広瀬アリス インタビュー「今まっすぐ生きているのは、悩んだ時期があったから」 | Numero TOKYO
Interview / Post

広瀬アリス インタビュー「今まっすぐ生きているのは、悩んだ時期があったから」

旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.55は、11月17日(土)公開の映画『銃』で、ヨシカワユウコを演じる女優、広瀬アリスにインタビュー。

芥川賞作家・中村文則のデビュー作を原作にした、映画『銃』は、『百円の恋』などを手がけた武正晴が監督、『その男、凶暴につき』『うなぎ』を手がけた奥山和由が企画・制作を務めた意欲作。思いがけず銃を拾った大学生の西川トオル(村上虹郎)は、銃に魅了され次第に理性が崩壊していく。トオルの同級生、ヨシカワユウコを演じるのは、女優、広瀬アリス。彼女が感じた、ヨシカワユウコという女性、また意外なプライベートについて語ってもらった。

「20歳の頃、こじらせていた方が、むしろ正常なのかもしれない」

──映画『銃』では、たまたま銃を拾った大学生・西川トオル(村上虹郎)の大学の同級生、ヨシカワユウコを演じています。表面は明るく活発な女の子ですが、内面では複雑なものを抱えている役柄ですね。 「監督からは、この作品では天使のような女性を演じてほしいと言われたんです。彼女は、陰か陽かで言ったら完全に陽。理性が揺らぐ西川君を、現実に引き戻すことができる存在です。この作品はモノクロなんですが、彼女だけカラーのつもりで演じました。でも、彼女はただポジティブで彼に救いの手を差し伸べるのではなく、心に暗いものを持っている。だからこそ、西川君の心の拠り所になる存在なんじゃないかなと。私も20歳前後の頃まで、訳のわからない焦燥感や葛藤があったので、ある意味でユウコは正常な女の子なんじゃないかと思います」 ──広瀬さんの葛藤は、何か原因があったんでしょうか。 「具体的なものはなくて、自分でもなぜ悲しかったりイライラしたりするのか分かりませんでした。振り返ってみても、何だったんでしょうね」

──12歳でスカウトされて、10代でお仕事をスタートしていましたよね。

「そうですね。仕事もしていたし、表面上は上手に立ち回っていたかもしれないけど、あまりいい子じゃなかったな(笑)。人が苦手で、暗かったと思います。自分でも説明できない、葛藤のようなものは20歳くらいまで続きました」

──どうやってその状態から脱出したんですか?

「気がついたらいつの間にか。今、思えば、そうやって人は大人になるんだと分かりますけど、当時はストレス解消も上手にできなかったから、その期間が他人より長く続いちゃったのかもしれません」

──『探偵が早すぎる』などで明るい広瀬さんの姿を見ているので、そんな時期があったとは意外でした。

「でも、今、まっすぐ生きているのは、悩んだ時期があったからだと思います。当時は自分でも説明できない壁にぶち当たっていましたけど、今は人間が変わったくらい、フラットに日常を生きています」

──今回のヨシカワユウコは、広瀬さんの20歳の頃に近いんでしょうか。

「彼女は天使ですから私に近くはないですが、力を抜いて演じることはできました。それは、村上(虹郎)君の空気感のおかげです。無理に話しかけたりしなくても、気持ちをストンと落ち着かせてくれる方なんです。撮影初日、二人でただ向かい合っているだけのシーンだったんですが、それが心地良くて。お芝居も、二人で打ち合わせして噛み合わせていくより、お互いに読み込んできた役をぶつけあう感じが楽しかったです」

挑戦し続ける根性は、バスケで身につけた

──現在は『探偵が早すぎる』のようなコメディから、シリアスなものまで幅広い作品に出演されていますね。

「20歳を過ぎていろんな役をいただいて、少しずつ自分の中に引き出しが増えている感覚はあります。それで、役の振り幅が少しずつ広がっているのかな。でも、今、ドラマ『ハラスメントゲーム』(テレビ東京系)で、壁にぶち当たっている最中なんです。前クールの『探偵が早すぎる』でコメディに振り切ったので、つい身体が大きく動いてしまうのを抑えなきゃいけなくて、頭を抱えています」

──映画『銃』の撮影時も、同時に朝ドラ『わろてんか』を収録していたと伺いました。

「朝ドラは前半に登場シーンが少なかったので、その期間に『銃』を撮影したんです。だから、逆に映画に集中できる環境ではありました。映画の撮影が終わってから、朝ドラの後半で出番が増えるまで時間があったので、気持ちの切り替えもすんなりできました。いつもは、作品ごとに気持ちを切り替えるのが大変なんですけど」

──役に入り込むタイプなんですね。今、演技は難しさと楽しさ、どちらが大きいですか?

