良質な本を作る出版社の思想、背景までを見せる書店「POST」
単なる本の紹介に留まらず、その背景にある出版社の想いまでを伝えている、恵比寿のアートブック書店「POST」。代表の中島佑介が語る、出版不況時代の新たな試みとは?(「ヌメロ・トウキョウ」2018年6月号掲載)
ギャラリースペースでは、ブックデザイナーにフォーカスを当てる企画「SPOT」を定期的に開催。作品の展示とともにブックデザインの背景に迫る。 POSTは恵比寿でアートブックの販売を中心に、企画展やイベントなどを行っている。代表の中島佑介さんは、「DOVER STREET MARKET GINZA」のブックシェルフコーディネートを手がけるなど、海外や国内のアート書に精通する。 本が売れないと言われる時代でも、一定の層からのニーズは根強く存在するという。その理由として「まず一つが、本がただ情報を伝えるだけの機能ではもういられなくなったということを出版社が痛切に感じ、本は本来どういうものとしてあるべきかを再考するようになった。その結果、良書が増えたということ。2つ目は、個人や小規模でも本を作られるプラットフォームが整ったということ。3つ目は、SNSネイティブの若い世代が本の魅力を再発見してくれているということ」
店内の入り口を入ってすぐの棚には、定期的に入れ替える出版社を軸としたセレクション。
POSTでは、定期的に出版社単位で本のラインナップを入れ替えている。買い付けを行ううちに「この時代のこの出版社の考えが面白い」という発見に至ったからだそう。「ただ単に本を紹介するよりは、本を介したコミュニケーションや価値観の共有をすることが面白いと思っていて、実際お店に来てくださる方もそれを求めていると思う」
本を選ぶとき、背景にある出版社の思想まで気にすることはなかなかないはず。「何か違う本を選ぶきっかけになればいいなと。実際、一人ひとりのお客さんと話す時間がすごく長いんです。スタッフとお客さんという関係性よりはもう少し近いかもしれない。本を媒介にしたコミュニケーションを展開するというのは、書店の一つのあり方だとあらめて感じています」
POST
住所/東京都渋谷区恵比寿南2-10-3
TEL/03-3713-8670
営業時間/12:00~20:00
定休日/月曜
URL/post-books.info
Edit&Text:Etsuko Soeda