オンラインのヴィンテージショップ、人気の秘訣
日常生活にすっかり浸透しているSNS。手軽に発信ができる一方で、スマホ中毒にもなりかねない。独自のルールを駆使する達人たちにSNSとうまく付き合う方法を聞いた。第2回は、インスタグラムで世界観を表現し、オンラインで古着を売る、個人経営のヴィンテージショップに着目。なかでも人気店のオーナーらを迎えて、お店がなくてもいい、あってもいいその人気の秘密に迫る。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2019年12月号掲載)
SNSが起爆剤! インスタを使いこなす“いま風”の運営
──お店を始めたきっかけは?
菊地舞(以下K):「アパレル業界で商品企画をしていたのですが、新品を作るサイクルに疲れて会社を辞めました。NYへ旅行してシーズンを追わない古着の良さを痛感し、すぐに買い付けを始めてBASEアプリで、すぐオンライン上にショップを開設しました。インスタで#ヴィンテージと付けて商品の投稿を続け、次第にお客さまがつくように。特に地方の反応はとてもよかったです」
及川さやか(以下O):「子どもの頃から古着が好きだったのと、子育てをしながら働ける環境が欲しいと思って始めました。オンラインは、お店をずっと開けている必要がなく時間の自由が利きやすいので」
佐藤友美(以下S):「スタイリストをした後、他のことをやってみたいと思いオンラインでスタート。実店舗と違い、販売のタイミングや商品点数が少なくても始められるのでハードルが高くないのが良かったです」
伊藤梓:「そんな中、実際にお客さまに商品を手に取ってもらえる場が欲しいという声があり、ショップ参加型のマーケット「432マーケット」を開催。参加してほしい店舗には、インスタのDMでラブコールをして。4回目にはオープン前に行列ができるようになっていました」
O:「インスタの写真を見て声をかけてもらったんですよね。イベントをきっかけにフォロワーも増え、正直こんなに売れるとは思っていなかったくらい反響がありました」
K:「イベントの実績もできたので、2018年に実店舗をオープンすることに。インスタに掲載した、商品を実際に見られて試着できる場にしています」
──インスタの投稿で、こだわりや気にかけていることはありますか。
O:「インスタはパッと開いた時の第一印象が大事。1、2日にたって動かないと、その写真とキャプションを変えて再投稿します。初動で決まるといってもいいと思う」
K:「情報として嘘がなく、商品のリアルさを伝えるかも大事ですね。私の場合、吊るしで撮影してワードローブの延長に感じてもらいたい」
O:「イメージ的な写真に偏りすぎると、お客さまに届いたときに違うとなってしまう可能性がありますよね。物の良さを最大限引き出しつつ、バックスタイルや横から撮った写真も掲載しています。一方、お店の世界観を表すようなコーディネートの写真も好評です。モデルもインスタでスカウトしました」
──インスタに投稿するときのショップならではのコツは?
S:「始めた当初は、お昼の12時と夜の21時に毎日更新していました。スマホを使う人が多いんです。インスタの特性なのか、フォロワーが2万人を超えたあたりからは自動的に増えていきます。あとは、古着以外のコラボ商品にも反響が大きいですね」
K:「ショップ機能は使っていません。価格表示がヴィジュアル的に美しくないので。あと、古着は一点ものなので売り切れた場合、投稿を削除しなくてはならない。同じ商品の在庫を抱えているお店向けかもしれないですね」
O:「丈が長い服を買い付けるようにしています。理由は、圧倒的に写真映えするから。特に、生地の落ち感や歩いたときにどうなびくかを重要視しています。オンラインだからこそ、服の見え方にはこだわっています」
ヴィンテージショップのSNSルール
1.撮影用のモデルやイベントの仲間はDMでスカウト
2.商品をスタイリングした写真でお店の世界観を伝える
3.実際に商品をお客さまに見てもらえる場を持つ
4.投稿時間は12:00と21:00にし毎日更新する
5.古着以外の取り組みでフォロワーを増やす
Profile
菊池舞Instagram: @heliconia_store
2015年、オンライン販売限定の「ヘリコニアストア」を立ち上げる。アメリカなど国内外で買い付けをし、パンツのセレクトに定評がある。2017年に東京・外苑前に実店舗をオープン。https://heliconia.buyshop.jp
伊藤梓Instagram: @432market
「432マーケット」主宰。ルーフトップマーケットにヒントを得て、オンライン販売のショップが参加できるマーケットをスタート。新宿のNEWOMANほか大阪など地方開催も行う。
及川さやかInstagram: @pelican_vintage
「ペリカン ヴィンテージ」のオーナー。現代を生きる女性へのヴィンテージショップがコンセプト。アメリカやヨーロッパなどで買い付けし、リネンやメンズ、ワークウェアも豊富。
佐藤友美Instagram: @_nu.de_vintagecloset_
2017年、「ヌードヴィンテージ」をオープン。国内外で買い付けを行う。元スタイリストの経験を生かし、アーティストとのコラボなどで注目を集める。フォロワー数も多い。