玉城ティナ インタビュー「リリー=ローズ・デップ演じるポップアイドルの光と闇に魅了されて」| Numero TOKYO
Interview / Post

玉城ティナ インタビュー「リリー=ローズ・デップ演じるポップアイドルの光と闇に魅了されて」

旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.98では玉城ティナにインタビュー。

リリー=ローズ・デップとエイベル・“ザ・ウィークエンド”・テスファイが主演、ジェニー・ルビー・ジェーン(「BLACKPINK」ジェニー)やトロイ・シヴァンが出演して話題となったドラマ『THE IDOL/ジ・アイドル』。先日、5話でシリーズが完結し、賛否両論の嵐の中、日本語吹替版が配信スタート。主役のジョスリンの吹替を担当する玉城ティナは、ジョスリンの心の動きをどう感じたのだろうか。リリー=ローズ・デップの魅力、最近のプライベートについても聞いた。

「ジョスリンは被害者ではなく、自分から望んで操られていたのでは」

──吹き替えのオファーがあったときはどうでしたか?

「もともとリリー=ローズ・デップのファンだったので、数年前にこのドラマが制作されるというニュースを聞いてから、いち視聴者としてとても楽しみにしていました。でも、まさか吹き替えのお仕事をいただけるとは思っていなかったので、ただ驚きましたし、とても光栄でした」

──玉城さんからみて、リリー=ローズ・デップの魅力とは?

「まず、彼女の顔立ちとスタイルがとても素敵。それにどんな服でも彼女らしく着こなせて、どんなことでも自分のものにしていくところに惹かれます。それは、エンタテインメント業界で生きていくには、不可欠な要素かもしれませんね」

─声の仕事は『竜とそばかすの姫』以来ですが、ドラマの日本語吹き替えは初ですか?

「そうです。アニメの場合は、台詞に感情を込めて演じることができたのですが、吹き替えの場合は、リップシンク(登場人物の口の動きと台詞を合わせること)をしながら決められた時間内に台詞を言い切らなくてはいけないので、大変でした。それに、英語から日本語に言語が変わるとテンションも変わるので、少しオーバーアクション気味に発声しながらも、ジョスリン(リリー=ローズ・デップ)の持つ艶やかさを失わないように意識しました」

──声を演じるジョスリンは、1話から難しい立場に置かれていました。心のバランスが崩れているのに、レコード会社とエージェントが復帰させようとする。そこにテドロス(エイベル・“ザ・ウィークエンド”・テスファイ)が近づいてくるというストーリーでした。

「どの時代でも、心に闇を抱えたスターが人気を集め、それを題材にした映画がありますよね。だから、今回もそういった作品の一つではあるのですが、ジョスリン自身は被害者ではないんですよ。彼女はテドロスに操られながらも、それを望んでいるようなところがあって。考えてみれば、誰かと出会って考え方や人生が変わることはみんなが経験していることだし、そういう出会いはみんなが待ち望んでいたりもするので、ジョスリンだけの特殊な物語ではないと思います」

──吹き替えしながら、感情移入してしまった場面は?

「1話から、こちらまで胸が苦しくなる場面がいくつもありました。でも、泣いたり笑ったり、ジョスリンの感情の振り幅が大きいからこそ、周囲の人たちが魅了されるわけですよね。だから、感情の起伏の激しさを声でも表現するように意識しました。今回、初めて知った言葉なんですが、台本に『泣きAD(アドリブ)』という指示があったんです。実際の映像に合わせながら泣くアドリブをするということなんですけど、そこは自分自身がジョスリンを演じているくらいの気持ちで、声を出すように心がけました」

「セックスシーンはタブーじゃない。惹かれ合う人間同士なら普通のこと」

──このドラマにはセックスの描写も多いのですが、それに対しては抵抗はありませんでしたか? 記事にするときに「玉城ティナが大胆挑戦!」と書きたくなるところですが。

「そう表現されるかもなと思っていましたけど(笑)、私自身そういう意識はありませんでした。生身の人間がお互いに惹かれ合っていたら、こうなりましたというくらいのことで。性的なことは普段オープンにされてないから、画面でタブーを見せつけられたという気持ちになるのかもしれません。でも、よく考えると普通のことだったりするんですよね。吹き替えをするときも、単に発声の技術の一つなので、挑戦というより今回も頑張りました、という感じです」

