【Tシャツと私 vol.3】 森七菜インタビュー「役に合わせてTシャツを選ぶ」 | Numero TOKYO
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【Tシャツと私 vol.3】 森七菜インタビュー「役に合わせてTシャツを選ぶ」

Tシャツがスタイリングの主役になる季節がやって来た。さまざまな役柄でTシャツを着用してきた俳優たちが、この夏リアルに着たいTシャツスタイルを披露。第1回目はアニメ映画『天気の子』やNetflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』等で確固たる演技力と瑞々しさを放つ森七菜。絶賛公開中の最新主演映画『君は放課後インソムニア』についても聞いた。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年7・8月合併号掲載)

パールのアクセサリーでTシャツをドレスアップ「パールのアクセサリーでTシャツもクールで華やかな印象になるんですね。このまま打ち上げに繰り出したいです(笑)」Tシャツ¥8, 250/Journal Standard Luxe(ジャーナル スタンダード ラックス 表参道店) ジャンプスーツ¥40,700/Moy Store (モーイストア) パールネックレス(40 ㎝)¥ 292 , 600、(60 ㎝)¥391, 600/ともにCherry Brown(チェリーブラウン) シューズ スタイリスト私物
パールのアクセサリーでTシャツをドレスアップ「パールのアクセサリーでTシャツもクールで華やかな印象になるんですね。このまま打ち上げに繰り出したいです(笑)」Tシャツ¥8, 250/Journal Standard Luxe(ジャーナル スタンダード ラックス 表参道店) ジャンプスーツ¥40,700/Moy Store (モーイストア) パールネックレス(40 ㎝)¥ 292 , 600、(60 ㎝)¥391, 600/ともにCherry Brown(チェリーブラウン) シューズ スタイリスト私物

古着っぽいくたっとしたTシャツが好き

──最近買ったTシャツは?

「よく使う古着のWebサイトで、年配の男性の写真がデザインされたラグランTを買いました。袖の色がかわいいのと切りっ放しでクルクルしているところに惹かれました。夏は完全にTシャツ派で、薄めの生地で古着っぽいくたっとした雰囲気のものが好きです。チェーンのブレスレットとか、何か一つアクセサリーを加えて抜け感をつくるスタイルが好きです。Tシャツ+ジーンズにキラッとしたアクセサリーを合わせるシンプルなスタイルに憧れがあります」

──思い入れのあるTシャツは?

「オーディションに受かったときに着ていたTシャツは縁起が良い気がして捨てられません。ただ、役に合わせたTシャツを着ていくので、二度と着れないことが多いです。『舞妓さんちのまかないさん』で演じたキヨは青森の田舎から出てきた子だったので、オーディションには野暮ったさのある青と白のかなり太めのボーダーTを着ていったら、プロデューサーさんに「そういう服はどこで見つけてくるの?」と言われました(笑)。お芝居を始めてから買うお洋服は役に左右されるようになりました。今となっては絶対に着ないミニスカートがクローゼットに入っていたりします。そこまで役に没頭できているんだなと思うと安心しますね。映画『君は放課後インソムニア』で演じた伊咲は、食べ物のイラストが描いてあるTシャツだったり、キュートとボーイッシュが共存したようなTシャツを劇中で何度も着ていて、それに影響されて地元の石川県で買った白Tにかわいいフォントで“能登ミルク”って赤字で入ったTシャツを撮影現場に着ていきました。そうしたら共演者の奥平大兼くんがすごくオシャレで「私もう帰ります!」って思いました(笑)」

自分らしい遊びも加えながら、楽しく役作りができた

──『君は放課後インソムニア』は元々原作マンガのファンだったそうですね。

「そうなんです。『君は放課後インソムニア』の原作と出合った時ときは、そんなにマンガを読む習慣がなかったんですが、たまたま自分が出ていた『週刊ビッグコミックスピリッツ』に掲載されていたのを読んで『面白い』って思って単行本を買いました。原作者のオジロマコトさんが今回の映画化にあたり『夢が叶った』と言ってくださっていて、私も『実写化するなら絶対に参加したい』と思っていた作品だったので同時に私の夢も叶い、本当にかけがえのない作品になりました。自分が誰かの夢を叶える一部になるとは思ってもいませんでした」

──脚本を読んだときはどう思いましたか?

