伝統文化が息づく街、金沢のものづくりを訪ねて | Numero TOKYO
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伝統文化が息づく街、金沢のものづくりを訪ねて

歴史情緒溢れる街並みや、古都ならではの伝統工芸など、豊かな文化が観光客に人気の石川県金沢。いま、伝統を受け継ぎながらも、時代の空気感を汲み取った新しいものづくりが盛んに行われている。職人のアトリエから、九谷焼の老舗窯元、日本酒の新酒蔵まで、金沢を中心としたディープな注目スポットを探訪!

若手作家がシェアする工房兼ギャラリー
金澤町家職人工房 東山

ひがし茶屋街からほど近く、明治30年以前に建てられた古い町家を改装した「金澤町家職人工房 東山」。2010年より、金沢市が若手の伝統工芸作家を支援するため、アトリエ兼ギャラリーとして貸し出している。

2018年からは九谷焼、九谷細描、手紡ぎ藍染めの3人の作家が一軒をシェア。この日は、綿の手紡ぎ藍染め職人の弘田朋実さんが、原綿から糸を紡ぎ出す様子を見せてくれた。針がくるくる回転するインドの機械を器用に駆使し、綿を巻きつけ一本の糸にしていく。

繊細な線を強靭な集中力で丁寧に描き入れていく、九谷細描の吉田純鼓さん。

目が霞んでしまいそうなほど細かい線描は、まさに神業!

若き職人たちの手仕事を間近で見て話を聞けば、堅苦しいイメージの伝統工芸が、もっと身近に感じるはず。

金澤町家職人工房 東山

住所/金沢市東山2-1-21
TEL/076-252-5101
時間/月・木 13:00〜18:00 金 10:00〜13:00 土・日・祝 11:00〜18:00
URL/kanazawacraft.jp/craftsindexmap/shop/detail.php?code=C1000118

苔と緑の小さな世界を作り出す
HISOCA

フリーランスのデザイナー、勘村洋和さんが2017年6月にオープンした「HISOCA(ヒソカ)」は、苔や緑を使ったテラリウムを扱うショップ兼アトリエ。「家の中でも楽しめるように」と作り始めた、物語の一場面を再現したような作品が人気を集めている。

金曜日と土曜日の2日しかオープンしないショップ(※現在休業中)には、小さな緑がそこかしこに。モダンにアレンジした苔玉や盆栽などが購入できる。

ワークショップも開催しているので、自分だけの作品にチャレンジしてみるのもおすすめ。

HISOCA

住所/石川県金沢市東山2-6-7
TEL/090-6028-5965
営業時間/金・土 11:00〜17:00
※2018年12月はお休み中。2019年1月の営業日はFacebookでお知らせ。
URL/https://hisoca.info/

新しいものづくりのあり方を
追求する金工工房sayuu

金沢出身の彫金師、竹俣勇壱がひがし茶屋街に構えるアトリエ兼ショップ。自身の作品だけでなく、器やアクセサリーなどのセレクトも並ぶ。

もともとジュエリー製作から出発し、食まわりなど生活の道具に興味を持つようになったという竹俣氏。現在は、そのカトラリーが国内はもとより海外のレストランからも指名されるほど、注目を集めている。

伝統工芸というと、手仕事にこだわっているというイメージがあるが、彼の場合はそうではない。ある工場と出合ったことで、一定のクオリティと、数を量産できるメリットを発見し、工芸と工業の融合を図ったプロダクトづくりにも熱心だ。常識に捉われない、新しい伝統工芸が芽吹いている。

sayuu

住所/石川県金沢市東山1丁目8-18
TEL/076-255-0183
営業時間/月・火・木 10:00〜16:00 金・土・日 11:00〜18:00
定休日/水
URL/www.kiku-sayuu.com

観光客がたどり着けない通なスポットは、金沢クリエイティブツーリズムへ!

