世界を飛び回るCHAIにインタビュー「楽器はバディ!」 | Numero TOKYO
Interview / Post

世界を飛び回るCHAIにインタビュー「楽器はバディ!」

旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.99はCHAIにインタビュー。

左からユナ(Dr, Cho)カナ(Vo,Gt)双子のマナ(Vo, Key)ユウキ(Ba, Cho)
左からユナ(Dr, Cho)カナ(Vo,Gt)双子のマナ(Vo, Key)ユウキ(Ba, Cho)

世界中にジャンルレスな音楽性と“NEO かわいい”スピリットを拡大し続けている4人組バンド、CHAI。9月22日に全世界同時リリースされる4thアルバム『CHAI』は、2022年秋に行った海外ツアー中に、ロサンゼルス、ニューヨーク、メキシコシティ等で制作/レコーディングされ、日本人としてのアイデンティティをCHAI流に表現した“CHAI POP”を提示した作品だ。2年ぶりのアルバムに込められた思い、世界中を飛び回る日々におけるオン/オフの切り替え、そして、オフの時間から受けるインスピレーションとは? CHAIも愛用する楽器メーカーのFenderがブランド創設から77年の歴史において初めてオープンさせた旗艦店「FENDER FLAGSHIP TOKYO」で取材を行った。

楽器に囲まれる夢の国「FENDER FLAGSHIP TOKYO」

──こうやって楽器に囲まれる空間というのはいかがですか?

マナ「安心感がありますね。同時に触れてみたい、弾いてみたいっていう気持ちも湧き上がってきます」

ユナ「うん、ワクワクもするね。それぞれ年代が違うんだろうし」

マナ「『誰が弾いてたギターなんだろう?』と想像したりもしますし、夢が詰まってる感じがする」

カナ「常に家にあるものだから安心感もあるし、年代や形が違うギターがたくさん揃っていて、『これはどんな音が出るんだろう?』っていうワクワク感もありますね」

ユウキ「迫力がすごくて家では絶対に味わえない空間。ディズニーランドに行って興奮するようなアドレナリンが出る感覚があります」

──楽器は皆さんにとってどんな存在でしょうか?

マナ「分身です。ピカチュウとサトシみたいなバディ感があります」

カナ「私にとってもバディですね。『ジョジョ(の奇妙な冒険)』でいうところのスタンドというか(笑)、別々のものではなく自分と一体化している感覚があります」

2階の特設防音室では、ギターやベースをアンプにつないで⼤⾳量で試奏できる。
2階の特設防音室では、ギターやベースをアンプにつないで⼤⾳量で試奏できる。

ユナ「私はドラムと向き合っていると雑念がなくなって癒やしに近い感覚を覚えるんですよね。その時間が好きですね」

マナ「ユナは高校時代からめっちゃストイックなんです。本当にドラムが好きだよね?」

ユナ「嬉しい! ドラムはなくてはならない存在ですね」

ユウキ「いつも使っているものに対してはバディ感があるけど、こうやっていっぱい並んでいる光景を見るとまずルックスから刺激をもらいます。ギターという楽器ひとつ取っても柄や形が様々で、アート作品みたいですよね。いつも使ってはいますが、改めて面白い楽器だなって思います」

――カナさんにとって、ギターの一番の思い出というと?

カナ「高校生の時にマナとユナと私の3人が同じ軽音楽部に入っていたんですが、とりあえずアコギをやろうという部活だったので、まずアコギをひたすら練習していたんです。アコギはエレキに比べて弦が硬いので、音を出そうと意識しないと音が出ないけれど、エレキは極端なことを言うとアンプさえあれば音が出るんですよね。それでアコギが十分弾けるようになってからエレキを弾いた時に楽に弾けたし、『ギターが違うと弾き方も音も違うんだ』って思ってすごくワクワクした記憶があります。あと、私はカッティングが好きなのでリズムギターが好きで、それを弾いた時に『私のギターってこれだ!』っていう確信が持てた瞬間が一番思い出深いです」

螺旋階段にはFenderのアイコニックな広告写真やフェンダーを愛するアーティスト達の写真が展示されている。
螺旋階段にはFenderのアイコニックな広告写真やフェンダーを愛するアーティスト達の写真が展示されている。

最新作ではオリジナルジャンル”CHAI POP”を確立

──セルフタイトルのニューアルバム『CHAI』はどんなアルバムになりましたか?

マナ「今回私たちがやりたかったのはニューウェーヴパンクポップみたいな方向性で、自分たちの中では“CHAI POP”って呼んでるんですね。そういうアルバムを目指した結果、ジャンルレスな作品になったので、セルフタイトルにしました」

──昨年秋の海外ツアー中に、ロサンゼルス、ニューヨーク、メキシコシティ等で制作とレコーディングをされたそうですが、そういう環境で作ったことはどんな影響がありましたか?