「連載を2時間に凝縮するので『どの部分が使われるんだろう』という気持ちはあったんですが、脚本を読んでみたら、完結しているというよりは伊咲と丸太(がんた)のこれからを予感させるようなストーリーになっていたのが嬉しかったです。今も連載は続いているので、映画を観て原作も読んでくれる人がいたらいいなと思いました」

──伊咲は悩みを抱えながらも、明るく力強く生きていますが、演じる上でどんなことを意識しましたか。

「伊咲と私は眉毛が太いところや明るく振舞うところが似ていると友達から言われていたので、森七菜にならないよう、でも私が演じた意味があるように気を付けました。原作の仕草とかをベースに、伊咲を吸収した森七菜としての遊びを加えました。池田千尋監督がその遊びの部分を喜んでくれて、カット尻を長くしてくれたりしたので、すごく楽しく役作りができました」

──役作りにおいて、そうやって自分から提案することは多いんですか?

「監督のスタイルや役に合わせて全くしないときもありますが、多いほうだと思います。池田監督は、例えば『このシーンの伊咲はこんなことを考えているんだと思うんだよね』と意見をくださったりして、それに対して私も『でもこういうことを考えている可能性もあるんじゃないですかね』とお伝えしりしたりして、密なやり取りができました。監督の作品や役への愛をダイレクトに感じましたし、私たちキャストの想いも救い上げてくださったのでやりやすかったです。いつの間にか監督と私たちの間で『とりあえずやってみよう』というワードが合言葉のようになっていて、信頼し合えている感覚がありました。言葉だけでなく、実際にお芝居で試してみることで、より作品が生ものになる気がして楽しかったですね」

──丸太を演じた奥平さんとの初共演はいかがでしたか?

「共演してみたいと思っていた俳優さんだったので、最初は単純に嬉しかったです。それに、丸太にもぴったりだと思ったので撮影に入るがとても楽しみでした。でも、現場に入る前は奥平くんのことを自分の世界観の中で生きている人なんじゃないかと勝手に思っていたんですが、お芝居の中で私のことを助けてくれたり、19歳という若さなのに、視野がとても広く、人に手を差し伸べるような優しさを持っている人なんだなと感じました。私が伊咲として何かを言っても丸太として必ず返してくれるので、憧れの俳優さんではありますが、相性の良さを感じて嬉しかったです。原作の伊咲と丸太は友達のような恋人のような相棒のような関係性ですが、映画ではその延長線のような2人でいられた気がしています。『この2人ならこのシーンの前後も冗談を言って笑い合っているんじゃないか』っていうことが、言葉には出さずとも暗黙の了解で、お互い同じようなことを考えてお芝居ができた気がしています」

──奥平さんはじめ同世代の共演者の方が多い現場だったと思いますが、どんな刺激を受けましたか?

「明るい雰囲気の中で高め合いができた気がします。ひとつ前の作品の『銀河鉄道の父』では監督に『その芝居じゃダメだ』と渇を入れられながら撮影が進んでいくようなところがありました。そうやってダイレクトに厳しいことを言っていただいたのは初めてのドラマ以来だったので『ありがたいな』って思って、興奮しました(笑)。その引き締まった気持ちのまま、『君は放課後インソムニア』の現場に入れた気がしています」

──伊咲と丸太は不眠症という悩みを共有し、徐々に惹かれ合っていきますが、その関係性をどう思いましたか?

