Art / Feature
時間を映し出すアートの地平 【1】杉本博司
傷心からの復活、平和への祈り、人類と地球の問題に至るまで──。色とりどりのアプローチで時間を捉え、気付きへと誘うアートの力。みずみずしく奥深い“時間の形”を見せてくれる作品とは。『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年7・8月合併号の特集より、一部抜粋してご紹介。
京都市京セラ美術館開館記念展「杉本博司 瑠璃の浄土」(2020年)より、世界初公開となる中尊(中央)を含む展示風景。 ©Hiroshi Sugimoto
杉本博司
『仏の海』
時を超えた祈りと死後の世界
彫刻、建築、造園、演劇、古美術収集まで、その膨大な見識で日本の精神風土を見据え、芸術の根源を探求してきた杉本博司。なかでも写真は「時間を捉える行為」だと語る。『仏の海』は、戦乱や疫病、天災からの救済を祈念して平安時代末期に建立された京都・三十三間堂の千体仏を写したシリーズ作品。自然光のもとに当時の人々が目にしたであろう光景を再現することで、時間を超えた死後の世界=極楽浄土の広がりへと見る者を誘う。
Edit & Text : Keita Fukasawa
Profile
杉本博司Hiroshi Sugimoto
(すぎもと・ひろし)1948年、東京都生まれ。74年よりニューヨークと日本を往復して制作を行う。代表作に『海景』『劇場』など。2017年、構想から10年をかけた文化施設「小田原文化財団 江之浦測候所」を開設。文化功労者、紫綬褒章、フランス芸術文化勲章オフィシエほか叙勲・受賞多数。京都市京セラ美術館開館記念展「杉本博司 瑠璃の浄土」が開幕中(〜10/4。最新情報は同館サイトへ)。