Culture / Lifestyle

ごみゼロの街を辛酸なめ子が調査! 徳島県上勝町に学ぶ地産地消の暮らし方

徳島県上勝町(かみかつちょう)という町を知っているだろうか。2003年に日本初のゼロ・ウェイスト宣言を発表し、「2020年までにごみ・ゼロに!」という目標を掲げ、町全体でゴミ問題に取り組んでいる。今では国内外問わず多くの視察者がこの町に足を運ぶようになった。しかし以前はゴミ処理を野焼きで行っており、ゴミゼロとは程遠い町だったのだ。なぜここまで変わることができたのか。辛酸なめ子が上勝町の取り組みと町の人々の生活に迫る。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年3月号掲載)

上勝町のリサイクル法

ゴミの分別数はなんと45項目! 上勝町のゴミステーション

上勝町はごみ収集車が毎日のように家の前まで回収に来ることはない。町民自らゴミステーションまで足を運び、自ら分別を行う。ゴミ分別数はなんと13品目45分別。分別されたゴミは、再生資源を原料として製品を作っているリサイクル業者へ。

売り払い価格やリサイクル先が記載されているので自然と意識が高まる!
売り払い価格やリサイクル先が記載されているので自然と意識が高まる!

各分別ラベルには何に再資源化されるのか、引き渡す値段と売り払う価格も記載され、町民一人ひとりがゴミに対して常に意識する環境づくりがなされている。家がゴミステーションから遠い人や高齢者宅には、2ヶ月に1回収集車が来るそう。この取り組みの結果、上勝町のリサイクル率は約80%に! 自ら出したゴミを自ら分別し、その先の行方を知ることで、日常生活でもゴミをできるだけ減らすよう心がけるようになり、町に住む人全員でゴミゼロの町を作り上げていた。

行きたくなるゴミステーションに! 新たな施設「WHY」が誕生

今年の春には、新たなゴミステーション兼複合施設「WHY」が完成予定。ゴミステーションだけでなく、町民の人々がゆっくりとお茶を飲めるスペースも併設。さらに観光や視察に訪れた人々が泊まれるホテル、循環型ライフ体験などのアクティビティーも計画中。建物自体も上勝町で伐採された杉材や不要になった窓枠や家具を活用するなどの徹底ぶり。

WHY
徳島県勝浦郡上勝町大字福原字下日浦94番地4
https://why-kamikatsu.jp/

上勝町民たちの活動と生活にも潜入!

1. 上勝町の歴史と未来を創るクラフトビール店
RISE & WIN Brewing

上勝町のゴミ問題に対する情熱に突き動かされ、2015年にオープンした「ライズ アンド ウィン」。建物はもちろん上勝町の杉材や不要になった建具を使用。店自慢のクラフトビールとBBQ料理を楽しむことができる。

廃棄対象になる柚香の皮を香りづけに!
廃棄対象になる柚香の皮を香りづけに!

クラフトビールは上勝特産の柚香を使用したフルーティーな味わいが特徴で、不要になった柚香の皮で香りづけをする。店内には、買い付けたサステナブルな雑貨や量り売りのお菓子も販売し、さらに空ボトルを持っていけばビールも量り売りしてくれる。2016年には東京・東麻布にも出店し、上勝町の取り組みは着々広がり始めている。

RISE & WIN Brewing
住所/徳島県勝浦郡上勝町大字正木平間237-2
TEL/0885-45-0688
営業時間/水〜金 11:00〜17:00(17:00以降予約制)
土・日・祝 10:00〜18:00(18:00以降予約制)
定休日/月・火

KAMIKATZ TAP ROOM
住所/東京都港区東麻布1-4-2 THE WORKERS & CO 1F
TEL/03-6441-3800
営業時間/月〜土 12:00〜15:00(L.O. 14:30)、18:00〜23:00(L.O. FOOD 22:00/L.O. DRINK 22:30)
定休日/日

2. 月ヶ谷温泉

廃棄になる木材を燃料に活用エコホテルへと進化

創業明治30年から4代続く月ヶ谷温泉は、2005年のリニューアルを機に「エコホテル」を宣言。木質チップボイラー機を設置し、CO₂削減を目標に木質バイオマス燃料を用いて温泉を沸かし、給湯や部屋暖房等にも使用している。出た灰は、農家に譲渡し肥料として活用。健康にも環境にも良い温泉に浸かりながら、上勝町の広大な景色を眺めるのは最高のひと時。

月ヶ谷温泉
住所/徳島県勝浦郡上勝町福原平間71-1
TEL/0885-46-0203
営業時間/10:00〜20:00
定休日/第2水曜(祝日の場合は営業)
www.e-kamikatsu.jp/

3. 上勝町の仙人・中村さんの家

牛小屋だった建物を2ヶ月間かけて自ら改装!
牛小屋だった建物を2ヶ月間かけて自ら改装!

何をして、しないかを選択する90%自給自足の暮らし

上勝町の仙人と呼ばれている中村修さんは、上勝町に移り住んで30年。以前ネパールに住んでいた時の生活を日本でもしたいと、上勝町にたどり着いた。山奥にある牛小屋を自ら改装し、野菜や家具など作れるものは自分で作っている。

ガスはあえて通さず、毎日火を起こして生活!
ガスはあえて通さず、毎日火を起こして生活!

「何をやって何をやらないかを選択することが大切」と話す中村さんは、100%ではなくあえて90%自給自足を実行。無理をせず楽しく工夫して生活することを心がけている。私たちの生活もできること、できないことを選択するという暮らしのヒントを教えてくれた。

編集後記 by 辛酸なめ子

上勝町に向かう車の中でラジオのスイッチを入れたら「ゴミを減らす3つのRがあります。Reduce、Reuse、Recycle……」といきなりゴミの話題が流れてきて鳥肌が。都会でのユルい分別を戒められたようです。トンネルを抜けてたどりついた自然豊かな上勝町。住人のゴミ意識は高く、生ゴミはコンポスト処理し、ゴミは洗って干すという習慣に驚かされ、実際にゴミステーションに行ったらほぼ無臭でした。都会では忙しくて無理だと思ってしまいますが、山に囲まれた施設でゆっくりゴミを分別していたら、時間の流れが全然違うように感じられました。リサイクルに出すと何円になって、処分だと何円かかると明記されていてモチベーションにつながります。ゴミについて考えることは地球について考えること……決して無駄な時間ではありません。そして山に住む仙人中村さんは、あくせく仕事する時間こそもったいないと考えて、自分の時間を自分のためだけに使い、ほぼ自給自足生活をされていました。澄んだ瞳で見つめられ、都会でスポイルされた自分を実感。不要なゴミや雑念は自分の内側にも溜まっているようです……。

 


 

Illustration:Nameko Shinsan Text & Edit:Saki Shibata

Profile

辛酸なめ子Nameko Shinsan 漫画家、コラムニスト。東京生まれ、埼玉育ち。武蔵野美術大学短期大学部グラフィックデザイン専攻出身。著書に『女子校育ち』『辛酸なめ子の現代社会学』『魂活道場』、小説『ヌンラン』など。雑誌やウェブサイトでの連載も多数。

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