

歴史的建築に調和する流線型のガラスのファサード。Photo: Koroda Takeru
歴史的建築に調和する流線型のガラスのファサード。Photo: Koroda Takeru

歴史的建築がコンテンポラリーに生まれ変わった

京都市京セラ美術館

続いて、5月26日にリニューアル・オープンした「京都市京セラ美術館(京都市美術館)」。この大改修を手がけた建築家・青木淳が館長に就任したことも話題。1933年に誕生した京都市美術館の名建築と建物正面に新たに設けられた流線形のガラスのファサード「ガラス・リボン」がシンボリックに、美しく調和しています。

本館の中心、天井高16mの旧大陳列室は、地下1階メインエントランスのロビーから大階段によってつながる「中央ホール」にリノベーションされた。
本館の中心、天井高16mの旧大陳列室は、地下1階メインエントランスのロビーから大階段によってつながる「中央ホール」にリノベーションされた。

そして、新設された現代美術を主に展示する新館「東山キューブ」では、開館記念展として10月4日まで、「杉本博司 瑠璃の浄土」が開催中。

光学硝子五輪塔が整然と並ぶ空間。「杉本博司 瑠璃の浄土」展示風景 ©Hiroshi Sugimoto Photo:Yuji Ono
光学硝子五輪塔が整然と並ぶ空間。「杉本博司 瑠璃の浄土」展示風景 ©Hiroshi Sugimoto Photo:Yuji Ono

真っ暗な部屋に厳かに鎮座する「仏の海」シリーズ。「杉本博司 瑠璃の浄土」展示風景 ©Hiroshi Sugimoto Photo:Yuji Ono
真っ暗な部屋に厳かに鎮座する「仏の海」シリーズ。「杉本博司 瑠璃の浄土」展示風景 ©Hiroshi Sugimoto Photo:Yuji Ono

実は京都の美術館での初の本格的な大規模展となるらしく、光学硝子五輪塔をはじめ、京都蓮華王院本堂(通称、三十三間堂)を捉えた「仏の海」に中尊の大判写真が新作として加わった他、世界初公開となる大判カラー作品「OPTICKS」シリーズが展示されています。「京都」「浄土」「瑠璃ー硝子」にまつわる様々な作品や考古遺物に加え、屋外の日本庭園に設置された《硝子の茶室 聞鳥庵(モンドリアン)》も。

黒い部屋に色彩が浮かび上がる「OPTICKS」シリーズ。「杉本博司 瑠璃の浄土」展示風景 ©Hiroshi Sugimoto Photo:Yuji Ono
黒い部屋に色彩が浮かび上がる「OPTICKS」シリーズ。「杉本博司 瑠璃の浄土」展示風景 ©Hiroshi Sugimoto Photo:Yuji Ono

杉本博司《アイザック・ニュートン式スペクトル観測装置》2020年 Photo:Sugimoto Studio
杉本博司《アイザック・ニュートン式スペクトル観測装置》2020年 Photo:Sugimoto Studio

個人的には、アイザック・ニュートンの『光学』の1704年の初版本、それをもとに制作された《アイザック・ニュートン式スペクトル観測装置》、ニュートンのプリズム実験を再現し、デジタル技術を組み合わせ15年間かけて完成した光の色を捉えた新作「OPTICKS」シリーズに、科学と芸術が結実した時空を超えた美と、その背景にある壮大な夢とロマンを感じてしまいました。展示全体で、終わりのない物語というか、果てしない宇宙を語っているようでした。

《硝子の茶室 聞鳥庵》2014年 京都市京セラ美術館での展示風景 ©Hiroshi Sugimoto<br />
Architects: New Material Research Laboratory / Hiroshi Sugimoto + Tomoyuki Sakakida. Originally commissioned for LE STANZE DEL VETRO,Venice / Courtesy of Pentagram Stiftung & LE STANZE DEL VETRO.
《硝子の茶室 聞鳥庵》2014年 京都市京セラ美術館での展示風景 ©Hiroshi Sugimoto
Architects: New Material Research Laboratory / Hiroshi Sugimoto + Tomoyuki Sakakida. Originally commissioned for LE STANZE DEL VETRO,Venice / Courtesy of Pentagram Stiftung & LE STANZE DEL VETRO.

杉本博司 瑠璃の浄土

会期/開催中〜2020年10月4日(日)
会場/新館 東山キューブ
開館時間/10:00〜18:00(事前予約制)
休館日/月(祝日の場合は開館)

京都市京セラ美術館

住所/京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
TEL/075-771-4334
https://kyotocity-kyocera.museum/

焚火で織りなす、日本の季節と文化を体感する食のアート

LURRA°

杉本博司の作品を堪能した後のディナーもまた食という体験型アートでした。京都に行く機会があったら絶対に訪問したいとチェックしていたレストラン「LURRA°(ルーラ)」。店名の「LURRA˚」はバスク語で地球を意味し、「°」はその周りを回る月をイメージしているのだそう。京都市京セラ美術館からもほど近い、東山エリアの閑静な住宅街に佇む、古い町家を改装した店内は、大きめのテーブル(その後、コース終盤のデザートを囲むことになる…)とオープンキッチンを囲むL字カウンターのみの客席。

