清水尋也インタビュー「素顔は謎のままでもいい。幅広い役柄を演じられたら」
旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.61は俳優の清水尋也にインタビュー。
映画『渇き。』『ソロモンの偽証 前編・事件/後編・裁判』『ちはやふる 上の句・下の句・結び』や、ドラマ『anone』『インベスターZ』で注目を集め、本誌では燃え殻×LiLyによる連載『そう、生きるしかなかった』にモデルとして登場するなど、幅広く活躍する俳優・清水尋也。1998年に『リング』を手がけた中田秀夫監督が、再びシリーズのメガホンをとった最新作『貞子』で、ヒロイン秋川茉優(池田エライザ)の弟・和真を演じる。どんな役でも変幻自在に演じる彼の素顔とは? そして、20歳目前の現在の心境を聞いた。
生まれる前から存在していた、ホラーアイコン・貞子との遭遇
——映画『貞子』では心理カウンセラーの秋川茉優(池田エライザ)の弟であり動画クリエイターの和真を演じていますが、最初にこの役を演じることが決まったときの気持ちは?
「『リング』は1998年公開で、僕は1999年生まれなので、自分が生まれる前から貞子はホラーの代表的なアイコンとして存在していたし、僕も『リング』はDVDで見ていたので、画面の外でみていた自分が中に入るのは、とても不思議な感覚でした」
——今回の和真は動画クリエイターで、アクセス数の獲得に焦るあまり、火災現場の跡地に侵入します。そのシーンは自撮りだったそうですね。
「そうなんですよ。監督に『このカメラ持って自撮りして』と手持ちのカメラを渡されて。最初は『映画を自分で撮るの? 嘘だろ?』と思いましたが、確かに臨場感がありますよね。あのシーンは、火災現場に侵入して撮影して、映るはずのないものに遭遇して逃げるところまで1カットで数分続くんですが、全部僕が撮りました。モニターに繋がらない普通のカメラなので、現場には僕が一人で入って僕が撮影して。その間、現場のスタッフさんは休憩のような感じでしたね(笑)。撮影が終わったら、監督にカメラのモニターを見せてOKもらってという」
——あの潜入シーンは見所のひとつですが、かなりおどろおどろしい雰囲気でした。一人であの場所にいるのは怖かったのでは?
「すごくリアルだったし、塗料だと思うんですが変な匂いが漂っていたので、セットだと思いつつも異様な雰囲気がありました」
——貞子との共演はいかがでしたか。
「スタッフさんもいるし撮影だとわかっていても、それでもやっぱり怖いですね」
ホラー映画に必須の「コイツ何かやらかしそう」を表現できた
——姉の秋川茉優を演じた池田エライザさんとは初共演ですか。
「以前、東京ガールズコレクションでランウェイを一緒に歩いたのですが、がっつりした共演は今回が初めてだったんですけど、大好きなお姉ちゃんと呼べるくらい絆が深まりました」
——インスタにエライザさんがコメントしてましたね。
「エライザさんの実の弟さんと僕が似ているらしいんです。年齢も近くて背も高くて。それで、僕を『東京の弟』と呼んでくれています」
——作品の中でも、姉弟の絆が描かれていましたね。お姉さんは常に心配していても、アクセス数獲得に焦るあまり突っ走る感じとか。軽く一線を超えてしまうSNSの怖さも印象的でした。
「あの危なっかしさは、動画クリエイターだからというより、和真というキャラクターだからだと思うんです。ホラー映画には、絶対にこいつ何かやらかすなと思わせるポジションの役は重要ですよね。まだらな金髪でふざけたことやって、いかにもやらかしそうな空気感が出るように、とにかくテンションを上げて。劇中劇じゃないですけど、動画と動画以外のときのテンションも変えて、映画の中でもオンとオフが表現できるように意識しました。身近に動画を作っている友達がいるので、それは彼らを見て盗んだりして」
——友達の反応は?
「爆笑してました。お前が仕事でこれをやるんだー、って」
——ご自身でもインスタグラムで発信してますが、SNSはどんなふうに楽しんでいますか。
「僕の仕事は、いいお芝居をしてみなさんに楽しんでもらうことで、インスタグラムは情報発信の窓口として使っていますし、みなさんとの交流の場だとも思っています。あんまり考えすぎると難しくなってしまうので、あえて計画性をもたいないようにして、好きな音楽を教えてほしいという声があったら聴いている音楽をアップしたりしてます」
——今の俳優さんは、SNSなどセルフプロデュースが必要な場面もありますよね。それはどう考えていますか。
「こういったことを詳しく説明しちゃうと面白くないですけど(笑)、いろんな役をいただくので、きっと人によって清水尋也のイメージが違うと思うんです。『渇き。』のいじめられっ子、『インベスターZ』の投資部の生徒、『anone』の病気の子、それに金髪の和真もあるし。みなさんが応援してくださる僕は役のフィルターを通した僕だし、バラエティでも仕事の意識があるので素ではないんです。偽ってるわけじゃないけど、俳優はプライベートな自分を見せることは重要じゃないのかもしれなくて。だから、役柄が幅広いことを生かして、本当はどんな人なのかわからなくてもいいと思っているんです。いい意味でみなさんを振り回したい。でも、よく『意外と喋るんだね』と言われます。僕だって普通に喋るんですけどね(笑)」
——「誰とも違う立ち位置にいたい」と答えていましたよね。
「単純に他の人とかぶるのは嫌ですから。それから、ありがたいことに『旬の人』と言っていただくこともあるのですが、旬って終わるものじゃないですか。それはちょっと寂しいなと感じていて」
——「若手イケメン俳優」として括られることは?
「そもそも、イケメンじゃないですから…(笑)。僕は、小さい頃から母親に『雰囲気でどうにかなってるタイプだから、調子に乗るなよ』って言われていました」
——お母さんも雰囲気があることは評価しているんですね。
「うーん、そうなんですかね(笑)。でも僕だけじゃなく、彼は彼、彼女は彼女、カテゴライズせずに『みんな違ってみんないい』んじゃないでしょうか」
やりたいことは今やるスタンス。それが今は芝居というだけ
——モデルとしても活躍されていますが、芝居とモデルでは気持ちを切り替えていますか。
「俳優として取材を受ける延長で、インタビューなしの撮影くらいの感覚だったんです。ファッションストーリーが増えていって、たくさんの服を着せてもらえるようになって、ファッションの仕事をしているんだという感覚は強くなりました。でも、ファッションだから特別に意識することはありません。ファッションのプロであるスタイリストさんからも『カッコつけんなよ』と言われているので、むしろ考えすぎない方がいいのかもしれないなと思っています」
——それでファッションの感じが出せるということは、かなり器用ですよね。昔から、なんでもこなせるタイプだったとか?
「何かが突出して下手というより、平均して60点を出せるタイプでした。60点が良いのか悪いのかわからないけど」
——その中で、俳優という仕事は100点を目指したい仕事だったとか?
「最初はただ楽しくて続けていたんです。周りに引っ張られてやっていたことが徐々に自分からやりたいことになって、今はもっといいお芝居をしたいと思うようになりました」
——6月9日で20歳になりますが、今後の抱負は?
「大人になるのでアホなことはやめます(笑)。今年はタイミング的にも、いろいろと考えていて。俳優という仕事とは関係なく一個人として、まだできることがあるはずだし、やりたいこともあるので、頑張って挑戦していこうと思っています」
Photos: Kanta Matsubayashi Interview & Text: Miho Matsuda Edit: Yukiko Shinto