──玉城さんもジョスリンと同じく、表舞台に出る仕事をしていますが、吹き替えをしながら、ジョスリンの心情に共感するところはありましたか。

「理解できるところもあるけれど、すべてではなくて。きっと、輝き続けているジョスリンだから、強い光の反対に濃い影が生じてしまって、光と影の両方から手を引っ張り合っている状態なのかもしれません」

──テドロスのように、怪しい魅力をまとった人には魅力を感じますか?

「本名もわからないような人は、さすがに怪しすぎるけれど(笑)、恋愛の場面に限らず、何かに誘導するように話す人っているじゃないですか。テドロスほどじゃないにしても、この人と話してるといつの間にか力関係を下にされてしまうなという人は、なるべく避けるようにしています。ただ、自分とは違う考え方の人に出会うと、一瞬だけ、劇的に楽しくなりますよね。その関係が長く続くかは別の話ですが、テドロスはジョスリンが求めるものを与えてくれたし、きっと彼女はこれまでも、そういう出会いと別れを繰り返してきたんじゃないでしょうか。それに、ジョスリンは常に周囲からあらゆる欲望を向けられているので、慣れているようにも感じました」

──今作は、アイドルの光と影を描いていますが、玉城さんにとって、アイドル的な存在とは?

「2頭身のかわいいキャラクターが大好きなんです。ちいかわとか、サンリオのキャラクターとか、あらゆる癒やしキャラが大好き。邪念がなくて、ただ私たちを喜ばせることだけを考えてくれているようで、ただ側にいてくれるだけで愛おしい。キャラクターはいつも同じ表情だから、こちらが勝手に感情を投影することができるし、それをしても許される存在という気がして。先日もサンリオピューロランドに遊びに行きましたし、ぬいぐるみやキャラクターのグッズもたくさん持っています。だから『推し』といったら、かわいいキャラクター全般です」

──ご自宅にはぬいぐるみやキャラクターグッズがたくさんあるんでしょうか。

「実は、インテリアとキャラクターの雰囲気が合わないので、いつもはしまってあるんですが、わりと頻繁に引っ張り出して一緒に過ごしています。今回の台本を読んでいるときも、丸テーブルの向かいのイスにぬいぐるみを座らせていました。気を使わなくていい同居人のような存在になっています」

「友達の実家を回ったり、国内のいろんな地方を旅することが楽しい」

──プライベートの過ごし方についてお伺いします。休みの日はどうやって過ごしていますか?

「最近改めて、ひとりで映画館に行くことが増えました。自宅でも映画を見るけれど、映画館で物語に没頭する時間は、私の人生に必要だなって。最近観たのは『THE IDOL/ジ・アイドル』にも出演してた、スザンナ・サンの『レッド・ロケット』。彼女は映画館のロビーで監督にスカウトされたそうですが、まだまだすごい才能をもつ人がたくさんいるんだなと思いました。そんなすごい才能を2,000円前後で観られると考えると、映画はお得ですよね。それから、まとまった休みをもらえるときは国内旅行に行きます。日本は地域ごとに特性があるから、行ってみたい場所がたくさんあって」

──いま気になるスポットはありますか。

「北海道と四国です。私はもともと都会が好きだったんです。東京もニューヨークも、世界中の都市と言われるところは好きでしたけど、最近、都会は仕事をするための場所なのかもしれないと思うようになって。先日も軽井沢と奄美大島に行きました。今はいろんな地方に足を運ぶのが楽しいです。私は沖縄の浦添市出身なんですけど、沖縄の良さも大人になって初めてわかりました。上京したのが14歳だったので、沖縄の穏やかさに気が付かないまま東京に来てしまって」

──沖縄でおすすめの場所は?