マナ「すべてのことから影響を受けるんですよね。それこそ楽器からも影響を受けますし、ツアー中の出来事、目の前に広がるお客さんの顔や歌ってる姿、ライブ中の気持ち。それら全部をレコーディングに落とし込めることって本当に幸せなことだと思うんです。苦しいことも悩むことも多くて、毎日フラストレーションを溜めながら曲を作ることって、私のミュージシャン人生にとってはすごく良いことなんです。イライラしたものを自然に出す、排泄物みたいなものが曲です。人種の問題とか難しいことはいっぱいありますが、もっと簡単で単純に捉えられると思っています。『世界って思ったより狭いんだ』っていうことを感じながら、アルバムを作れたことが一番良かった。今回は前作の『WINK』でもご一緒した海外在住のプロデューサーRyu Takahashiを迎えて、LAやニューヨーク、メキシコのエンジニアと一緒に楽曲制作をやっていきました。そこで私たちから自然に生まれるメロディーが海外の人にとってはすごく新鮮でした。日本人からしたら馴染みのあるメロディーを海外のアーティストのアレンジと合わせるとすごく新しいものになったんです。それが“CHAI POP”だと気づいた時はすごく嬉しかった。面白い制作でしたね」

──既に配信されている楽曲「PARA PARA」はパラパラを題材にしていますが、他にも「MATCHA」や「KARAOKE」という曲が収録されていたり、日本ならではの言語が多く使われています。それも“CHAI POP”と関連しているのでしょうか?

マナ「そうだね。海外に行けば行くほど、日本が素晴らしいということに気付きます。自分たちが普通に使っていた言葉が、現地の人にとってはめちゃくちゃ珍しかったり。それで、本当に好きだった抹茶や憧れていたパラパラとかと向き合ってみたら面白味を感じて、題材にしました。それもあって、すごくジャンルレスになったと思います。その延長線で音楽の1個のジャンルとして“CHAI POP”というものが自分たちの中で出来上がっていって。今後も取り組んでいきたいものが生まれて、音楽を作る人生における未来がすごく明るくなったと思っています」

──ユウキさんは歌詞を書く機会も多いですが、“CHAI POP”をどう言葉に落とし込んでいったんですか?

ユウキ「海外に行けば行くほど、日本の歴史の奥深さ、そこに詰まっている文化に対するオリジナリティを感じるんですよね。私は日本で育った日本人ではあるけれど、外から日本を見る機会があったおかげで、日本ならではの面白さに気付けました。海外のカルチャーに憧れもあるし、影響もたくさん受けているけれど、日本の良さを発信する側になっていかないと廃れていってしまうものもあるんだろうなって思いました。日本人だからこそのカルチャーを私たちなりにアップデートして、次の世代にもつないでいくことができたらアーティストとして一番かっこいいなとも思ったんです。音楽に乗せることで国境や境界線も超えられて、海外の人にも、そして改めて日本の人にも面白がってもらえるんじゃないかなって思ったので、アルバムにはそういうキーワードを入れていきました」

1階には注目の新製品がずらり。CHAIが着用しているTシャツなど、アパレルアイテムも充実。
1階には注目の新製品がずらり。CHAIが着用しているTシャツなど、アパレルアイテムも充実。

オフのできごともすべてインスピレーション

──昨秋の海外ツアーは制作があったのであまりオフは取れなかったそうですが、もしオフがあったら何をしたかったですか?

マナ「アメリカのディズニーランドに行きたかったです。それと、3日ぐらいオフがあったら砂漠に行きたかった! 旅行に行きたいね」

カナ「私も誰もいなくて建物も見えないような砂漠に行きたい。端から端まで砂漠の空間ってなかなか見る機会がないし、そもそも私は誰もいなくて建物も見えない空間がすごく好きなんです。竹富島とか、端から端まで海と空しか見えない。そういう場所に行くといろいろなことを考えさせられて人生観が変わります」

ユナ「ちょっとしたオフがあると、数時間をかけて遠出をするというより、近辺の古着屋さんに行ったり、その土地ならではのごはんを食べることが多いんです。もし十分に時間があったらグランドキャニオンやマナとカナが言ったみたいに砂漠にも行きたいですね」

