磯村勇斗インタビュー「愛情深く、素直な人格に憧れます」 | Numero TOKYO
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磯村勇斗インタビュー「愛情深く、素直な人格に憧れます」

旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.70は俳優の磯村勇斗にインタビュー。

2017年放送のNHK朝ドラ『ひよっこ』出演以来、数々のヒット作で独自の存在感を発揮する俳優・磯村勇斗が、1月29日公開の『ヤクザと家族 The Family』に出演。本作は時代とともに社会から排除されていく“ヤクザ”の姿を家族の視点で描いた物語で、主演・綾野剛演じる山本賢治が属する柴咲組とゆかりある木村翼役を熱演。本作を通して彼が感じたこととは? また『恋する母たち』の反響に思うことや、趣味のサウナや絵を描くことについても尋ねた。

『ヤクザと家族 The Family』で俳優の原点に一度立ち返れた

──『ヤクザと家族 The Family』公開の告知がなされた8月、自身のTwitterでは「この日を楽しみにしていました。それ程皆さんに観て頂きたい作品です。」と書かれていて、思い入れの強さを感じました。 「本当にいい現場だったんですよね! 藤井道人監督の演出もそうですし、綾野剛さんはじめキャストの皆さんの存在感もそう。僕には全てが刺激的で、原点に一度立ち返った気がします」 ──その気づきとは演技に関するものですよね。 「はい。お芝居の“間”をはじめ、“台詞とは何か?”“その場にただ存在するとはどうあるべきか?”といったことまで、特に本作では一つひとつを丁寧に演じる必要がありました。それらについては藤井監督にじっくり教わり、いつしか忘れかけていたことを思い出させてもらえました。相手の演技を受け、自分なりに感じて言葉を発し、相手に届けるというお芝居の根本です」

──藤井監督は第43回日本アカデミー賞最優秀作品賞など数々受賞した映画『新聞記者』の監督も務められました。今回のオファーがあった時の率直なご感想は。

「錚々たるキャストの方々の中で、自分がどうお芝居をすればいいのかと考えました。自分自身に対する挑戦というか、一枚の壁が立ちはだかった感覚でした。結局、壁を乗り越えられたか? うーん……どうでしょう(笑)。公開して皆さんに見ていただけたら、その答えが分かるのかな。ただ本作のクランクイン前に比べると、芝居に対する感度が変わったような気はしています」

「木村翼の愛情深さを素敵だと思った」

──本作で演じた木村翼に対する印象は?

「演じるのはすごく難しかったです。いろんな気持ちを押し殺して生きている子なので、彼自身生活でスカッとした気持ち良さを感じることは何一つないと思うんですよ。またどんな局面でも頭のいい立ち回り方ができる子なので、演じる上でもいかに冷静で居られるかが大切なのかなと。翼という役を通して、俳優・磯村勇斗に還ってくるものは多かったです」

──彼の生き方に共感する部分はありましたか。

「翼が生まれ育った場所は地元・静岡県沼津市が撮影現場でした。あの土地の空気を感じて、地元の町を背負って生きてきたところは共感できました。あと僕が素敵だと感じるのは翼の愛情溢れるところ。アニキと慕う先輩が困っているのを見ると、“僕が助けますよ!”と躊躇することなく言える。そんな彼の素直な気持ちに憧れます」

──翼は劇中で綾野剛さん演じる山本賢治にひそかな憧れを持っていました。磯村さんは綾野さんにどのような印象を抱いていますか。

「それはもう、怪物だなあと(笑)。現場において綾野さんの役に対する向き合い方や目線、立ち姿に“俳優魂”を感じて、すごくシビれました。現場で演技を間近に受けて、日本の俳優界を背負っていく存在だなと。その思いは完成された映像を見て確信に変わりました」

──一視聴者として本作を観て、この物語からどんな気づきを得ましたか。

「正義と呼ばれるものなど無いのではないかと思いました。別に“ヤクザ”を肯定するわけではありませんが、彼らも僕らと同じく家族を持つひとりの人間なのに、そこに向き合わないことは果たして正義なのか…そんな問題提起がこの作品でできたのではないかと。今までにない“ヤクザ映画”になったと思います」

サウナや絵を描く時間を通してトリップ。「違う世界に頭をシフトさせることが大切」

──作中にある地下格闘技のワンシーンでは磯村さんの筋肉美に圧倒されました!

