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汐留は28階から下界を見下ろしている。

汐留は28階から下界を見下ろしている。わたしの身長の三倍もあるほどの大きな窓の上半分を、暗雲がゆっくりと移動してゆく。あいにく降り始めた雨のせい で、すぐそこにあるだろうレインボーブリッジの骨格さえ滲んでいる。フジテレビの球体は、ここからではもはや確認できない。悪天候の日暮れは逃げ足のよう に早い。頼んだばかりのコーヒーがまだ冷めぬというのに、ふっというように暮れてゆき、またたくまにちらちらと滲む灯りばかりが増えてゆく。こんなラウン ジで一人でいたとしたら。たてなくてもたつというのが聞き耳だ。隣りには、年齢的にも風貌的にも、完全にどこかしらの会長、といった老紳士と、若社長的な 太鼓持ちが。。うっかりたってしまったわたしの聞き耳に飛び込んできたのは太鼓持ちの言葉だった。「そうや!決めた!銅像作りましょう!今年から一つず つ!どんどん増やしましょ!それや!」 わたしには関係ない話だ。関係ない話だけれど、名案でもなんでもないと思った。銅像を今年から一つずつ、どんどん 増やすことには反対だ、と思った。銅像は、わりと一個でいいと思った。創業者であったり、その地に縁のある人であったり。どんどん増やすなんてもってのほ かだ。太鼓持ちが、誰を銅像にしようとしているかも気になった。話の流れと二人の温度差でいくと、太鼓持ちの目の前の会長みたいな老人の銅像を作ろうと、 盛り上がっているふうにも見えた。老人にとっては、なんだかお墓の話でもしている気分になってしまってはいないかと、心配になった。老人は、太鼓持ちの話 も半分に、その大きな窓に滲んで消えてゆく景色を写メってばかりいた。消え入りそうな老人が、消え入りそうな景色を、消え入りそうな指で、残してゆく。消 え入りそうな老人は、どこかで銅像になって、残される。。大きな窓はただの真っ黒なキャンパスになろうとしていた。。 まもなく奥の間での食事が始まっ た。創作チャイニーズは、懸命な創作活動の末に、方向性を見失ってしまったようだった。。

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モデル・音楽活動を経て、現在は辛口なコメントや独特な雰囲気で人気のタレント。ドラマ・CM・映画出演、雑誌エッセイ連載等で活躍中。

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