池田エライザ インタビュー「芝居や音楽、どんな表現も自分のためにはやらない」 | Numero TOKYO
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池田エライザ インタビュー「芝居や音楽、どんな表現も自分のためにはやらない」

旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.81は俳優の池田エライザにインタビュー。 女優、モデル、映画監督、歌手とさまざまな顔を持ち、21年『バーバリー』の日本初のアンバサダーに就任したことでも話題の池田エライザ。10代・20代を中心に支持を集める若手作家Fの小説を原作とし、2022年1月21日より全国公開される映画『真夜中乙女戦争』に出演。東京破壊計画と恋の二者選択に揺れる主人公の “私”(永瀬廉)が想いを寄せる“先輩”を熱演するなかで自身にあった逡巡とは。また歌手ELAIZAとして多彩な表現で注目を集める彼女の創作活動やライフスタイルについても聞いた。

誰かに共感できなくても、そんな自分を否定しないでほしい

──『真夜中乙女戦争』の原作である、作家Fさんの小説を読んだご感想は。

「エンタメとして楽しむ以外の見方もできるのがこの作品の面白さ。本作の顛末に『どうしてこんなことになってしまったんだろう』と考えたり、『我々の世界を“爆発させない”ためにはどうするべきか』と想像したり。私は原作を初めて読んだときに、自分の暮らす世界がいかに可能性に満ち溢れているかに気づき、嘆きや戸惑いだけでなく安心感もおぼえました。そんな印象を与えることが映画の狙いの一つだと思っています」

──池田さんは主人公の“私”が想いを寄せる“先輩”を演じましたが、彼女についてどんな印象を持ちましたか。

「“先輩”は一見完璧なキャラクターですが、私からすればとても大学生らしい子。『誰かがやるはず』と皆が敬遠することも率先して引き受けるから傍目には愚かに映るけれど、その共感力と視野の狭さこそ“先輩”の美しさ。それに、対人関係における駆け引きを娯楽感覚で楽しむし、可愛げを出すことにも一切照れない。そういうところが私とは違うな、と(笑)。池田エライザという視点で“先輩”を捉えると『なんでそんなことをするのだろう?』と感じたり、無防備すぎて『気をつけて』と言いたくなるほど、彼女は自由。私は100%未熟で愚かで正義感の強い人間でいることを求められる立場なので余計にそう感じるのだと思いますが、そんなエゴを芝居で出さないことを今回演じる上で意識しました」

──確かに本作は登場人物全員の“キャラが立っている”と感じました。その位置付けも善悪、光と影がわりと際立つ形で描かれているというか。

「だからこそ本作をご覧いただいた方には、共感するキャラクターを見つけたら、その人になぜ共感するのか、掘り下げて考えてみていただきたいです。仮に悪役のキャラクターに共感したとしても、そんな自分を否定せずに、どういう部分に共鳴するのかを探ってみる。また東京近郊にお住まいの方は『TOHOシネマズ 六本木ヒルズ』まで足を運んで観てもらうのも良さそうです。映画が終わって外に出た時に、東京タワーを見るといろんな感情が湧くはず」

──本作の重要なシンボルとして描かれる東京タワー。池田さんの今の東京暮らしにおいて、東京タワーとはどんな位置付けですか。

「私にとっては自分の精神状態を表すバロメーター。昔、福岡と東京を飛行機で行き来していた頃はいつも東京上空から東京タワーをよく見ました。仕事が不安な時は東京タワーを見るとうんざりした気持ちになりましたし、逆に仕事が楽しみな時はシルエットが見えるだけですごく嬉しかった。今思えば、東京タワーに自分の未整理な感情を何でもなすりつけていました。高くて目立つので、あらゆる責任転嫁の標的にされて……。東京タワーにとても失礼ですね(笑)。東京タワーは高さ以外にも魅力がたくさんある、素敵な観光スポットです!

──また“私”は大学進学のタイミングで上京をし、東京という街に対して葛藤するシーンも。彼の心境に池田さんは共感しますか?

「うーん、しません! そもそも私のなかでは昔から東京=働く場所ですが、たまに言われる『都会の人は心が冷たい』などと思ったことは一度もない。偏見を持つのは好きじゃないし、日々の不満を東京のせいにする前に自分が動こうと思うタイプなんだと思います。日常に追われていると東京を離れて自然あふれる田舎に行きたいと感じますが、いざ帰省すると結局、手持ち無沙汰になったり。実際、緑が恋しくなったら代々木公園に行けばいいわけですしね(笑)」

歌うことはすごく自然体な行為

──池田さんは2021年11月にELAIZAとしてフルアルバム『失楽園』をリリースしました。この作品の世界観がどことなく『真夜中乙女戦争』に通じます。

「共存する感覚がありますよね。もともとユートピアよりディストピアという概念の方が私にはしっくりくるんです。ユートピアを築くにはきっといろんなものを見て見ぬ振りしなければいけない。一方、ディストピアって実は希望も孕んだ世界なのではないかなと。そんな私の思想が『真夜中乙女戦争』と『失楽園』の根底には共通してあると思います」

──池田さん演じる“先輩”が歌うシーンが『真夜中乙女戦争』にもありますが、『失楽園』にもELAIZAの奥行きを感じるアンセムがたくさん。池田さんの多彩な表現に驚きました。