「7:3ぐらいで難しさですかね。撮影が終了した瞬間はやりがいや達成感を感じるので、それを味わいたいがために頑張っているところもあります」

──難しいことに挑戦するのは好きですか。

「好きです。それに私は、決められたことを同じようにこなすのが苦手なので、シーンごとに違う演技を要求されて、毎回頭を抱えるこの仕事が性に合っているのかもしれません」

──挑戦し続けるその根性は、学生時代にずっとバスケットボールをやっていたことも関係ありますか。

「すごく関係あります。そこでずいぶん鍛えられたと思います」

──バスケ少女だった12歳の頃にスカウトされたんですよね。

「それから映画に少しずつ出演しながら、15歳で『セブンティーン』のモデルに合格して。でも、10代は、まだフワっとしてました。人生をかけて仕事に向き合い始めたのは、ここ2、3年です」

──やる気のスイッチが入ったきっかけは?

「私の年齢だと、ちょうど社会人2年目くらいなんですね。地元の同級生はもう働いている。そんな姿をみて、自分ももっと頑張らなきゃと思いました。それに自分にできるのは、この仕事しかないと自覚したというのもあります。今は楽しいですし、やりがいも感じています」

愛犬「ぱーぷー」と「ぷーぴー」に自分の子供を会わせたい

──オフはどう過ごしていますか。

「基本的には犬の散歩以外は外出しないので、家で洗濯して、掃除して、ネット動画みて、漫画読んで、台本読んで、というのを繰り返す。外食に行ったりすることはあまりありません」

──わんちゃんのお名前は?

「『ぱーぷー』3歳と『ぷーぴー』1歳です♡」

──声がワントーン高くなりましたね(笑)。マンガはどんなジャンルが好きですか。

「男性向けの刺激がある激しい作品が好きです」

──ネット動画はどんなものを?

「アニメばかりです。超インドア派なんです」

──もし1週間、休みがあるとしたら?

「2日は家で過ごして、1日は日帰りで帰省、あとはジムに通って仕事のための身体作り。うーん、つまらないオフですね(笑)。『銃』のクランクアップ後に1週間くらい休みをもらったのですが、2日おきにジムに行って終わりました」

──今、ハマっていることはありますか?

「ぱち(ぱーぷー)ぷち(ぷーぴー)と遊ぶこと、マンガを読むこと、あとはネット通販で服や家具を買ったり。全然アクティブじゃない(笑)」

──ネットショッピング派なんですね。ファッションの好きなテイストは?

「オーバーサイズでゆったりしているもの。白、黒、ネイビー、少しだけベージュ。地味なファッションが好きです」

──話は変わりますが、結婚願望はありますか?

「最近、周りが次々に結婚し始めたので、そういう年齢に差し掛かったんだと思います。私も、いつか結婚して自分の子供とぱーぷー、ぷーぴーを会わせてみたいです」

──目標は何歳ごろ?

「前クールの『探偵が早すぎる』で水野美紀さんと共演したとき、美紀さんが『出産は絶対に早い方がいい』とおっしゃっていたので、できたら早めに」

──理想のパートナーはどんなタイプ?

「よく笑う人。お互いに笑い合える関係が理想です。私は超自由人なので、一人でどんどん先に行っちゃうし、ひとりでいたい時は全く連絡を取らないので、そんな私を自由にさせてくれる包容力のある人。または、私と同じくらい何も気にしない人。もちろん、信頼関係があってのことですけど」

──では最後に、今後の目標を教えてください。

「ずっと楽しいことを続けていきながら、自分の振り幅を少しずつ広げて、自分の納得できるお芝居ができたらいいなと思います」

ドレス¥235,000 ブーツ¥64,000/ともにIsabel Marant(イザベル マラン 03-5772-0412) ピアス¥47,000 ブレスレット¥36,000/ともにAlighieri(エストネーション 0120-503-971)

映画『銃』の情報はこちら

Photos: Gen Saito Styling: Yutaka Asakura Hair & Makeup: Hiroko Takashiro Interview&Text: Miho Matsuda Edit: Masumi Sasaki, Yukiko Shinto

Profile

広瀬アリス(Alice Hirose)1994年静岡県生まれ。2008年映画『死にぞこないの青』で女優デビュー。2009年〜2015年、雑誌『セブンティーン』の専属モデルを務め、現在は雑誌『with』のレギュラーモデル。『巫女っちゃけん』『食べる女』などの映画、NHK連続テレビ小説『わろてんか』『正義のセ』『探偵が早すぎる』のほか、現在放送中の『ハラスメントゲーム』に出演中。

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