オープンキッチンんを囲むL字カウンター
オープンキッチンんを囲むL字カウンター

まるで地球を回る月の軌道を思わせる円形の天窓から空に向かって伸びるカエデの木
まるで地球を回る月の軌道を思わせる円形の天窓から空に向かって伸びるカエデの木

世界各地で経験を積み、ニュージーランドで出会ったというシェフのジェイコブ・キア、マネージャーの宮下拓己、ミクソロジストの堺部雄介の3人が、ルーツである日本の、さらには自然に囲まれ、伝統と革新が共存する京都から、食を通じて、日本の季節と文化のショーケースを世界に発信するというコンセプトの下、2019年7月に立ち上げました。カリフォルニア生まれのジェイコブさんは、LA、東京で経験を重ねた後、レネ・レゼピのデンマーク「NOMA」を経て、ニュージーランド「Clooney」でヘッドシェフを務めた経歴を持つということもあり期待が膨らみます。

オープンキッチンの中で若きシェフたちが真剣に、そして和気あいあいと料理する様子や、お店を象徴する暖炉のような窯のキャンプファイヤーのようにパチパチと火の粉を上げて燃える炎を眺め、次に出てくるお皿をワクワクしながら待つことも参加型のパフォーマンスアートのような感覚です。

お店のシステムは、17時30分と20時30分の二部制で、同じ時間帯で他のゲストも同時にスタート。メニューは、10品のコース料理とペアリングのドリンク。一つ一つ丁寧に解説してくれる料理やペアリングのお酒の話題はどれも興味深く、つい熱心に聞き入ってしまいます。

彩り鮮やかな「ズッキーニ、パセリの黄身酢と時季のハーブ」
彩り鮮やかな「ズッキーニ、パセリの黄身酢と時季のハーブ」

そして、肝心のお料理はというと、旬を味わうメニューは、お皿や盛り付けなど演出も随所に感性と実験精神が宿っていて、目にも舌にも終始驚きと感動が訪れます。とても、全品は語り尽くせないので、個人的にベストな5皿を強いてあげるとするなら、視覚部門は断トツで「ズッキーニ、パセリの黄身酢と時季のハーブ」。セミドライした後、熾火の上で焼いたズッキーニを主役に大原の夏野菜にフォーカスした一品。お皿に塗られたホタテと蜜蝋で作ったペーストの風味が効いてます。

「鮎、クレームフレーシュと松」
「鮎、クレームフレーシュと松」

お次は、「鮎、クレームフレーシュと松」。つい先ほどまで水槽で泳いでいた新鮮な稚鮎を、桜の熾火の上でじっくり串焼き。シェフ自ら河原で探してきたという立派な石の上に盛り付け。クリームフレッシュ、松のオイルに、松の塩、松の新芽をつけながらいただきます。

「馬肉のタルタル、燻製牡蠣のエマルジョンとプラムオキサリス」
「馬肉のタルタル、燻製牡蠣のエマルジョンとプラムオキサリス」

味覚部門は、「馬肉のタルタル、燻製牡蠣のエマルジョンとプラムオキサリス」と「枝豆、ピスタチオとキャビア」。前者は、見た目は他に比べてやや地味ですが、味は超好み。昆布締めにした馬肉のタルタル、発酵麹ウォーターのビネグレット、フィンガーライム、セリオイルで味付け。その上にサワードーブレッドのチップス、燻製カキのイモルジョンとほんのり酸味のあるオキサレスのハーモニーが完璧です。

グリーンが爽やかな「枝豆、ピスタチオとキャビア」
グリーンが爽やかな「枝豆、ピスタチオとキャビア」

後者は、ピスタチオのミルクに枝豆、ビールでできたクリームにキャビアの塩っけと相まってさっぱりしたい味わい。

入り口横の大きなテーブルを囲んで食後のデザート。
入り口横の大きなテーブルを囲んで食後のデザート。

酒粕のアイスクリームに酸っぱい緑のイチゴのスープをかけていただく「酒粕、グリーンストロベリーとレモンバーベナ」
酒粕のアイスクリームに酸っぱい緑のイチゴのスープをかけていただく「酒粕、グリーンストロベリーとレモンバーベナ」

その後、カウンター席から楕円テーブルを囲んでのデザートタイム。食べられないかもなんて懸念は口にした瞬間、消え去りました。酒粕のアイスクリームにミルククランブル、酸っぱい緑のイチゴのスープ、甘いお米のチップと合わせて、ほんのり優しい甘さで気づくと完食。アミューズからメインにデザート、そして、ペアリングのカクテル、ワイン、日本酒まで、オリジナリティ溢れるアーティスティックで新感覚な食体験をさせていただきました。四季それぞれで味わいたい料理です。


Photos:Mitsuyuki Nakajima

LURRA°

住所/京都府京都市東山区石泉院町396
TEL/050-3196-1433
料金/¥25,000(サービス料別)※完全予約制
営業時間/17:30〜23:30(17時30分からと20時30分からの一斉スタートのみ)
定休日/日・月
https://lurrakyoto.com/

Edit &Text:Masumi Sasaki

Profile

佐々木真純Masumi Sasaki フリーランス・エディター、クリエイティブ・ディレクター。『流行通信』編集部に在籍した後、創刊メンバーとして『Numero TOKYO』に参加。ファッション、アート、音楽、映画、サブカルなど幅広いコンテンツ、企画を手がけ、2019年に独立。現在も「東信のフラワーアート」の編集を担当するほか、エディトリアルからカタログ、広告、Web、SNSまで幅広く活動する、なんでも屋。特技は“カラオケ”。自宅エクササイズ器具には目がない。

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