エドゥアール・コアントローが手がけた1890年代広告に学ぶブランド戦略 | Numero TOKYO
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エドゥアール・コアントローが手がけた
1890年代広告に学ぶブランド戦略PROMOTION

COINTREAU
COINTREAU

ファッションもフードもドリンクも、その商品がブランドとして確固たる地位を築くには、高い品質はもちろん、クリエイティビティに富んだ個性を持つことが大切。今から120年以上も前、19世紀という時代にその重要さに気付き、現代でも愛されるある商品をブランドとして育てた人物がいる。フランス発のオレンジリキュール「コアントロー(COINTREAU)」創設者の一人、エドゥアール・コアントローだ。スマートフォンはおろかテレビもなかった当時、あらゆる手段でキャンペーンを実施した広告宣伝の先駆者。彼の仕事から学ぶ「ブランド戦略」の極意とは?

リュミエール兄弟を起用した世界初のモーション・ピクチャー

クリエイティブなアプローチで時代の先を行く開拓者だったエドゥアール・コアントロー。彼自身が手がけるお酒「コアントロー」をブランディングしていく上で核となっていたのは固定観念にとらわれない奇抜なアイデア。1899年には、トーマス・エジソンと並んで称賛されるフランスの映画発明者で映画の父と呼ばれるリュミエール兄弟にCM制作を依頼。世界初のモーション・ピクチャーを完成させ、映画館での上映会を行った。また、1902年には蒸留所があるフランス西部、アンジェの街で宣伝車を走らせるなど、現代のラッピングカーの原型とも言えるキャンペーンも実施している。巨大なボトルを荷台に乗せたその宣伝車は、今見ても新鮮さのあるユーモアに富んだデザイン。

cointreau #08
cointreau #08

突如現れる巨大なボトル! 移動キオスクでポップアップストア

1904年、次に彼が着目したのはキオスク。日本では駅構内に設置されているイメージが強いキオスクだが、ヨーロッパでは道端や公園などに公共の場に立てられて、新聞や雑誌、タバコやお菓子がおかれている売店。エドゥアール・コアントローは巨大なボトルをそのままデザインに取り入れたポップアップストアを考案。革新的なビジュアルの移動キオスクでカクテルを提供し話題を呼んだ。映画や宣伝車、移動キオスクなど、どの試みも“エレガント”なデザインを意識したことにより、女性の心をつかんでいったのも彼の功績と言える。

Angers  (5)
Angers (5)

女性が手に持ったときもエレガントな印象になるようにと考えられたパッケージ。イメージソースは香水瓶。

Angers  (48)
Angers (48)

フランス西部、アンジェ地方にある製造現場はまるでアートギャラリーのような佇まいで、従来の蒸留所のイメージを覆す。オレンジからインスピレーションを得たオレンジのグラフィックが目を引く。

ユーモア溢れる視点から繰り広げられた広告宣伝。そのアイデンティティは、後に作られるポスターやフライヤーのひとつひとつにも宿っていく。世界的に注目を浴びたのは、1900年代に主流になりつつあった「キャラクター起用」という手法をいち早く取り入れた広告。道化役者を撮影していたナダールという才能あるフォトグラファーとの出会いをきっかけに、エドゥアール・コアントローは彼が撮影した道化師をモデルにしたキャラクターデザインをイタリア人画家、ニコラス・タマーノに依頼。ピエロのモチーフを取り入れた自社広告はアートピースとしても完成度が高く、現在もコレクターがいるほど世界中のファンを惹き付けている。

こうして築き上げられた比類なき「コアントロー」ブランド。広告宣伝の天才 エドゥアール・コアントローの仕事には、今の時代にも通用するアイデンティティの作り方が詰まっている。

COINTREAU
www.cointreau.com

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Text:Yukiko Shinmura

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