中国ファッション誌とモデル事情とは? | Numero TOKYO - Part 2
Culture / Yonethropology

中国ファッション誌とモデル事情とは?

米原康正の東京文化人類学、今回は中国の雑誌「瑞麗」の専属モデルオーディション、日本大会をフィーチャー。米原康正が読み解く、日中ファッション雑誌とモデルの今。

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──「瑞麗」のカバーガールオーディションがはじめて日本で開催されたのには理由があるのでしょうか。 「中国って夢があるんだよ。日本にもかつてあった、カリスマ店員が突然人気者になるみたいな夢。今回は日本からの働きかけで日本人女性が“チャイナドリーム”を手に入れるきっかけを増やそうと作られた機会だよね。専属モデルオーディションのこういう考え方って2000年代のギャル雑誌に通じるものがあって、それはマーケットに忠実なモデルを選んでいるところなんだよ。中国はアジアの中でも、ファッション誌に自国のモデルを使っている確率がすごく高い。日本の雑誌はファッションで憧れの世界を作るけど、中国の雑誌はほとんどがモノを買う人の生活水準に直結している。基本は自国のモデルが表紙を飾るし、どれだけモノが売れたかが評価基準。あとモデルもそうだけど、ファッション業界で働く人も“喋れるか”って結構重要で、面白いのがネットショップ『Alibaba.com』の電話対応スタッフがこれまでのショップ店員みたいな立ち位置になっていること。ユーザーの質問に上手に応えられる人は重宝されてるんだよね。特に中国は実名でリアルな口コミが盛んだから」 ──日本人モデルやクリエイターが中国で成功するための秘訣は何? 「僕の場合は“街の文脈”に合わせるっていう方法で成功した。それは相手に合わせて自分を変えるという意味ではないんだけど、まるっきりそのまま勝負しても仕方がない部分に目を向けるというか、街を見ること。日本でウケたことを全ての始まりだと思ってそのまま持っていくのは間違っている。日本人って適応能力が高いから気づいてないかもしれないけど、自分たちと違うやり方を受け入れるのって難しいから。だからモデルも、日本で多くを語らずににこにこしていただけでマスにウケたとして、それをそのまま中国でやっていたら話にならない」 ──“チャイナドリーム”を掴んだ日本人モデルはいますか? 「赤坂沙世は中国に渡って成功した希少な日本人モデルで、各誌の表紙を飾ってる。彼女はすごいよ。日本にいた頃に『中国でウケそうだよね』って話をしていたら、その数年後に突然行ったんだよ。自己主張があってキャラクターも濃い女性だから、逆に日本だと働きにくかったのかもしれない。中国でこれまで成功したモデルには藤井リナとか長谷川潤とかがいるんだけど、なかなかその次が続いていなかった。企業がレコメンドして中国進出するモデルがハマってないってことなんだよね。だから、赤坂沙世みたいに単身挑戦するっていうのが、ある意味中国にフィットしているのかもしれない。というか、外国人のクリエイターやモデルは自分が活躍できる国はどこなのかいつも探していて、日本の中にとどまっているのって意外と日本人だけだったりするんだよね。赤坂沙世も自分を客観視して、自分は中国のマーケットに合ってるって気づいたってことでしょ。彼女と対談して、中国で働くモデルの事情を聞くのも面白そう。チャイナドリームには、まだまだ可能性があるってことだよね」 写真/(左上から時計回りに)吉岡裕美、緑友利恵、利麗、麻衣愛、ロバーソン夏妃、児玉凛来、菅生ユイ、久次米未咲

米原康正の東京文化人類学

Photos:Yasumasa Yonehara

Profile

米原康正(Yasumasa Yonehara)編集者、クリエイティブディレクター、フォトグラファー、DJ。世界で唯一チェキをメイン機材とするアーティストとして、雑誌、CD ジャケット、ファッションカタログ等で幅広く活躍。中華圏での人気が高く、中国版 Twitter である「新浪微博(weibo)」でも膨大な数のフォロワーを有し、シューティングと DJ をセットにしたイベントでアジアを賑わせている。世界のストリート・シーンで注目される、ジャパニーズ・カルチャーを作品だけでなく自身の言葉で語れる日本人アーティストの一人。

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