「帰省するとだいたい実家にいるので、観光地はあまり知らないんですけど、去年、小学校からの友達と瀬底島のヴィラに泊まったんです。名護のあたりから車で行ける島なので、友達に運転してもらって、すごく楽しい旅になりました。大人になって、昔とは違う視点から地元を見ると、すごくいいところなんだとあらためて気づくことが多いです」

──印象に残った旅先は?

「先日、友達の実家に泊まるためだけに神戸に行きました。観光せずに、ただ実家の安らぎを堪能させてもらって。友達の実家を回るのが好きで、別府出身の友達の実家にもお邪魔したことがあります。1泊はひとりで温泉に入って、1泊だけご実家に宿泊させてもらったんですけど、みなさん温かく迎えてくださるので、家族気分を楽しませていただきました」

──友達の実家を回るって面白いですね。実家じゃない旅先はどうやって決めていますか。

「温泉だったらできるだけ掛け流しがいいとか、自分なりの細かいルールはあるんですけど、ホテルや旅館重視で選んでいることが多いかもしれません。よくネットでホテルや旅館を調べて、気になる宿をチェックしているんです。コロナ禍のときも、東京のホテルでしばらくぼーっとしていました。日本は、都会の近くに気軽に行ける温泉地がありますよね。東京だったら湯河原とか。そういうよく知られているところをもう一度調べてみると、意外な発見があって、自分のお気に入りを見つけることができたりするんです。そんなふうにプライベートもマイペースに楽しんでいます」

ドレス¥47,300/Fetico(ザ・ウォール ショールーム 03-5774-4001) イヤリング¥81,400 リング¥107,800/すべてCharlotte Chesnais(エドストローム オフィス 03-6427-5901)

『THE IDOL/ジ・アイドル』

精神的なストレスからツアーをキャンセルしたジョスリン(リリー=ローズ・デップ)は、最高でセクシーなアメリカのポップスターになることを決意する。そんな彼女の情熱に火をつけたのは、暗い過去を持つナイトクラブのオーナー、テドロス(エイベル・”ザ・ウィークエンド”・テスファイ)だった。愛に目覚めたジョスリンは、輝かしい新たな高みへと導かれるのか。それとも自らの魂の暗部へと、深く導かれることになるのか。

監督/サム・レヴィンソン
日本語吹替キャスト/玉城ティナ、三宅健太、戸松遥、落合福嗣、ふくまつ進紗ほか
出演/エイベル・“ザ・ウィークエンド”・テスフェイ、リリー=ローズ・デップ、トロイ・シヴァン、ダン・レヴィ、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、イーライ・ロス、ハリ・ネフ、ジェーン・アダムス、ジェニー・ルビー・ジェーン

U-NEXTにて見放題で独占配信中

©️2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved HBO(R) and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

Photos:Kisimari at W Styling:Yoko Irie Hair & Makeup:Aiko Okazawa Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Sayaka Ito, Saki Tanaka

Profile

玉城ティナTina Tamashiro 1997年10月8日生まれ、沖縄県出身。講談社主催の「ミスiD2013」で初代グランプリに輝き、14歳で講談社『ViVi』の最年少専属モデルとなる。2014年ドラマ『ダークシステム恋の王座決定戦』で俳優デビュー。映画デビュー作は『天の茶助』(2015年)。2019年に『Diner ダイナー』『チワワちゃん』『惡の華』、主演作『地獄少女』に出演。第44回報知映画賞新人賞を受賞。劇場アニメ『竜とそばかすの姫』では声優に挑戦。WOWWOWプライム「アクターズ・ショート・フィルム2」の「物語」では、出演のほか監督・脚本を手がけた。今年の公開作は映画『恋のいばら』『零空』Huluドラマ『社畜OLちえ丸』『君と世界が終わる日に シーズン4』など。8月25日(金)には最新作『#ミトヤマネ』が公開になる。

Magazine

DECEMBER 2024 N°182

2024.10.28 発売

Gift of Giving

ギフトの悦び

オンライン書店で購入する