今回訪れた3つの工房は、「金沢クリエイティブツーリズム」のガイドによるもの。観光ガイドには載っていない、地元のアーティストや工芸作家のアトリエや町家、茶室などマニアックな場所を案内してくれる。リクエストにも応えてくれるので、ディープな街歩きにはぜひ相談してみて。

金沢クリエイティブツーリズム
URL/www.kanazawacreativetourism.jp/

若い感性と斬新な発想
ユーモアたっぷりの九谷焼

2019年で創業140周年を迎える九谷焼の窯元、上出長右衛門窯。金沢を南に下った能美市にある窯元は、ショールームを新たに設け、一週間前までの予約で工場見学をすることができる。

6代目を務める上出惠悟さんが生み出すのは、従来の九谷焼にはない遊び心溢れるデザインの数々。伝統的な笛吹きのモチーフは、笛をギターやドラムなど現代の楽器に置き換えてアップデート。

スペイン人デザイナー、ハイメ・アジョンとのコラボレーション(写真上)や、フランス人アーティスト、フィリップ・ワイズベッカーの干支イラストをあしらったコレクションなど、さまざまなクリエイターと交わるなど表現の幅を広げている。

工場見学では、成形から乾燥、素焼き、絵付けの過程を追うことができる。どのプロセスにおいても、すべて人の手による丁寧な仕事が活きている。140年の伝統が誇る九谷焼が生み出される現場をぜひ体感してみては。

上出長右衛門窯 ショールーム/工場

住所/石川県能美市吉光町ホ65
TEL/0761-57-3344
時間/10:00〜17:00 ※訪問の際は要事前連絡
定休日/土・日・祝(変則あり。HPのカレンダーをチェック)
URL/www.choemon.com/
工場見学は1週間前までに要予約

日本酒を全方位味わい尽くす!
農口尚彦研究所の酒事

「酒造りの神様」との異名を持つ日本最高峰の醸造家、農口尚彦氏が杜氏として2年ぶりに復帰し、その新酒蔵が2017年11月小松にオープンした。注目すべきは、酒蔵内に併設された12席のテイスティングルーム「杜庵」。ここでは、酒蔵の見学スペースの観覧と、日本酒テイスティングがセットになった、完全予約制のプラン「酒事(しゅじ)」を提供。蔵出しのお酒や、器や温度の違いによるテイスティング、茶の湯になぞらえた季節ごとのお酒の楽しみ方など、日本酒の魅力を五感で堪能することができる。

同じ純米の大吟醸酒でも、生酒、火入れしたもの、38度に温めたものなど異なる温度のお酒に、九谷焼、能登島ガラス、珠洲焼など石川ゆかりのグラスを組み合わせて、味わいの変化をいざテイスティング。同じお酒とは思えないほど、味わいや口当たりの劇的な変化に驚き…!

おつまみには、タラやイカの粕漬け、サバの糠漬けなど、発酵食品をペアリング。このまま販売して欲しいほど、お酒もご飯も進みそうな美味しさ。

終盤は、酒米「五百万石」を炊き上げたご飯や、節句に合わせて菊の花を浮かべた一杯を。

そして締めは、和菓子とのペアリング。松本市内の老舗和菓子店、行松旭松堂と開発した日本酒に合うお菓子が振舞われる。和菓子をお酒に浸していただくという、新しい提案も。

最後は、蔵人への質疑応答コーナーで締めくくり。日本酒をフルコースで味わえる、未知の体験が待っている。

農口尚彦研究所

住所/石川県小松市観音下町ワ1番1
TEL/0761-41-1116
URL/noguchi-naohiko.co.jp

杜庵
営業時間/11:00〜12:30、15:00〜16:30
休業日/木・第一水曜日
料金/¥5,000(税別)
酒事予約ページ/https://noguchi-naohiko.co.jp/user_data/experience

金沢の名品が揃うセレクトショップ
八百萬本舗

地元のクリエイターや、感度の高い観光客が集うパブリックな町家をコンセプトに作られた八百萬本舗。広い店内には、能登半島の食材や北陸の保存食、地元作家の器やキッチン用品など、石川にまつわるこだわりの品がテーマごとに分かれて陳列されている。

石川県のキャラクター、ひゃくまんさんが目利きしたアイテムが並ぶコーナーも。

店内では、転写シールで簡単に久谷焼を作ることができる「KUTANI SEAL」のワークショップも開催。グッドデザインなパッケージも多く、モダンなお土産を探しているなら、必ず欲しいものが見つかるはず。

八百万本舗

住所/石川県金沢市尾張町2丁目14−20
TEL/076-213-5148
営業時間/10:00〜19:00
定休日/水
URL/yaoyoroz-honpo.jp/

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Photos: Tomoko Osada Text: Yukiko Shinto

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