窪塚洋介インタビュー「腸活とポジティブシンキング。それだけで人生が変わっていく」
旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.68は俳優の窪塚洋介にインタビュー。
1995年に俳優デビューして以来、25年間ほぼ途切れることなく活躍を続ける、俳優・窪塚洋介。公開中の『みをつくし料理帖』では、主人公・澪(松本穂香)が思いを寄せる、御膳奉行・小松原(小野寺数馬)を演じる。角川春樹氏の最後の監督作品とも言われる本作で、彼が感じたものとは。また、海外での活動や、コロナ渦にスタートしたインスタライブなど、今、彼が世界に発信したいことについて聞いた。
角川春樹監督は、伝説上の生き物。でも、大きな安心感もあった
──『みをつくし料理帖』は、髙田郁によるベストセラー小説が原作ですが、撮影前に読んで、大感動したそうですね。
「現場に入る1週間ぐらい前に、角川春樹監督から原作全10巻を渡されて『読んでおいて』と言われたんです。1週間で?と思ったんですが、1巻の途中ぐらいからハマって、あっという間に読み終えてしまいました。その時点で、すっかり原作ファンになっていましたから、台本の読み合わせが始まったら、目の前に澪そのままの松本穂香さんがいるんですよ。読み合わせしながら、つい目頭が熱くなったりして。撮影が始まると、その世界観の中にいられるだけで幸せでした」
──今回は角川春樹氏の最後の監督作品だそうですが、監督の印象はいかがでしたか。
「監督は、伝説上の生き物というか、すでに龍と同じカテゴリーだと思っていたんですが、実際にお会いすると、やっぱり思考が常人を超えてました。ある撮影日、天気予報は雨だったのに、監督は『今日は雨は降らない。朝、神社で雲切してきたから』と言い切っていて。しかも、実際に降らなかったんですよ。地震を止めたこともあるという話を聞いたんですけど、長年一緒にいるスタッフの方々は、そんなぶっ飛んだ話も、静かにうなずいていたんです。監督の生き方や周りの支える姿を見ていたら、ものすごく安心しました」
食への興味から、腸内環境に夢中。「腸は全てを司る宇宙だと確信しました」
──今作では、澪が作る料理がたくさん登場しますが、どの料理もおいしそうでしたね。
「もう全ての料理がおいしくて。特に、牡蠣のしぐれ煮は絶品でした」
──食事ということでは、最近、腸活にはまっているそうですが。
「これまでもファストフードは食べないとか、ある程度意識はしていたんですが、このコロナのタイミングで腸内環境にまつわる本を4冊ぐらい読んで。全ては腸なんですよ。成人病や花粉症、精神疾患なんかも、ある程度は腸内細菌の仕業らしいんですね。腸がすっきりしてると頭がクリアになるし、ポジティブやネガティブという性格も腸内細菌が関係している。“性格=運命”だとすると、腸は運命までも司っている臓器です。ってことは、もはや腸は宇宙ですよ」
──具体的に食事で気をつけているポイントは?
「1日1.5食にしています。朝は野菜ジュースと自家製豆乳ヨーグルト。これが、0.25だとして、昼はとにかく好きなもの食べる。これが1。夜は腸に良い根菜類や発酵食品、海藻類を中心に、つまむ程度で0.25。合計で1.5食です。本当は1日1食にしたいところですけど、そこはあんまりストレスがないように」
──1.5食にしてから変化ありましたか。
「体が軽くなって、調子もいいですね。お酒もめちゃくちゃ吸収できるので、燃費が良くなりました。いいことだらけです」
──夜を0.25で抑えるのは、大変じゃありませんか?