「2人は恋や愛といった言葉では片づけられないような運命的な関係性に思えたので、実際に私にもそういう人ができたらいいなと思いました。お互いのことが好きで、この先付き合って、もし別れたとしても人生においてお互いの存在がすごく大切で、それはずっと続いていくんじゃないかなって思うぐらいの強い結びつきを感じました。私は家族以外の人には気を使ってしまって、ありのままの自分は見せられていない気がするので、そういう存在がいるのは羨ましいです」

悔しさと嬉しさの繰り返しのなかで

──伊咲はやがて天文部の活動に熱中していきます。森さんにとって熱中できることというとやはりお芝居になるのでしょうか?

「お芝居だけですね。子どもの頃、いろいろな習い事をやらせてくれたんですが、どれも続かずに唯一お芝居しか続いていないんです」

──そこまで魅了される理由というと?

「ずっと、自分のお芝居に対する手応えがあるかないかの間でキャッチボールされている感覚というか。誰かが『あのお芝居良かったよ』と褒めてくださったとしても、自分的には『ダメだったな』って思うと、また揺り戻しが起こる。私にとってお芝居の世界は、そういう悔しさと嬉しさの繰り返しでできているので、なかなか依存性があるなって思います」

──満足することはあるのでしょうか?

「褒めていただけるともちろん嬉しいんですけど、『100%その言葉を信じていいものなのか』って思っちゃうんです。でもその気持ちがまたモチベーションに繋がります」

──お芝居の楽しさは何か変化していきましたか?

「以前は今お伝えしたような、自分の感情の中のキャッチボールの揺れ幅を味わうためにお芝居をやっていたところがありました。『いつまで自分は自分のためだけにお芝居をやり続けるんだろう。でも自分がやりたくてやってるんだから、誰にどう思われてもいいや』と思っていたというか。でも、例えば『君は放課後インソムニア』のロケ地である七尾市の方が協力してくださったり、ファンの方に応援の声をいただいたりすることで、『その方たちのためにも頑張ろう』っていう気持ちがここ数年で生まれてきました。『七尾の人に納得してもらいたい』とか『ファンの方に納得してもらいたい』っていう風に心から思えるようになったのはすごく大事なことだと思いますし、自分がそういう気持ちを持てるようになったことに対して安心感があります。ただ、実際お芝居をしている最中は、誰も観ている人がいない前提で演じなければいけないので、その気持ちは一旦なくして集中しています」

映画『君は放課後インソムニア』

石川県七尾市に住む高校一年生・中見丸太(奥平大兼)は、不眠症のことを父親の陸に相談することもできず、ひとり憂鬱で孤独な日々を送っていた。そんなある日丸太は、学校で使われていない天文台の中で、偶然にも同じ悩みを持つクラスメートの曲伊咲(森七菜の)と出会い、その秘密を共有することになる。天文台は、不眠症に悩む二人にとっての心の平穏を保てる大切な場所となっていたが、ひょんなことから勝手に天文台を使っていたことがバレてしまう。だが天文台を諦めきれない二人は、その天文台を正式に使用するために、天文部顧問の倉敷先生、天文部OGの白丸先輩(萩原みのり)、そしてクラスメートたちの協力のもと、休部となっている天文部の復活を決意するが――。

原作/オジロマコト『君は放課後インソムニア』
監督/池田千尋
脚本/髙橋泉
出演/森七菜、奥平大兼、桜井ユキ、萩原みのり、工藤遥 ほか
配給/ポニーキャニオン
全国公開中。

http://kimisomu-movie.com

Photo:Takao Iwasawa Styling:Kaho Yamaguchi Hair & Makeup:Ai Miyamoto Interview & Text:Kaori Komatsu Edit:Mariko Kimbara

Profile

森七菜Nana Mori (もり・なな) 2001年、大分県出身。17年、映画『心が叫びたがってるんだ。』で映画デビュー。19年の映画『天気の子』に抜擢され注目を浴びる。20年、映画『ラストレター』で第44回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ多くの新人賞に輝く。現在、Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』が配信中。映画『銀河鉄道の父』が全国公開中。奥平大兼とW主演を務めた最新作『君は放課後インソムニア』が絶賛公開中。

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