「わあ、嬉しい。子どもの頃から音楽はいつも身近にあったので、歌うことって私にはすごく自然体な行為なんです。でも今回、初めての楽曲制作の工程にも何の違和感がなかったのは自分でもびっくりしました。映画も音楽も、やはり作っているときが一番。トラックをこつこつ組んだり、歌詞を書いたり、レコーディングをしたり……。全工程、楽しかったです」

──“先輩”の歌う姿や、ELAIZAの音楽に、池田さんの底知れない可能性を直感した人が多くいるはずです。池田さんのなかで“ここだけは譲れない”と感じる、表現の軸は何ですか。

「どれも自分のためではないですね。なので“こう見られたい”というエゴを入れない。だから音楽活動でも、曲調や歌詞が『失楽園』という一枚のアルバムのなかでコロコロ変わります。『エライザならこんな感じ』と言われて作るものはたかが知れているといいますか、面白みがなくなってしまう。だから私自身も受け手がどんな気持ちになるかだけを考えて表現に集中しますし、自分のなかで身近な人を思い浮かべて言葉を書く。その方が筆が進みます」

──なんとなく今の言葉からラブレターをつづるような姿を連想しました。いつかELAIZAのラブソングも聴いてみたいです。

「書きたいと思ったらきっと作ります。ただ、今の私にはラブソングは書けないかもしれません。基本的に波瀾万丈を好みませんし、恋人がいる/いないに関わらず穏やかな幸せが一番だと感じているので。それにわざわざ自分の想いを人様に発信することもないか、などと冷静に考えてしまいそうです(笑)」

“昔から動物にはなつかれるし、私もなつきます”

──現時点で世に出す予定はないけれど、作っているものなどはありますか。

「4コマノートに、すごくくだらない4コマ漫画を描いています。『ボトムスのお尻のとこが破けてた! わあぁ』みたいなゆるさ(笑)。最近は外をうろうろ散歩したり、毎日まったりと過ごしています」

──インプットとアウトプット、両方が充実しているんですね。最近ふれたカルチャーで印象に残っているものは?

「のら猫や飼い猫の目線で撮影したドキュメンタリー番組。猫ちゃんの社会にもいろんな思考や配慮があり、コミュニティにおける振る舞いなどが全て最高でした。本能で相手を思いやれる猫は最強の生き物では⁉とすら感じました。うちにも今は猫が1匹と、それより前から飼っていた鳥が6羽います。家族全員おしゃべりな性格なので、お家がにぎやかです」

──池田さんは動物がお好きなんですね!

「昔から好きです。“猫可愛がり”はせず、私の動物に対するスタンスはわりとフラットだと思います。動物にはなつかれるし、私もなつく。人間も人間以外の動物もみんな生き物という点で同じなので、人間と動物を区別して見ることがないですね。例えばイルカだって超音波で会話できるなんてすごいと思いませんか? かたや私は超音波はおろか、しょっちゅう段差につまずく、そんな日々を送っている。生き物としてはまだまだですね(笑)」

『真夜中乙女戦争』

舞台は大都市、東京。大学進学で上京し、東京で一人暮らしを始めた大学生の“私”には友達も恋人もおらず、目標も張り合いもない鬱屈とした日々を過ごしていた。ある日、「かくれんぼ同好会」で出会った凛々しく聡明な“先輩”と、突如現れた謎の男“黑服”の存在により、“私”の日常は一変。次第に“黑服”と孤独な同志たちの言動は激しさを増していき、“私”と“先輩”を巻き込んだ、壮大な破壊計画“真夜中乙女戦争”が秘密裏に動きだす。平凡で退屈な日々を送る⻘年が、自分自身と東京を破壊するまでの夜と恋と戦争を生きる姿を描いた物語。

脚本・監督・撮影/二宮 健
出演/永瀬廉(King & Prince)、池田エライザ、柄本佑
原作/F『真夜中乙女戦争』(角川文庫刊)
©2022『真夜中乙女戦争』製作委員会
1月21日(金)より、全国公開
movies.kadokawa.co.jp/mayonakaotomesenso

ドレス ¥660,000 ブーツ 参考商品/すべてエトロ(エトロ ジャパン ☎03-3406-2655) リング右手人差し指 ¥264,000 リング右手薬指 ¥115,500 リング左手人差し指 ¥286,000/すべてnoguchi(noguchi青山店 ☎03-6673-9648)

Photos:Melon Styling:RIKU OSHIMA Hair & Makeup:ANNA. (SHIMA) Interview & Text:Nao Kadokami Edit:Mariko Kimbara

Profile

池田エライザElaiza Ikeda 1996年生まれ。2009年、ティーン誌『ニコラ』のモデルオーディションでグランプリを受賞。15年公開の映画『みんな!エスパーだよ!』のヒロインに抜擢されたのを機に俳優業を本格的にスタート。映画やドラマ、CMなど幅広く活躍。主な出演作に『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』、『騙し絵の牙』等。また自身が原案・監督を務めた映画『夏、至るころ』も話題に。21年9月、ELAIZA名義で音楽活動も開始。11月には1stフルアルバム『失楽園』をリリース。多彩な表現に各方面から注目を集める。

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July / August 2022 N°158

2022.5.27 発売

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