「考え方次第ですよ。例えば、空腹をストレスだと感じるのは、“空腹→飢餓→死ぬ”という思考回路で脳が危険だと判断するから。でも、食べないことで、消化以外にエネルギーを回すという考え方もあるんです。例えば、病気だからと言って、治るようにたくさん食べると生命エネルギーが消化に回って、本当に必要なところに行き渡らない。だから、自然治癒力を高めるためのスイッチは、食べ過ぎないことなんです。空腹だとしても『俺の体は今、健康に向かっている』と思えばハッピーじゃないですか。空腹感は幸福感ですよ。これって、食費もかからないし、お金をかけずに健康になれるし良いことづくめ。ぜひみなさんも取り入れてください」
──インスタライブでも、腸活について発信されていましたね。
「たまに泥酔状態で配信して全く覚えてなかったりもするんですけど、後から確認すると、どれだけ酔っ払っても嘘は言ってないんですよ。酔ってるから言い方がキツくなってたりするかもしれないけど。そこは自分に対して安心しています。今、コロナもあって、閉塞感があったり、固定概念にがんじがらめになっているところがありますよね。それで、みんなで元気を出しましょうという気持ちで、インスタライブを始めたんです。それを大義名分としてお酒を飲んでるんですけど(笑)」
海外でも通じる手応えを感じたから、挑戦は続けるけれど、ホームはいつでも日本
──2017年にマーティン・スコセッシ監督『沈黙‐サイレンス‐』でハリウッドデビューを果たし、Netflixで配信されている『GIRI / HAJI』のためにロンドンに長期滞在されていました。海外の現場を経験したことによって、日本への見方は変わりましたか。
「今の日本は、なにか事件が起きると、SNSを通して匿名の人が一斉に石を投げるようなことばかりで、しょうもないとは思いますけど。でも、やっぱり日本が好きだし、日本語を使って芝居をすることが得意だから、もし英語がどんどん上達しても、日本にいることにこだわりたいと思っています」
──これからも海外への挑戦は続けていくんでしょうか。
「まだ出演は2作ですが、監督やスタッフから評価していただいて、自分がこれまでやってきたことが通用したと実感したので、自分自身を信じて、挑戦し続けたいと思っています」
──窪塚さんは、デビュー当時から天才肌と捉えられていた面もありましたが、英語にしても芝居にしても、すごく努力されていますよね。
「それは、やらなくちゃいけないことですからね。英語のセリフだからって、丸暗記しただけでは現場では使えない。寝言で言えるくらい自分の言葉にしないと、アドリブに対応できないんです。だから、英語の芝居は、日本語よりも遥かに時間が必要です。でも、それをやらずに現場に行って、周りに迷惑かけたり、恥をかいたりするのも嫌なので」
──不断の努力を支える原動力は?
「やりたくてやっているから、苦ではないんですよ。空腹の話もそうですけど、気持ちひとつでポジティブに変換できる。例えば、とあるお金持ちが、海外で大金を盗まれたんですが、その時、瞬時に『お布施ができた』と言って周りの人を驚かせたそうです。普通は、悔しいと思うじゃないですか。でも、何十年もずっとポジティブに生きてる人は、反射神経のように思考をポジティブに転換できるんです。そう考えると、どんなことが起きてもピンチはチャンスになり得る。このコロナでは多くの方がお亡くなりになりましたが、健康な人はポジティブに捉えて、変化できる機会だと捉えれはいいんじゃないでしょうか。気に病んでいると、体も不調になりますからね」
──今作、澪が背負う「雲外蒼天」という運命も、それ通じるところがありますね。
「澪が背負っているのは、試練を乗り越えれば、その先に青空を望めるという運命です。澪は挫けずに乗り越えますが、現実社会では、試練に対して必要以上の心配をして、余計に苦労を増やしている人もいます。だから、“苦”を“楽”に捉えて、あとは、考え事は夜じゃなくて朝にする。それだけで、人生が変わっていくと思います」
『みをつくし料理帖』
『犬神家の一族』『セーラー服と機関銃』など多くの映画を手掛けた映画プロデューサー、角川春樹。映画監督でもある彼が10年ぶりに「生涯最後の映画監督作」を完成させた。時は享和2年、大坂を未曾有の大洪水が襲う。8歳の澪は仲良しの野江と離ればなれに。10年後、澪は江戸・神田の蕎麦処「つる家」で女料理人として働いていた。常連客に支えられながら成長を続ける澪のもとに、ある日、吉原から一人の男が訪ねてくる……。
製作・監督/角川春樹
原作/髙田郁『みをつくし料理帖』(角川春樹事務所)
出演/松本穂香、奈緒、若村麻由美、浅野温子、窪塚洋介、小関裕太、藤井隆、野村宏伸、衛藤美彩、渡辺典子、村上淳 / 永島敏行、松山ケンイチ、反町隆史、榎木孝明、鹿賀丈史、薬師丸ひろ子/石坂浩二(特別出演)/中村獅童
©️2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会
全国にて公開中
Photos: Takao Iwasawa Hair & Makeup: Syuji Sato(Botanica make hair) Interview & Text: Miho Matsuda Edit: Yukiko Shinto