「格闘技は昔やっていたのですが、本作に向けてカラダづくりにも励みました。役作りのために減量するのは、実は今回が初めて。体脂肪を低く維持したまま体重を増やさずに筋肉を増やすためにはタンパク質を過不足なく摂り続ける必要がありました。翼のカラダは主に鶏ササミでできています!」

──楽しんで取り組まれたのが伝わってきます。

「筋トレと僕が大好きなサウナは疲労回復の点でも相性がいいんですよ。2020年の春までは週5でサウナ通いしてました。最近は頻度が減ってしまって、週1日行けたら理想的です」

──2020年は激動の一年でしたね。振り返れば、TBS系『恋する母たち』の磯村さん演じる赤坂剛の“男の色気”に視聴者は釘付けになりました。

「ありがたいです。でも色気やセクシーさなどは本当に意識していなくて…! ただただ林優子をどんなふうに好きになるかだけに集中して演じていました」

──役を演じる時、役についての下調べをするなどの“思考”の部分と自分の中からにじみ出す“感覚”の部分、どちらを重視していますか。

「うーん…ハーフ&ハーフ。木村翼もハーフ&ハーフ。ピザみたい?(笑)役のために情報を得るのはもちろん大事ですが、お芝居ではやっぱり感覚も大切です」

──表現と言えば、磯村さんは以前『Numero TOKYO』のために「未来の愛」という作品を描いてくださり、インスタにも自作のイラストがアップされています。絵を描いている時はどんな気持ちですか。

「無に近いかな。でも、ワクワクしてます。何を描こう、どういう構成にしよう、どんな色を使おう…童心に戻ってる感じですね。時間をかけて描くのが好きなので、“やるぞ”という気持ちにならないと描きませんが、その時間は演技などのことも忘れています。たまに俳優とは違う世界に頭をシフトさせる時間が、僕には欠かせません」

『ヤクザと家族 The Family』

第43回日本アカデミー賞主要3冠に輝いた『新聞記者』の制作チームが再集結して挑んだテーマは“ヤクザ”。ヤクザという生き方を選んだ男たちを、3つの時代にわたって描いた物語。主人公の山本は荒れた少年期に柴咲組組長・柴咲に救われ、父子の契りを結んだ。その後山本はヤクザの世界でのし上がる中で、自分の家族と呼べる居場所を見つける。しかし2012年の暴力団対策法の施行により、彼を取り巻く状況が一変してしまい……。

監督・脚本:藤井道人
出演/綾野剛、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、磯村勇斗、菅田俊、康すおん、二ノ宮隆太郎、駿河太郎、岩松了、豊原功補 / 寺島しのぶ、舘ひろし
©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
1月29日(金)全国にて公開

Photos:Erina Fujiwara Styling:Ryosuke Saito Hair&Makeup:Tomokatsu Sato Interview & Text:Nao Kadokami Edit:Saki Shibata

Profile

磯村勇斗Hayato Isomura 1992年生まれ、静岡県出身。 2015年のドラマ『仮面ライダーゴースト』の仮面ライダーネクロム、アラン役で注目を浴びる。その後、 ドラマ『ひよっこ』『今日から俺は!!』『きのう何食べた?』『サ道』『時効警察はじめま した』、映画『今日から俺は!!劇場版 』などに出演 。最近ではドラマ『恋する母たち』の赤坂剛役で話題に。 趣味はサウナ。

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