ユウキ「私は絵を描きたいですね。日本でもオフがあると絵を描いたり、自分がやっているYMYMというブランドの制作やポップアップイベントをやることが多いです。あまりオンとオフを分けないタイプで、基本オンで寝る時だけオフっていう感じなんです。だからもし海外でオフができたら、現地のアーティストと一緒に壁画を描いたりライブペインティングをしたいですね。みんなと反対だけど(笑)、ニューヨークとかたくさん人がいる場所に行って、人に会ってたくさん話して一緒にモノづくりをしてクリエイターとつながりたいです。日本だと、例えば壁に絵を描くようなことはハードルが高いですが、ニューヨークとかの方が気軽にそういったことができる。地面に作品を並べて販売したり、その場で似顔絵を描いたり。そういうことを思う存分にやって、その国で自分のアートがどう受け取られるのかという挑戦をしてみたいですね。いろいろ妄想が広がります」

地下にはフェンダーオリジナルのカフェスペースも。
地下にはフェンダーオリジナルのカフェスペースも。

──7月中旬には中国ツアーがありますが、そこでのオフでやりたいことというと?(※取材は7月上旬)

マナ「ちょうどさっき話してたんですが、みんなで万里の長城に行ってみたいです。『キングダム』が好きなので(笑)」

カナ「中国はまだ1回しか行ったことないんですよね」

マナ「そうだよね。前回も一週間くらいのツアーで、今回も同じくらい。観光スポットに行きたいよね」

──オフの時間はどんな風に制作にインスピレーションを与えますか?

カナ「私は都会にいる時は忙しない雰囲気の影響でテンポの速い曲が生まれるんですよね」

マナ「分かる! 私は人にめちゃくちゃ影響を受けるのと、あとは動物にも影響を受けます。生物と触れ合うとインスピレーションをもらえますね」

ユナ「私はオンオフの区別を付けたくても付けれないタイプで(笑)。『オフするぞ!』って思って旅行に行っても、流れている音楽をめっちゃ聴いちゃったり、つい音楽のことを考えちゃいます」

マナ「分かる!」

ユナ「生活の一部になっちゃってるよね。シャザムして何の曲か調べたり。そうやって無意識的に日常からインスピレーションを得ていることが多いかもしれないです。最近はまっているのは、アフリカ系の民族が川の水面を叩いて作るビートの音源です。水面を叩くパンパンパンって音と、アアアア~っていう歌が聞こえてくる曲を最近家で聞いています(笑)。『こういうアプローチが一番ビートを楽しんでるんじゃないかな』って思ったんですよね。水面を叩く音にすごく躍動感があって、それと声だけですごくシンプルなのにかっこいい。『シンプル・イズ・ベストなんだな』って思いましたし、『かっこ良かったらここまでそぎ落としちゃっていいんだな』っていうことを日常の中で感じました」

──もし1カ月休みがあったら何をしたいですか?

マナ「最近ニュージーランドから帰ってきたばかりなんですが、すぐニュージーランドに帰りたいです(笑)」

カナ「私はまだ行ったことのない日本の島に行きたい。島巡りがしたいです」

ユナ「私はアメリカのセッション箱に行ってセッションがしたい。CHAIのドラムっていう看板を外して、一ドラマーとして実力を試したいですね。多分けちょんけちょんにされると思いますが、それを受けてみたいです」

ユウキ「私は最近いろんな手法のクリエイターの人と友達になる機会が増えていて、『作品の作り方ってそんなにたくさんあるんだ』って思ったばかりなので、もっとクリエイターの人に会っていろんなことを教えてもらう勉強の時間にあてたいです。全部を自分でやりたいと思うタイプなので、アウトプットの方法をたくさん持っていることってとても良いことだなって。いろんなことを教えてもらって、全部を自分ひとりで作れるようになりたい。その学びがお休み明けに何かにつながるなら嬉しいですね。ずっと動いていたいんです」

CHAI『CHAI』
発売日/2023年9月22日
価格/通常盤¥2,750
https://chai-band.com/

FENDER FLAGSHIP TOKYO
フェンダー フラッグシップ トウキョウ

住所/東京都渋⾕区神宮前1-8-10
営業時間/11:00〜20:00(年中無休。年末年始を除く)
HP/www.fender.com/ja-JP/fender-flagship-tokyo.html

Photos :Takao Iwasawa Interview & Text:Kaori Komatsu Edit:Mariko Kimbara

Profile

CHAIちゃい 双子のマナ(Vo, Key)カナ(Vo,Gt)ユウキ(Ba, Cho)ユナ(Dr, Cho)の4人組で結成されたNEO - ニュー・エキサイト・オンナバンド「CHAI」。“NEOかわいい”をコンセプトに掲げ音楽活動を行う。2020年にはUSの老舗レーベルSUB POPと契約し、日本国内にとどまらずワールドワイドに活動中。4thアルバム『CHAI』を23年9月に発売予定。

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